活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

2022年10月に静岡県の山間部で観光バスの横転事故が発生しました。下り坂でフットブレーキを使い過ぎてフェード現象が生じたことが事故の原因と言われています。

下り坂の運転では一般道路と比べて危険が多く潜んでおり、より慎重な運転操作が求められます。

そこで、今回は下り坂の安全運転について考えます。

下り坂の安全運転

1.下り坂での事故の危険性

令和3年の交通事故統計によると、交通事故全体のうち下り坂で発生した事故が占める割合は約4.8%です。これに対して交通死亡事故全体のうち下り坂で発生した死亡事故が占める割合は約11%であり、2倍以上高くなっています。

令和3年の交通事故統計

出典:公益社団法人交通事故分析センター令和3年版「交通事故統計年報」より弊社作成

よって下り坂での事故は、重大事故につながる可能性が高いと考えられます。

<下り坂の危険>

  • 勾配の急な下り坂や長い下り坂では加速するため、停止距離が長くなるとともに事故の衝撃力も大きくなります。
  • またカーブを曲がるときや狭い道で対向車とすれ違うときに十分に減速していないと事故を起こす危険があります。
  • 長い下り坂でフットブレーキを頻繁に踏んだり、長く踏み続けたりすると「フェード現象」や「ベーパーロック現象」が起きる可能性があるので大変危険です。

「フェード現象」

フットブレーキを使い過ぎることで、ブレーキパッドが過熱して摩擦面にガスが発生します。ガスが摩擦面に発生すると、摩擦力が低下するため、ブレーキの効きが悪くなります。(ディスクブレーキの場合)

※ドラムブレーキの場合はブレーキシューが過熱し、ブレーキの効きが悪くなります。

「ベーパーロック現象」

フットブレーキを使い過ぎることで、ブレーキオイルが沸騰してブレーキ配管内に気泡が発生します。気泡が発生すると、ブレーキペダルを踏んだときの油圧が伝わりにくくなるため、ブレーキの効きが悪くなります。

2.下り坂の安全な運転

下り坂を安全に運転するため、以下の点に留意しましょう。

◆こまめに速度を確認し、速度超過にならないよう注意する

長い下り坂では加速がつくため、速度超過になりがちです。また急な下り坂の勾配が緩やかになると上り坂だと錯覚してアクセルを踏んでしまうことがあります。下り坂ではこまめに速度を確認し、スピードをコントロールしましょう。

◆車間距離を長めに確保する

下り坂は加速がつくため、停止距離が長くなります。また前走車が車間距離を調整するために急に減速や停止をすることもあります。下り坂では坂の勾配に応じて車間距離を長めに確保する必要があります。

車間距離を長めに確保

◆狭い道では上りの車に道を譲る

狭い下り坂で対向車とすれ違うときは、下りの車が一時停止して上りの車に道を譲りましょう。ただし、上りの側に待避所があるときは、上りの車が待避所に入り、下りの車の通過を待ちます。

◆エンジンブレーキを活用する

長い下り坂ではフットブレーキを使い過ぎないよう低速ギアにシフトしてエンジンブレーキ※を活用しましょう。バスやトラックなど大型車の場合は補助ブレーキを効果的に活用することが大切です。

ブレーキの効きが悪くなったら安全な場所に車を止めてブレーキの温度を下げましょう。

※EVは回生ブレーキがエンジンブレーキの役割を果たします。

エンジンブレーキを活用

3.坂道運転への備え

万が一、下り坂でブレーキの異常が起きると重大事故につながる可能性があります。日ごろからブレーキオイルやブレーキパッドなどを点検し、適切にメンテナンスしておくことが重要です。

坂道運転への備え

冬の坂道でのスリップ事故や立ち往生を防ぐため万全の準備をしましょう。

  • 積雪・凍結路では、必ず適切な冬用タイヤの装着
  • 運行前に冬用タイヤの溝深さが新品時の50%以上残っていることを確認
  • チェーンの携行、立ち往生する前の早めの装着

以上(2023年1月)

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画像:amanaimages

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