書いてあること
- 主な読者:消費税の確定申告と中間申告について知りたい経営者
- 課題:消費税は赤字でも納税が発生する事が多く、中間納付も複数回ある
- 解決策:確定申告は年に1回だが、中間申告は最多で年に11回。前期の納税額ごとに、中間申告・納税の回数が決まる
1 なぜ、消費税が資金繰りに影響を及ぼすのか
課税事業者(消費税の申告義務のある事業者)は、消費税の申告を行い、国へ納税しなければなりません。問題は、
申告は、年に1回、決算のときだけやればいいわけではない
ということです。具体的には、
- 確定申告
- 中間申告
の2種類があり、中間申告については、前期の納税額の大小によって必要な回数が変わります。多いときは、なんと毎月申告納税しなければならないのです。
確定申告であれ、中間申告であれ、納税するには当然現金が必要になります。特に消費税は法人税と違い、「赤字」であっても納税が必要になることが多い税金です。
将来の収益獲得のための投資目的ではなく、納税する目的という後ろ向きの借り入れは資金繰りを悪化させる原因にもなります。そのため経営者は、確定申告だけでなく、中間申告のタイミングを把握した上で、綿密な納税・資金計画を立てることが重要です。
2 確定申告は決算期に年1回
課税事業者は、年に1回の確定申告が必要です。確定申告とは、1年決算法人の場合、
- 1年間に発生した「消費者から預かった消費税(仮受消費税)」や「会社が支払った消費税(仮払消費税)」を集計し
- 決められた計算方法によって年間の納付税額を確定させ
- 申告書を提出するとともに、その確定した納付税額を納税すること
をいい、決算期に行う重要な手続きの1つです。
確定申告は、
原則として、決算期末から2カ月以内に行わなければならず、この期限を1日でも遅れると罰金税などが課される
ことがあります。なお、中間納付を行っていたら、年間の納付額から中間納付額を差し引いた残額を納税することになります。
3 中間申告は最多で年に11回
1)中間申告は前期の年税額で決まる
課税事業者は、中間申告をしなければなりません。中間申告とは、
当期の消費税の一部を税務署へ前払い(分割払い)すること
をいいます。この中間申告は、前期の年税額によって納税の回数が決まります。
前期の確定申告を行えば、当期に必要な中間納付の回数も把握できます。経営者は、確定申告により年税額が確定した段階で、その年の納税スケジュールを気にとめておくようにしましょう。
なお、中間納付として必要な金額の計算方法には、
- 予定申告方式
- 仮決算方式
があり、自由に選択できます。どちらの方式を選択するのがよいのか説明してきます。
2)予定申告方式とは
予定申告方式とは、
前期の年税額を分割して納付する方法
です。手続きをしなければ、この方法により計算された金額を中間納付することになります。
例えば、前期の年税額が100万円の場合、中間納付の回数は1回になるため、前期の年税額の半分となる50万円(100万円×6/12)を納付します。
3)仮決算方式とは
仮決算方式とは、中間申告ごとに、
本決算と同じような手続き(仮決算手続き)をして納付する方法
です。予定申告方式と比べて手間がかかりますが、
売上が前期と比べて減少していたり、仕入や経費が増えていたりする場合
には、予定申告方式に比べ、仮決算方式によって中間納付額を計算したほうが、中間納付額が少なくなることがあります。そのため経営者は、
当期の損益状況や設備投資の状況、あるいは資金繰りの状況を考えながら予定申告方式と仮決算方式を選択
するようにしましょう。
なお、例えば中間納付の回数が3回の場合、1回目と2回目は予定申告方式とし、3回目だけ仮決算方式とすることも可能です。また、仮決算方式にしたところ還付になる場合、中間納付額をゼロとすることはできますが、還付金は受けられませんので注意しましょう。
4 申告しなかった・忘れた場合には「罰金税」
消費税の申告書は正確に作成しなければなりません。また、申告や納付には必ず期限があります。提出した申告書に誤りがあったり、期限に遅れて申告納付したりすると、
罰金や利息のような税金を、追加で納税
しなければなりません。罰金や利息のような税金には、次のようなものがあります。
- 延滞税
- 過少申告加算税
- 無申告加算税
- 重加算税
1)延滞税
申告や納税が期限よりも遅れた場合に課される利息のような税金で、期限より遅れて納税した税額に対して課され、遅れた日数分だけ納税しなければなりません。税率は年2.4~8.7%(令和6年の場合)です。
2)過少申告加算税
確定申告した税額が正しい税額より少なかったときに課される罰金のような税金で、追加で納税した税額に対して課されます。税率は5~15%です。
3)無申告加算税
申告期限までに確定申告を提出しなかった場合に課される罰金のような税金で、納付すべき税額に対して課されます。税率は5~20%です。
4)重加算税
帳簿の改ざんや領収書の偽造などをして納付税額を低くするなど、特に悪質と判断されたときに課される罰金のような税金で、追加で納税した税額に対して課されます。税率は35~50%です。なお、重加算税の対象となった場合には、上記2)の過少申告加算税は課されません。
以上(2024年11月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)
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