1 和菓子のうんちく

ここでは、和菓子の起源などについてみていきます。なお、以降で紹介するのは諸説あるうちの一説であり、異なる見解がある場合もあります。

2 和菓子の起源は果実から

農耕を始めた古代人たちは、米、あわ、麦などを主食にし、そのほかに間食として野生の果実や木の実を食べていたと考えられています。古代人にとっての菓子は、天然の果物や木の実だったということです。「菓子」という字は果物や木の実を表す「果子」という字が元とされています。

その後、穀物を加工する技術が生まれ、木の実を砕いて粉にした後、水にさらしてアクを抜き、丸めて熱を加えるなどして、いわゆる「団子」を食していたといわれています。

3 唐菓子の伝来

奈良時代になると、中国から「唐菓子(からくだもの、とうがし)」と呼ばれる食品が日本に伝わったといわれます。唐菓子は、米、麦、大豆、小豆などをこねたり、油で揚げたりしたもので、それまでの単純な穀物の加工品に比べ味や形、加工方法などが優れたものでした。多くは、祭事の供物として利用されるものだったようです。

そして平安時代になると、唐菓子が日本文化に少しずつ吸収されていきます。例えば、「源氏物語」には「椿餅(つばいもちい)」という食べものが登場しますが、これは唐菓子が日本人の好みに変化した早い例として知られています。

4 砂糖の登場

砂糖は奈良時代に唐から伝えられたと考えられています。日本にやってきた僧侶・鑑真が伝えたという説もあります。

しかし、江戸時代初頭になるまで国内で砂糖が製造されることはなく、長らく食用ではなく薬用に使われていました。菓子の甘味として一般的に使用されるようになったのも江戸時代以降といわれています。

砂糖が貴重だった時代、菓子につける甘味には、あまずら(甘蔓)と呼ばれる、ツタの汁を煮詰めたシロップが利用されていたようです。

5 お茶と和菓子

お茶は、平安時代には遣唐使によって日本に伝えられましたが、お茶と一緒にお菓子が提供されるようになったのは、鎌倉時代以後といわれています。それには、僧侶の生活が関係しており、宋へ留学した僧侶たちは、新たな教義とともに最新の食文化も持ち帰りました。

僧侶によって中国から伝来した食文化の中で、和菓子の発展に大きく影響したのは「点心」です。現在も中華料理として点心が食べられていますが、当時は食事と食事の間に食べる間食としての意味がありました。当時の点心には、わらび餅や、ようかんの原型とされるものが含まれていたようです。

その後、茶道が確立するとともに、点心は間食としての存在から茶請けとしての存在に変わっていき、茶菓子としての菓子が、現在の和菓子の源流になったと考えられています。

和菓子

6 江戸時代に発展を遂げた和菓子

安土桃山時代には、南蛮貿易でカステラなどの西洋の菓子が持ち込まれました。当時砂糖は貴重な輸入品でしたが、ポルトガルなどとの貿易で、輸入量も拡大していきました。そのため、甘い和菓子の発展には、ポルトガルの存在が欠かせなかったといわれます。

江戸時代に入るころになると、茶道とともに発展した和菓子はさらに進化を遂げていったようです。

それまでの間、文化の中心地は江戸に移りましたが、京都からの伝来物は「下りもの」として尊ばれ、和菓子もその例にもれませんでした。一方で、このころには江戸らしい庶民的でさっぱりとした菓子も登場したようです。例えば、桜餅、金つば、大福餅、おこし、せんべいなどがその代表だといわれています。

現在に至る和菓子の基本形は、この江戸時代までにほぼ完成したとされています。その後、洋菓子の登場とともに菓子への嗜好も変わり、和菓子も洋菓子の影響や嗜好の変化を受けて進化を続けながら現在に至っています。

7 和菓子を楽しく食べるための豆知識

1)6月16日は和菓子の日

和菓子の日は、和菓子の良さを見直そうと、全国和菓子協会によって創設されました。6月16日とした理由は、平安時代に国内に疫病がまん延したことから、仁明天皇が元号を「嘉祥」と改め、6月16日に16の数にちなんだ菓子や餅を神前に供えて疫病よけ、健康招福を祈ったためといわれています。

2)和菓子の保存法

生和菓子は、できるだけ早く食べることがおいしく食べる秘訣です。できれば、買ったその日のうちに食べきってしまうほうがよいでしょう。

食べきれずに保存する場合、冷蔵庫で保存すると乾燥したり固くなったりしやすいので、冷蔵庫では保管しないほうがよいでしょう。和菓子を保存する場合は、冷蔵庫よりも、冷凍用のビニール袋や、密閉容器などに入れてから冷凍保存したほうが味は落ちません。

蒸し菓子や干菓子なども、生菓子同様にできれば早めに食べきってしまうほうがおいしく食べられますが、保存する場合は冷凍保存のほうが風味を損ないません。

3)和菓子の栄養

種類にもよりますが、和菓子は洋菓子に比べてカロリーが低いものが多いようです。これは、洋菓子のようにバターやクリームを使っていないことが理由となっています。また、和菓子に使われる材料で代表的な小豆などの豆類は、繊維質が多く含まれる食材として知られています。

以上(2023年3月)

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画像:Kenishirotie-Adobe Stock
画像:pixabay

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