QUESTION
賃金手当や解雇のトラブルを裁判所内で簡易迅速に解決する方法はありますか。
ANSWER
簡易迅速に解決する方法として労働審判制度があります。
解説
労働関係民事訴訟は、バブル経済が崩壊した平成3年を境に急増しています。それまでは年間600件から700件前後の件数で推移していましたが、平成15年には約4倍になり過去最高の2,433件となりました。平成3年頃と比較すると、平成15年には、賃金手当等の事件が約5倍、普通解雇の事件が約4倍に増加しています。
急増している個別労働関係民事紛争を、さらに短期間で実情に即して解決する仕組みとした、いわゆる司法型のADR(裁判外紛争解決手続)が労働審判制度です。
労働審判法は、平成16年5月12日に公布され、平成18年4月1日から施行されました。
労働審判制度の内容は、次の通りです。
1.裁判官である労働審判官1名と中立かつ公正で知識経験共に
豊富な労働審判員2名からなる労働審判委員会で行なう。
2.労働審判委員会は、全国に50ある地方裁判所に設けられる。
3.労働審判手続においては、原則として3回以内の期日で審理し、結論を出す。
4.調停による解決を原則とし、調停が成立しない場合は、事案の実情に即した労働審判を行なう。
5.労働審判に不服のある場合は、2週間以内に異議の申立をすることができる。
6.労働審判に対して異議の申立があった場合には、労働審判手続の申立時に、労働審判がなされた地方裁判所に訴えの提起があったものとみなす。
7.労働審判に対して異議の申立のない場合は、労働審判は確定し裁判上の和解と同一の効力を持つ(民事執行力を有する)。
いじめや嫌がらせに関する会社の労働環境配慮義務を問う場合や、賃金を不当に差別されているなどと主張する場合、すぐに権利関係を主張するのが難しく内容が複雑である場合等は審判になじまないと判断されることもあるので注意が必要です。
※本内容は2024年2月29日時点での内容です。
<監修>
社会保険労務士法人中企団総研
No.99080
画像:Mariko Mitsuda