11月に入りました。皆さん、今年も間もなく終わりますが、1年を振り返ってみていかがですか。「十分な活躍ができた」「目標を達成できた」という人もいれば、あるいはその逆の人もいるでしょう。今日は、そんな皆さんに向けて、米国の宇宙開発の話をします。
今から50年前の1972年12月、「アポロ計画」最後の宇宙船である「アポロ17号」が、月から地球に帰還しました。アポロ計画は、米国が1961年から1972年までの11年間にわたって実施した、月への宇宙飛行計画です。また、有人宇宙船での月面着陸の初めての試みでした。最初に月に降り立ったのは、1969年7月の「アポロ11号」。米国はそこからさらに3年間で、アポロ12号から17号まで計6回の月面着陸を試み、うち5回を成功させています。
ところで、この月面着陸という偉業について考えるとき、皆さんは誰の顔を思い浮かべるでしょうか。まずは、月に降り立った宇宙飛行士、次いで、強いリーダーシップで計画を動かした当時の米国大統領でしょうか。ですが、忘れてほしくないのが、裏方である「技術者」の人たちです。
例えば、宇宙船に人を乗せて飛ばすには、宇宙飛行士の安全を守るための技術や、宇宙船を大気圏外に打ち出す角度など、とにかく緻密なコントロールが求められます。実際、アポロ計画初期の「アポロ1号」が、設計上の欠陥によって大事故を起こしたこともあります。
現代と比較すれば、まだ技術もおぼつかなかった50年前に、技術者たちがこうした事態が起きるたびに問題に向き合い、改善を重ねてきたからこそ、人類は月に降り立つことができたわけです。
この話を通じて、私は1年を振り返ってみた皆さんに伝えたいメッセージが2つあります。
まずは、この1年で「十分な活躍ができた」「目標を達成できた」という人は、本当によく頑張りました。自身の努力を大いに誇ってください。ただ、それと同時に、皆さんの成果が、はたして自分一人のものなのかということも考えてみてください。皆さんの成果が「月面着陸」だとすれば、皆さんをそこに到達できるように支えてくれた人がいませんでしたか。陰ながら見守ってくれた上司や、忙しいときに手伝ってくれた部下がいるはずです。もし、思い当たる人がいるなら、ぜひ、その人に感謝の気持ちを伝えてください。
次に、「あまり活躍できなかった」「目標を達成できなかった」という人は、なぜ思い通りにいかなかったのかの反省は必要ですが、決して気に病むことはありません。悔しいという気持ちがあるなら、それは皆さんが努力をしたということです。皆さんは、今年のスタート地点から見れば、間違いなく成長しています。いうなれば、アポロ計画の途中、宇宙船を月に着陸させるための研究を続けている段階です。腐らず、自分を磨くことを忘れないでください。皆さんが「月」に降り立つ日はすぐそこです。
以上(2022年11月)
pj17128
画像:Mariko Mitsuda