書いてあること
- 主な読者:次年度を見据え、新たにDXに取り組みたい経営者
- 課題:何から着手すべきか分からないので、他社がどのようなDXに取り組んでいるのか知りたい
- 解決策:多くの企業が着手している項目や、DXを取り組むための参考になる支援機関や補助金情報を基に、まずは総務(経理・人事)業務のデジタル化などから着手する
1 2023年を御社のDX元年に!
今話題の「DX(デジタルトランスフォーメーション)」。御社のDXはどこまで進んでいますか? 気になるのは、
他社のDXがどこまで進んでいるか
だと思いますので、そのような皆さんの参考になるように、独自アンケートから「DXの現在地」を探っていきます。
仮にDXのレベルを次の5段階に分けたとします。もし御社がレベル1やレベル2に相当するとお考えでしたら、2023年の目標として「レベル3まで達成すること」を掲げてみてはいかがでしょうか?
- レベル1:DXの必要性を認識していない、取り組みたいと感じていない
- レベル2:これからDXに取り組むために、情報収集や人材育成などの準備を進めている
- レベル3:総務(経理・人事)業務のデジタル化など、他社も取り組んでいるDXに着手している
- レベル4:自社の本業に関わる部分でDXに着手し、独自の商品・サービス開発などにつなげている
- レベル5:IPAの「DX認定制度」に認定されるなど、外部の機関から取り組みが評価されている
では、早速、アンケートの結果を見ていきましょう。最後に相談機関なども示していますので、具体的なアクションにつなげてください!
なお、アンケートは2023年1月にインターネットで行い、経営者209人から回答を得ました。
2 DXの現在地。他社はどこまで進んでいる?
1)DXに前向きな企業は約4割
DXの取り組み状況を聞いたアンケート結果は次の通りです。
およそ半数の方が「着手する予定はない」と回答している一方で、「これから着手する予定である」「着手しているが、まだ成果が出ていない」「着手しており、成果が出ている」を合わせると、約4割がDXの取り組みに対して前向きであることがうかがえます。
2)DXに取り組むきっかけは「経営者自身の思い」が一番
DXに取り組むきっかけを聞いたアンケート結果は次の通りです(図表1のDXの取り組み状況で、「着手しており、成果が出ている」「着手しているが、まだ成果が出ていない」「これから着手する予定である」と回答した方を対象に聞いています)。
最も多かった回答は「経営者自身が取り組みたいと感じているため」で、「法律などの規制・制度変更に対応するため」といった実務への対応や、「金融機関や税理士などから提案されたため」など外部からの提案を上回っています。経営者自身のDXに対する興味ややりたいという気持ちが、DXの推進力になっていることがうかがえます。
3)DXで実現したいことは「コスト削減」などの業務効率化
DXで実現したいことを聞いたアンケート結果は次の通りです(図表1のDXの取り組み状況で、「着手しており、成果が出ている」「着手しているが、まだ成果が出ていない」と回答した方を対象に聞いています)。
「コストを削減したい」の回答数が最も多くなっており、「書類やデータの共有をスムーズにしたい」「作業時間を短縮したい」の回答が続いています。
「売り上げを倍増したい」「リモートワークなどの働き方に対応したい」という目標よりも、まずは足元の業務効率化を目標に据えると、よりDXに取り組みやすくなるかもしれません。
4)全社的に「ペーパーレス化」が進んでいます
総務(経理・人事)、営業、生産・物流の3部門で取り組んでいるDXについて聞いたアンケート結果は次の通りです(図表1のDXの取り組み状況で、「着手しており、成果が出ている」「着手しているが、まだ成果が出ていない」と回答した方を対象に聞いています)。
部門ごとの特徴は次の通りです。
- 「文書の電子化・ペーパーレス化」「オンライン会議ツールの導入」「グループウェア・チャットツールの導入」は部門をまたいで全社的に取り組まれている
- 総務(経理・人事)部門は「DXに取り組んでいない、取り組む予定がない」と回答した人がおらず、何かしらのDXに取り組んでいる
- 営業部門は他の2部門と比較して「オンライン会議ツールの導入」と「グループウェア・チャットツールの導入」の割合が高く、コミュニケーションツールにDXが導入されていることがうかがえる
- 生産、物流部門は「DXに取り組んでいない、取り組む予定がない」と回答した方の割合が他の2部門よりも高くなっており、他の2部門と比較してDXの推進が難しいことがうかがえる
裏を返せば、事業に直接関わらない総務(経理・人事)部門などのバックオフィス系はDXに取り組みやすい部門といえます。もし、これからDXに取り組むことを検討している場合には、まずは総務(経理・人事)部門のDXに目を向けてみるとよいでしょう。
5)DXの成果は「社内業務の効率化」
DXによる具体的な成果を聞いたアンケート結果は次の通りです(図表1のDXの取り組み状況で、「着手しており、成果が出ている」と回答した方を対象に聞いています)。
「新規商品、サービスを開発した」「他社との差異化を図れた」といった本業に直接関わるような成果はまだ出ていないものの、「書類やデータの共有がスムーズになった」「リモートワークなどの働き方に対応した」「作業時間が短縮できた」といった足元の業務効率化を実現した企業が多くを占めています。
6)1番に取り組みたいのは「文書の電子化・ペーパーレス化」
総務(経理・人事)、営業、生産・物流の3部門で、これから取り組みたいDXを聞いたアンケート結果は次の通りです(図表1のDXの取り組み状況で、「これから着手する予定である」と回答した方を対象に聞いています)。
図表4の「部門ごとのDX取り組み状況について」に続き、部門を問わず、「文書の電子化・ペーパーレス化」にこれから取り組みたいと回答した方が多くなっています。
7)DX推進の課題は「コスト」と「人材確保」
DX推進に当たっての課題を聞いたアンケート結果は次の通りです(図表1のDXの取り組み状況で、「着手しているが、まだ成果が出ていない」「これから着手する予定である」と回答した方を対象に聞いています)。
「ツールやシステムを導入するコストを掛けられない」の回答数が最も多く、「社内にデジタル人材がいない」が次点となっています。
一見、DXは高額なツールを導入したり、ITに深く精通していないと着手できなかったりすると思われがちですが、近年ではDXに関する情報収集や人材育成に活用できるポータルサイトなどもあり、取り組みのハードルは下がっています。次章で紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
8)DXを進めるには、目標をはっきりさせること
今後のDX推進に必要なものを聞いたアンケートの結果は次の通りです。
「低コストで導入できるデジタルツール」や「助成金制度などの外部機関による支援」もDX推進のためには大切ですが、まずはDXに取り組む目的や戦略を明確にする必要があります。
DXにこれから取り組む場合には、前掲の図表3「DXで実現したいことについて」の回答も参考に、DXに取り組むことで何を実現したいかを明確にして、社員にも共有させるとよいでしょう。
3 総括:各社のDXの現在地は?
ここまでの質問を踏まえて、冒頭で紹介したDXの5段階のレベルについて聞いたアンケートの結果は次の通りです。
なお、5段階のレベルの定義は次の通りです。
- レベル1:DXの必要性を認識していない、取り組みたいと感じていない
- レベル2:これからDXに取り組むために、情報収集や人材育成などの準備を進めている
- レベル3:総務(経理・人事)業務のデジタル化など、他社も取り組んでいるDXに着手している
- レベル4:自社の本業に関わる部分でDXに着手し、独自の商品・サービス開発などにつなげている
- レベル5:IPAの「DX認定制度」に認定されるなど、外部の機関から取り組みが評価されている
冒頭の繰り返しにはなりますが、これからDXに取り組もうとする際には、今回のアンケート結果を参考に、
2023年のうちに他社に後れを取らないレベルになること
を意識してみましょう。
4 (参考)DXに関する助成金制度や認定機関の紹介
ここでは、DXに関する助成金制度や認定機関などの情報をまとめました。これからDXに取り組む際に、ぜひ参考にしてみてください。
1)DXに関する情報収集や人材育成に活用できるウェブサイト
1.独立行政法人情報処理推進機構(IPA):DX SQUARE
DXに関する情報を発信するウェブサイトです。DXの基礎知識や用語集をはじめ、他社のDX推進事例やDX推進に役立つツールなどを紹介しています。
■DX SQUARE■
https://dx.ipa.go.jp/
2. IPA:マナビDX
デジタルスキルに関する学習コンテンツを紹介するウェブサイトです。DXの基礎的な講座をはじめ、社員のキャリアアップや企業研修に活用できる講座の情報をまとめています。
■マナビDX■
https://manabi-dx.ipa.go.jp/
3. 中小企業基盤整備機構:ここからアプリ
中小企業がDX推進に関して、導入しやすい業務用アプリを紹介するウェブサイトです。アプリの概要だけでなく、実際の企業による導入事例なども紹介しています。
■ここからアプリ■
https://ittools.smrj.go.jp/
2)DX推進に関する助成金制度
財務省:デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制
DXに不可欠なクラウド技術を活用したデジタル関連投資に対して、税額控除(3%または5%)または、30%の特別償却を行うものです。IPAが審査する「DX認定」の取得やクラウド技術の活用などが要件になります。投資額の上限は300億円となっています。
3)DXに関する認定制度
1.IPA:DX認定制度
2020年5月15日に施行された「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」に基づく認定制度です。企業からの申請に基づき、優良な取り組みを行う事業者を経済産業省が認定するものです。
この制度に認定されることで、DX認定制度のロゴマークを利用し自社PRができるだけでなく、DX実現に必要なデジタル関連投資に対して税額控除、もしくは特別償却を受けることができるなどのメリットがあります。
■DX認定制度■
https://www.ipa.go.jp/ikc/info/dxcp.html?utm_source=dxsquare
2.経済産業省:DXセレクション
中堅・中小企業などのモデルケースとなるような優良事例を「DXセレクション」として紹介する取り組みです。優良事例を選定・公表することで、地域内や業種内での横展開をはじめ、中堅・中小企業などにおけるDXの推進や取り組みの活性化につなげていくことを目的としています。
■DXセレクション■
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-selection/dx-selection.html
以上(2023年2月)
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