1 変えたい習慣
健康や美容、仕事のために今の生活を変えようとしたことはありませんか? 食べ過ぎや飲み過ぎ、スマートフォンの使い過ぎなど、何らかの習慣が過剰になると、生活全体に悪影響を与えることがあります。しかも、いざやめようとしても、最初何日かは我慢できるものの、数週間後にはたいてい元に戻ってしまうのです。
習慣を変えるのが難しい理由はいくつもあります。よくある悩みは、気付かないうちにやってしまう、我慢しているのに効果がすぐに出ない、新しい習慣が定着したと思ったのに何かのきっかけで古い習慣が再開してしまったなどです。新しい習慣を身に付けるためには、こうした問題に対処するポイントを知り、長い目で取り組む必要があります。
この記事では、習慣が身に付く仕組みと、習慣を変える方法を紹介します。習慣化のプロセスを知ることで今より結果を出しやすくなるはずです。
2 習慣とは何か
習慣という言葉を辞書で見ると「同じ状況のもとで繰り返された行動が、状況に応じて安定化し、自動化されて遂行される」など、いくつかの意味が載っています。
この記事では主に個人の習慣に焦点を当てるため、「学習によって後天的に獲得され、反復によって固定化された個人の行動様式」という意味で用います。朝目覚めるとほとんど無意識に顔を洗ったり、歯を磨いたりできるのは、習慣のたまものです。最初はいちいち注意してやっていた行動が、習慣化するとほとんど何も考えずに行えるようになります。
習慣になる行動は、単純な動きだけではなくかなり複雑な行動も含まれます。日ごろから運転する人は、駐車のような神経を使う動作でも、今はほとんど何も考えずにできるでしょう。脳が日常的な行動の一部を自動化してくれるおかげで、私たちはもっと重要な問題に神経を使えるようになるのです。
3 欲求が習慣の原動力
繰り返し行っているだけで全ての行動が習慣になるというわけではありません。習慣のプロセスについてはさまざまな研究が進み、習慣として繰り返されやすい行動には次のような特徴があることが分かってきました。
繰り返されやすい行動:「欲求が満たされる結果」を導く行動
(繰り返されにくい行動:「不快な結果」を生み出す行動)
脳は欲求を満たしてくれる行動を優先的に記憶し、望ましい報酬を効率的に得ようとします。しかも、私たちが望んでいると思っているものと、脳が感じる欲求はいつも一致するわけではありません。頭では健康になりたいと思っていても、多くの人にとって、サプリメントよりポテトチップスやチョコレートのほうがずっと魅力的に見えるのです。
現代は高カロリーな食品があふれており、あえて意識しなくても糖分や脂肪などの必要摂取量をとれます。そのため、本来なら食べ過ぎないよう注意しなければならないのですが、脳の本能的な部分は食料が乏しい時代のことを覚えていて、糖分や脂肪分を効率的にとれる食品を好みます。私たちは今の環境に合った食生活をしたいと考えているつもりでも自分でも気付かないところで、違うことを望んでいるのです。
自覚している希望と脳が感じている欲求の違いは、古い習慣をやめ、新しい習慣を始める妨げになります。習慣を効率よく変えていくためには、こうした認識のズレを埋め、隠れた欲求をコントロールする方法を学ぶ必要があるのです。
<参考書籍>
「ジェームズ・クリアー式複利で伸びる1つの習慣」(ジェームズ・クリアー(著)、牛原眞弓(訳)、パンローリング、2019年11月)
「習慣の力 新版」(チャールズ・デュヒッグ(著)、渡会圭子(訳)、早川書房、 2019年7月)
以上(2023年6月更新)
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