けさは、私の古くからの友人の息子さんの話をしたいと思います。
その友人とは、家族ぐるみの付き合いで、息子さんのことも小さい頃からよく知っていました。もう10年以上前の話になりますが、息子さんが就職活動をしていたときに、実は我が社に入らないかと誘ったことがあったのです。
ですが、息子さんは学業が優秀で、名前の知られた大学を卒業し、上場会社に就職しました。私はそのとき、我が社に入社してもらえなかったことは残念でしたが、心から「就職おめでとう」と、友人と息子さんを祝福したことを覚えています。友人も息子さんも、「これで将来は安泰だ」と喜ばれていました。特に友人は私に、「一流会社に就職してくれるなんて、さすが自慢の息子だ」と誇らしげに語っていたものです。
ところが少し前に、息子さんが勤めている会社が、事業の一部を売却したというニュースを見ました。心配になって友人に連絡したところ、息子さんは売却された事業とともに、転籍しなければならなくなったとのことでした。友人は、「こんなことになるなんて思ってもみなかった。息子の将来が心配で仕方ない」と、ため息をついていました。
私は友人と息子さんに同情するとともに、改めて、「学歴があって、一流会社の社員になったからといって、将来まで安泰だとは限らない」ということを実感しました。
最近、息子さんと会う機会があったのですが、「転籍して、給料が大きく減りました。転職したいけれど、改めて考えてみると、自分には学歴くらいしか誇れるものがない」と話していました。もしかしたら、息子さんは一流会社に入ったことで安心しきってしまい、入社後、自分から主体的に何かに取り組んだり、技術を身に付けたりしてこなかったのかもしれません。彼の言葉を聞いて、私は「就職活動のとき、もっと強く我が社に誘っていればよかった」と後悔しました。
皆さんに改めてお話ししたいのですが、ビジネスパーソンとしての価値は、学歴や所属する会社の知名度で決まるものではありません。業務でどんな結果を出しているのか、業務に関して、どのような知見やスキルを持っているのかで決まります。
我が社は、世間的に名の知れた会社というわけではありませんが、それでも1つ、大いに誇れることがあります。それは、私が常日ごろから口酸っぱく言ってきた、「業務に関する知見やスキルを磨くように」という言葉を、皆さんが忠実に実践してきてくれたことです。自分を磨き続け、会社とともに成長してきてくれた皆さんは、我が社にとって誇るべき財産です。今、我が社は苦しいときではありますが、皆さんのような財産に恵まれた我が社であれば、必ず乗り越えられるはずです。全員で一緒に苦境を乗り越え、さらに会社を成長させていきましょう。
以上(2023年1月)
pj17134
画像:Mariko Mitsuda