経済問題を考えるときには三つの目が必要であると、よく言われます。経済活動の細部をミクロの視点で注意深く見ることのできる「虫の目」、経済をマクロから鳥瞰(ちょうかん)することのできる「鳥の目」、そして経済の潮の流れの変化を見通すことのできる「魚の目」だそうです。

ビジネスに置き換えてみると、現場で顧客や商品に直接触れて実態を知るのが「虫の目」、自社はどんな状況に置かれていて、何が最重要問題なのかを感じるのが「鳥の目」、そして、自社や業界全体がどんな流れの中にあり、そこでどんな流れに沿って、どのタイミングで何を行ったらよいかを判断するのが「魚の目」だと考えればいいでしょう。

「虫の目」は業務改善に徹することといってよいかもしれません。一言でいうと「現場主義」です。現場の担当者が何を求め、どのように業務を遂行したいか、どうありたいかを明確にして、日常的業務を改善することです。そのためには、まず業務の進め方や作業内容を正確に記録し、点検し、リスクを洗い出し、改善の可能性を追求する必要があります。まさに、「虫の目」を持って、詳細に検討を重ねるということです。

「鳥の目」は戦略といっていいでしょう。自社の進むべき道筋を明確に意識し、それに向かって自社が活動しているかどうかを見定め、問題があれば、それを明確に把握することが求められます。高いところに上がって、全体を見下しながら、総合的判断をすることができるといったイメージです。

日常的な判断は「虫の目」と「鳥の目」があればできるかもしれませんが、ビジネスの将来の方向性を決定するようなときにはさらに「魚の目」が必要です。

そして、この「魚の目」を養うには、業界の動向や金融情勢はもちろんのこと、国際的な政治・経済、ひいては人類の歴史・文化や宗教問題まで含めたさまざまなジャンルに関心を持っておくことが求められるでしょう。こう考えると、何よりも「魚の目」を養ってくれるのはいろいろなジャンルの事象から得られる「知識」や「経験」であることが分かります。

自分のかかわっているビジネスが行き詰まった、人間関係がうまくいかないといったことも、「虫の目」の視点から離れ、「鳥の目」つまり高みから見下ろせば、全体像や自分の位置がよく分かり、そこから突破口を開くことができる場合があります。

「虫、鳥、魚」を客船で考えてみましょう。「虫の目」で見ると、客室、食堂、機関室などそれぞれの現場しか目に入りません。「鳥の目」で見ると客船としての機能が有機的に結びついていることが分かるでしょう。「魚の目」で見ると、海の状態、天候などを考え、安全に目的地に着くことが求められます。

「虫、鳥、魚」を時間軸で考えると、「虫の目」が今週のこと、「鳥の目」が半年先のこと、「魚の目」が3年先のことといったイメージです。

そして、「虫、鳥、魚」の目の割合ですが、若手社員は7対2対1、中堅社員は5対3対2、幹部社員は3対4対3、役員は1対5対4でお願いします。若手社員であっても「魚の目」を持つ努力が必要ですし、役員であっても「虫の目」を忘れてはなりません。

皆さんには、「虫の目」を持ってビジネスを遂行し、「鳥の目」を持って全体を設計し、「魚の目」を持って世の中の流れをつかんで、会社をよい方向に導いてほしいと思います。

以上(2023年3月)

pj16490
画像:Mariko Mitsuda

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