成功者になろうとするのではなく、価値のある人間になるよう努めるべきです
ノーベル物理学賞を受賞したアインシュタインは、相対性理論の発表など科学者として高い名声を得ましたが、「科学技術が人々にどのように利用されているのか」についても、強い関心を持っていました。終戦後の1955年に、核兵器廃絶や科学技術の平和利用を各国に訴える「ラッセル・アインシュタイン宣言」を発表したのは、その一例です。
冒頭の言葉は、そんなアインシュタインの姿勢を象徴するものといえます。「人間」だけでなく、これからの会社の方向性を考える上でも、参考になる言葉ではないでしょうか。
今、世の中の価値観が急速に変わる中で、「会社」とは何か、「働く」とはどういうことか、についても見直され、変化しています。
会社は、「社会的な公器」としての責任を求められるようになってきています。また、働く目的は人それぞれで多様化し、「働き方改革」「ワーク・ライフ・バランス」といった言葉が頻繁に用いられるようになりました。会社を経営する上で、社員に何を与えることがよいことなのか、社員にどこまで求めればよいのか、判断が難しくなってきています。
そこで、アインシュタインの言葉を踏まえて考えてみましょう。会社にとって「成功」とは、これまでの価値観であれば、売り上げを増やし、利益を上げ、会社を大きくすることでしょう。東証プライム市場に上場することも含まれるかもしれません。
一方、「価値のある会社」とは、何を指すのでしょうか。一概には言えないかもしれませんが、分かりやすく、「人の役に立っている会社」と考えてみましょう。
例えば、顧客のニーズに応える商品やサービスを提供することも「価値」です。社内制度を変えて社員から「働きやすい」「自分の夢を実現できる」と思ってもらえる会社になることも「価値」です。環境活動に投資して地域を良くすることだって「価値」です。
このように言うと、“何でもあり”のように聞こえるかもしれません。しかし、もしその「価値」が自社だからこそ提供できる、何物にも代え難いものだとしたらどうでしょう。多くの人に「この会社があって助かった」「この会社がないと困る」と思ってもらえます。それは会社の存在意義(パーパス)であり、会社が活動していくための原動力となります。
「成功」を目指すのであれば、自分本位に、自社の目標さえ達成すれば、それで完結です。ですが、「価値のある会社」になるためには、常に世の中の価値観の変化を感じながら、「自社が本当に人の役に立っているのか」をいつも意識しておく必要があるのです。
出典:「アインシュタインにきいてみよう:勇気をくれる150の言葉」(アインシュタイン述、弓場隆編訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2006年4月)
以上(2022年12月)
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