書いてあること
- 主な読者:報告・連絡・相談について、上司から「何を伝えたいのか、よく分からない」と言われる部下
- 課題:忙しい上司に手短に情報を伝えて業務をスムーズに進めたい
- 解決策:「結論を第一に伝える」「良い報告なのか悪い報告なのかを先に伝える」などのポイントを意識することで、適切な報連相ができるようになる
1 相手が求める情報を「報連相」する
報連相(ほうれんそう)は「報告・連絡・相談」の頭の漢字を取った造語です。業務をスムーズに進めるために、社会人の基本として必ず身に付けるべきことです。
部下が適切な報連相をしていれば、上司は状況を正しく理解し、適宜、指示を出すことができます。たとえ問題やトラブルが発生しそうになったときでも、事態が悪化する前に、上司がフォローをすることでトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。顧客や取引先との関係を良好に保つことへもつながります。
では、適切な報連相の条件とは何でしょうか? それは、以下の3つの条件を満たすものです。
- 業務が「望ましい状況か」「悪い状況か」、またその内容が具体的に伝わる
- 目的や意図が、相手に伝わる
- 相手がそれに基づいて判断し行動できる
適切な報連相をするには、
相手が知りたいことを過不足なく手短に伝え、相手の判断材料となるよう工夫すること
が必要です。
2 報連相が苦手な人と上手な人は何が違う?
1)あるメーカーで起きたトラブルの報連相。2つの事例
あるメーカーの営業課の社員が、取引先のX社から商品Yを受注しました。しかし、納品前日になって、自社の工場から「生産ラインのトラブルで、納品が納期より2日遅れる」と連絡が入りました。社員は、工場にどうにかできないか掛け合ったものの、工場は「申し訳ありません。どうしても2日遅れてしまいます」の一点張りでらちが明きません。社員は状況を営業課長に報告し、指示を仰ごうとしました。
ここで、営業課長(以下「課長」)へ報告した社員、2人の報連相の事例を挙げます。あなたが課長だったら、どちらの報告をしてほしいですか? 両者を比べてみてください。
1.Aさんの報連相事例
「課長、X社に納品予定の商品Yですが、ラインのトラブルがあった関係で、納品が2日遅れになってしまうと工場が言ってきています。どうにかできないか掛け合ったのですが、工場の担当者は、『申し訳ない』の一点張りでらちが明かず、しかもX社の納期は明日なのですが……」
2.Bさんの報連相事例
「課長、私が担当しているX社に明日納品予定の商品Yについて、トラブルが発生しており、報告とご相談です。先ほど工場から商品Yの納品が2日遅れると連絡がありました。生産ラインでのトラブルが原因とのことです。
商品Yは、X社に10ロット、明日の17時までに納品する予定です。他の取引先にも商品Yの納品予定がないか、各担当者へ確認しており、あと1時間後には全員に確認できる見込みです。
現在、商品Yの在庫は、○○支社に25ロット、××支社に15ロットあります。こちらに回してもらえるか確認します。
工場からは、このトラブルは、他の商品には影響ないとの報告を受けています。まだ対応が決まっていないため、X社にこの件は伝えていません」
さて、いかがでしょうか?
Bさんの報連相を聞いた課長は「分かった。各担当者に確認ができ次第、もう一度報告してほしい。○○支社と××支社には、私から連絡する。その結果次第では、X社に私から連絡する」と指示することができます。
一方、Aさんの報連相を聞いた課長は「X社には何ロット納品予定なのか?」「君の担当以外も含めて、X社以外で商品Yの納品予定はないのか?」「他の支社に、こちらに回せる在庫はないのか?」「X社の担当者には連絡しているのか?」と、トラブル解決に必要な質問をすることになります。しかし、Aさんはそれらを確認せずに、課長へ慌てて報告しに行ってしまっていたため、しどろもどろになってしまいました。
2)AさんとBさん、2人の報連相は何が違うのか?
2人とも、取引先に迷惑を掛けたくない気持ちは同じです。そのために、状況を課長に報告して、指示を仰ぐことが報連相の目的です。
しかし、2人の報連相には、次のような違いがあります。
課長にとって、Aさんの報告は、次の行動を決める上でほとんど役に立ちませんでした。一方、Bさんの報告は、次の行動を絞り込むことができる適切なものでした。
その差を生んだのは、報連相を行ったAさんとBさんの視野や思考、行動の違いです。
1.目先のトラブルだけにとらわれず、広い視野で見る
まず、視野についてです。
Aさんは、自分の担当であるX社のことだけで頭がいっぱいです。また、事態を打開するためのアイデアもありません。
一方で、Bさんは、X社だけでなく他の取引先や商品にも視野が行き届いています。目先のトラブルを解決することが第一ですが、連鎖してトラブルが起きないようにすることも大切です。Bさんは、この点についても考えることができていました。
2.相手の立場になって、他に何を知りたいか仮説を立てて対応する
次に、思考と行動についてです。
Aさんは、工場から連絡を受けたときに「とにかく課長に報告しなければ!」と、自分の考えを持たないまま、課長に指示を求めに行っています。
一方、Bさんは「課長はきっとX社以外の取引先への影響も気になるはずだ。それに、工場からの納品は間に合わないとしても、他の支社に在庫があれば、それを手配できないかと考えるはずだ」と仮説を立てて、他の担当者への確認、支社への在庫の問い合わせを行いました。
3 適切な報連相をするために必要なこと
相手にとって、必要な情報を伝えるためには、このように
- 目先のことにとらわれず、トラブルの及ぼす影響へ、視野を広げること
- 相手の立場になって、仮説を立てて考えること
が大切です。
普段から、自分が責任者だという意識を持って仕事に取り組むことで、「上司の立場だとしたら、その情報がないと判断に困る」、もしくは「その情報があれば、判断がしやすい」という情報がイメージできるようになります。
その上で、自分が上司に必要だろうとイメージした情報と、実際に報連相をして上司が必要としていた情報の差を埋めていくことが、適切な報連相をするための1つの方法です。
4 適切な報連相のために押さえたい3つのポイント
1)要点を整理し、結論第一で具体的に伝える
報連相をする前に、必ず自分が持っている情報を整理しましょう。重要な情報の抜け漏れを防ぎ、支離滅裂な報連相を避けることができます。
まずは、結論を第一に伝えることが原則です。その後に結論に至った理由や背景、今後の展望などを伝えましょう。新聞記事がそのような構成で書かれていますので、参考にするとよいでしょう。
また、抽象的な表現は使わないようにしましょう。「とても」「少し」「かなり」といった副詞ではなく、数字で説明できる情報は「1万個」というように伝えます。数字は「いつ(納期)」「いくつ(ロット)」「いくら(価格)」といったように、判断に直結するものが多いので注意して伝えましょう。
特に、期限に関しては「今日中」「朝イチ」「お昼頃」など、人によって解釈の分かれる表現を使わず、はっきりと「○日の○時」と明言しましょう。「いくつ」や「いくら」といったビジネスにおいて大事な情報を「1万個くらい」「10万円ほど」のように曖昧に表すのも御法度です。
2)良い報告か悪い報告か、事実と意見・推測を区別し、上司に伝えることを明確に
ビジネスでは、商談が成立したという良い報告もあれば、トラブルが起きたという悪い報告もあるでしょう。「Z社との商談で、当社にとって避けたい状況に陥っており、ご相談です」といったように、良い報告か悪い報告かを示した上で話し始めるとよいでしょう。
特に、ミスやトラブルなど悪い情報について報連相をしなければならないときは気がめいるでしょう。しかし、放っておいては事態が悪化するため、悪い情報こそ早く伝えることが肝要です。自分だけで悩んだり、勝手な判断をしたりすれば、取り返しのつかないことにもなりかねません。
また、話の中で、事実と意見・推測が混在していると、上司は「部下の意見」を「事実」と捉えてしまいかねません。もし、事実に対する意見や推測を加えたい場合は「これは私見ですが」と断ることで、事実と意見・推測が区別できます。
3)伝えるタイミングと方法を、相手に合わせて考慮する
忙しい上司へ報連相を行うに当たっては、タイミングや方法にも配慮が必要です。
口頭で伝える場合には、情報の緊急性・重要性を考えながら、タイミングを見計らって「○○について報告があります。お時間を頂戴してもよろしいですか?」と、相手の都合を確認しましょう。報連相は原則、相手の時間を割いて行うものです。
急を要する報告でなければ、メールやチャットツールなど、上司が都合の良いときに確認できる方法で伝えるのも配慮の1つです。
リモートワークの普及により、面と向かって口頭で伝える機会が減っているかもしれません。しかし、情報の緊急性・重要性に応じて、メールやチャットツールなどの文面と口頭、どちらが良いのか使い分けをしましょう。口頭での伝達であっても、要点をまとめた文書を添えることで、情報の抜け漏れや、解釈の行き違いを防ぐことができます。
以上(2023年6月更新)
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画像:pixabay