1 意思が強くないと習慣は変えられない?
世の中には、特定の行動を習慣化して望んだ結果を出せる人と、数カ月でサボりがちになってしまう人がいます。あるデータによると、フィットネスクラブの新規入会者は6カ月以内に40%以上が退会するようです。継続していても実際はフィットネスクラブに通っていない人を合わせれば、6カ月以内に半分以上が挫折してしまうといえるでしょう。
何故そのような結果になるのでしょうか? 決めたことを実行できる意思力が先天的に強い人でなければ、良い習慣を身に付けることはできないのでしょうか?
もちろん、そんなことはありません。確かに、新しい習慣を身に付けるには誘惑を拒み、前の習慣に戻りたくなる衝動にあらがわなくてはなりません。しかし、その衝動にあらがう力が先天的なもので生涯変わらないとすれば、何度もダイエットに失敗していた人があるとき成功する理由が説明できません。モチベーションなどの影響もゼロではないでしょうが、一定数の人は失敗するうちに要領を覚え、自分に合う方法を見つけられると考えたほうが自然です。
「自分は意思が弱い」と習慣化を諦めてしまっている人のために、この記事では意思の強さに頼らないでも習慣を変えられるコツを紹介します。
2 意思の強さに自信がない人が習慣化を成功させるには
1)得意なことから始める
習慣化のために大事なのは何度も繰り返し行うことですが、苦手なことを何度も繰り返し行うのは苦痛を感じやすいものです。習慣化に慣れていない場合は、まずは得意な分野で試して、成功体験をつくりましょう。
例えば、掃除好きの人なら、どの部屋をどれくらいの頻度で、どのように掃除するか、計画を立てて実行してみてください。得意なことであれば慣れるのも早く、成果も出やすいはずです。もしもうまくいかなくても、試行錯誤しているうちにノウハウがたまってきます。ある程度自信がついたら、自分が本当に変えたい習慣にチャレンジしましょう。
2)事前に誘惑やストレスへの対処法を準備する
いくら忍耐力や自制心に自信がない人であっても、いつも誘惑やストレスに負けてしまうわけではありません。いつもは我慢できていることができなくなるのは、イレギュラーな出来事や過度なストレスにさらされたときが多いようです。
例えば、数週間毎日1日1万歩ウォーキングしていても、残業で疲れた日やパートナーとけんかしてイライラしている日に、習慣が中断してしまうことがあります。それで気が抜けて、せっかく身に付きかけたルーティンをやめてしまうのはもったいないことです。
予想できる誘惑やストレスがある場合は、そういう状況のときにどんな対応をすればいいか、事前に対処法を考えておきましょう。ストレスが実際に起きた瞬間、どうやって耐えるかを詳しくシミュレーションし、誘惑やストレスがあっても平静で居られるよう、心構えをしておくのです。
3)誘惑の少ない環境をつくる
意思の強い人でも、誘惑が近くにあればなかなか我慢することはできません。ダイエット中に自宅に高カロリーのお菓子が置いてあるとつい手を伸ばしたくなりますし、スマホを近くに置いていると仕事中でも開きたくなってしまいます。
誘惑に弱い自覚があるならば、それらを意識的に避けるべきです。仕事をするときはスマホをかばんにしまい、休憩時間以外開かないようにします。それが難しければ、メッセージの通知音を消すなど、集中力を乱さない工夫をしましょう。
誘惑を避ける工夫は、身に付けたい習慣を何度も繰り返すのと同じくらい重要です。環境をコントロールすることで、自分の精神力に頼る必要がなくなります。
4)忍耐力や自制心自体を高める
意思の強さというと、先天的な性格によって決まっていると思うかもしれませんが、実際には筋肉のように後天的に鍛えられるものだといわれます。
ある実験では、筋トレや勉強、金銭管理など、一つの分野で集中的にトレーニングすることで、その分野とは異なる方面(食事や仕事、メンタルなど)でも誘惑や衝動に対するコントロールも上達するという結果が出ています。
こうしたトレーニングでは、目標の難易度設定の仕方など、習慣化全般に必要な能力の向上が期待できます。本格的に習慣改善をしたい人は、一度筋トレなどに集中的に取り組んでみてもよいかもしれません。
<参考書籍>
「ジェームズ・クリアー式複利で伸びる1つの習慣」(ジェームズ・クリアー(著)、牛原眞弓(訳)、パンローリング、2019年11月)
「習慣の力 新版」(チャールズ・デュヒッグ(著)、渡会圭子(訳)、早川書房、 2019年7月)
以上(2023年6月更新)
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