1 紅葉のメカニズム

1)3つの紅葉

紅葉とは葉が落ちる前に黄や橙(だいだい)、赤などに色づくことをいいます。細かく分類すると、次のように分けられます。

  • 狭義の紅葉:赤や橙に色づくこと
  • 黄葉:黄色に色づくこと
  • 褐葉:褐色に色づくこと(褐色に色づくのが早いこと)

ただし、厳密にこれらを分けることは困難であるため、まとめて「紅葉」といわれる場合がほとんどです。

紅葉

2)葉の色づき方

緑色にみえる葉には、クロロフィルという緑色の色素とカロテノイドという黄色の色素の2種類が含まれます。紅葉するときには、これらの色素に変化が現れます。

  • 黄色く色づく場合
    黄色くなる黄葉は、秋になると緑の色素であるクロロフィルが先に分解されるため、黄色くみえるようになります。

  • 赤く色づく場合
    紅葉は、葉のクロロフィルが分解され、アントシアンという赤色の色素に変わることで起きます。クロロフィルがすべて分解されてしまう前にアントシアンができ始めるため、紫色に近い紅葉がみられます。その後、クロロフィルがアントシアンに完全に変わることで赤く色づきます。これが狭義の紅葉です。

紅葉するまでのイメージ

2 紅葉と気温・標高の関係

1)気温との関係

紅葉が始まる主な条件は次の通りです。

  • 紅葉が始まるのに適した気温
  • 適度な湿度
  • 十分な光

この中で最も重要な条件なのが気温です。一般的に最低気温が8度以下で色づき始め、5~6度になると一気に色づきます。また、昼夜の寒暖差が大きいときれいに色づきます。一般的に都心部よりも山岳地のほうが紅葉が美しいといわれるのはこのような理由からです。

2)標高との関係

紅葉は標高の高いところから始まり、徐々に低地に向かっていきます。

  • 高地の紅葉
    北海道では主に標高500メートル以上の山でみられますが、本州では日本アルプスや東北地方の一部の、標高1500メートル以上の山でみられるといわれます。気温差が大きく、紫外線が強いため、非常に鮮やかな紅葉がみられます。常緑針葉樹も少なくないので、紅葉の時期には、ナナカマドやタカネザクラなどの赤色、ミネカエデなどの黄色とのコントラストが鮮やかです。

  • 山地の紅葉
    北海道から九州までの雪が積もるような寒い地域でみられる紅葉です。落葉広葉樹林が広がる地域で、さまざまな種類の樹木による紅葉がみられます。そのため、紅葉の名所と呼ばれる場所が多いのが特徴です。代表的な樹木としては赤色がカエデ類やヤマウルシ、ヤマブドウ、黄色はブナやカラマツなどがあります。

  • 低地の紅葉
    特に関東以西の暖地でみられる紅葉です。寒暖の差が小さいため、鮮やかに色づくものは限られますが、常緑樹とのコントラストが美しいものが多くなっています。代表的な樹木としては、赤色がイロハモミジやケヤキ、ツツジ類などで、黄色はイチョウなどがあります。

3 主な紅葉の紹介(赤色に色づくもの)

紅葉する樹木にはさまざまなものがあります。以降では、その中でも代表的な種を紹介します。

1)高山などでみられるもの

  • ナナカマド(バラ科)
    ナナカマドは、北海道や東北では街路などにも植えられています。小さな真っ赤な葉が羽のように並び、一つの大きな葉を形成する独特の形をしています。小さな赤い実がつくのも特徴で、葉が落ちた後も枝に残っています。

2)山地、低地でみられるもの

  • カシワ(ブナ科)
    カシワは、日本全国の山地を中心に、庭木としても植えられる樹木です。鮮やかな橙に色づきますが、条件が良いと濃い赤になります。

  • ケヤキ(ニレ科)
    ケヤキは、木によって、赤や橙、黄など異なる色になるのが特徴の木です。しかし褐色になるのが早く、落ち葉もすぐにくすんでしまうため、いわゆる「褐葉」の代表格でもあります。本州から九州までの山地や低地に広く分布しており、公園の樹木や街路樹としても植えられています。

3)低地でみられるもの

  • イロハモミジ(ムクロジ科/旧カエデ科)
    イロハモミジは、低地でみられる赤い紅葉の代表格です。日陰では黄色くなるものの、全体的に鮮やかな赤に色づきます。低地での紅葉の名所ではよく植えられている種です。

  • ヤマザクラ、ソメイヨシノ(バラ科)
    ヤマザクラおよびソメイヨシノは、低地に植えられるサクラの代表格です。ヤマザクラは主に林や低地に植えられ、橙や赤に色づきます。ソメイヨシノは街路や公園によく植えられ、ヤマザクラより濃い赤や橙に色づくのが特徴です。どちらも日照によって色づきに差が出てしまい、葉によっては赤く色づく部分と黄色の色づきのどちらも現れるものが出るほどです。

  • ツタ(ブドウ科)
    ツタは、木の幹をはじめとして、建物の壁や塀をびっしりと覆うことが多いツル植物です。若い枝は丸い葉が多く、成長していくにつれ葉に切れ込みが入るようになります。成長した葉には強い光沢があり、全体的に赤くなりますが、中には紫に近い色のものもあります。童謡「まっかな秋」に歌われていることでも知られています。

4 主な紅葉の紹介(黄色に色づくもの)

1)山地などでみられるもの

  • ブナ(ブナ科)
    ブナは、寒い地方の森林や全国各地の山林でよくみかける木です。紅葉し始めた当初は黄色ですが、紅葉が進むにつれ橙から赤茶色に変化していきます。しかし、鮮やかな色は長続きせずに葉が落ちるころには褐色になってしまいます。

  • カラマツ(マツ科)
    カラマツは寒冷地を中心に山地でよくみられる木で、日本原産の針葉樹の中で唯一の落葉樹です。ごく短い枝に、多数の細長い葉がついている独特の姿が特徴です。紅葉すると色鮮やかな黄色に色づき、秋が深まると黄土色に変わっていきます。

2)山地、低地でみられるもの

  • コナラ(ブナ科)
    コナラは、低地や山地などを中心に、よくみかける木の一つです。特によくみられるのは身近な雑木林です。初めは黄色ですが、紅葉が進むにつれ橙から赤茶色に変化します。

  • イタヤカエデ(ムクロジ科/旧カエデ科)
    旧カエデ科の仲間は赤く色づくものが多いですが、中には黄色く色づくものもあります。黄色く色づくものの代表格がイタヤカエデで、特に山地で多くみられます。なお、若木は橙や淡い赤に色づくこともあり、成長した木に比べ葉の形に深い切れ込みが入るのが特徴です。

3)低地でみられるもの

  • イチョウ(イチョウ科)
    イチョウは黄色に色づく木の中でも代表的なものの一つで、全国各地に植えられています。見ごろの時期になると、低地でも鮮やかな黄色をみることができます。全体的に高木になるのが特徴です。

  • エノキ(ニレ科)
    エノキは都市部を中心に、公園や寺社など身近でみられる樹木の代表格です。葉の色は濃い黄色で、全体的によく色づくのが特徴です。

以上(2022年11月更新)

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画像:maruboland-Adobe Stock
画像:pixabay

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