今日は、ビジネスをスムーズに進めるために重要な「伝える力」についてお話しします。

ビジネスにおいて「伝える力」とは、自分の考えを相手に伝え、理解・納得してもらうことです。これがなければ、共通の目的と具体的なイメージを持って協力して仕事を進めることはできません。

皆さんが仕事を進める際に、会議や商談など実際に会って話をするだけではなく、電話やメールでも頻繁に連絡を取り合うのは、繰り返し相手に自分の考えを伝え、意思の疎通を図るためです。

物事の伝え方は人それぞれですが、誰でも「自分にとっても相手にとっても利益が見込める話」は自信を持って伝えられるものです。話の内容もより具体的になるでしょう。「この提案が実現すれば、年間売り上げは1億円が見込める」といったようにです。

一方で、相手が損失を被る場合はどうでしょう。例えば、仕入先に30%という大幅な値下げをお願いするシーンをイメージしてみてください。「相手に申し訳ないな」という気持ちから、「ご無理は承知ですが、値下げを検討していただけないでしょうか」などと曖昧(あいまい)な表現でお茶を濁してしまいがちです。このような表現では、相手に自分の真意はしっかりと伝わりません。例えば、私がこのような言い方で値下げのお願いをされたら、それほど深刻な値下げ要求ではないと判断し、「十分に検討しましたが、値下げは難しい」と答えるでしょう。

しかし、この場合、相手にとっては30%という大幅な値下げは業務命令であるため、「会社として30%のコスト削減を図っております。仕入価格が現状のままだと、契約解除を検討しなければなりません」と2度目の値下げ要求をすることになります。

私ならばこう言われたときに、「そんなことだったら、最初からはっきりと言ってくれればよかったのに」と不愉快な気持ちになります。

言いにくいことを相手に伝えるのは誰でも苦痛なものです。このようなときこそ、「理由」と「数字」をはっきり伝えなければなりません。理由を伝えれば、相手はこちらの言葉が根拠のあるものであることを理解することができます。数字を伝えれば、検討の基準を持つことができます。

  

ビジネスでは、自分や相手にとって良い話も悪い話もあります。良い話は、多少、内容が曖昧(あいまい)でも問題になることはありません。むしろ悪い話をするときこそ、丁寧に、正確に自分の考えを伝えなければなりません。そして、相手から質問が出たら、それにしっかりと答える姿勢が信頼につながります。

以前、テレビで移植手術の世界的権威の医師のドキュメンタリー番組を見たことがあります。この医師が行う手術は患者の生命にかかわる困難なものばかりです。だからこそ、医師は手術のリスクや術後の患者の生活について、包み隠すことなく、また、患者が理解できるように伝えます。そして、患者が納得する、具体的には患者から質問が出なくなるまで話し合うそうです。

私たちの仕事においては、たとえどれほど悪い話であっても、この医師のように命にかかわるものではありません。

悪い話を伝えるときは表現を曖昧(あいまい)にしがちです。しかし、そのようなときこそ、「理由」と「数字」を明らかにして、相手が理解・納得できるまで話し合いましょう。

以上(2023年1月)

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画像:Mariko Mitsuda

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