書いてあること

  • 主な読者:会社をさらに成長させるために、頼れる参謀を切望している経営者
  • 課題:参謀には経営者とは異なる視点を持ってほしいが、そうした人材は少ない
  • 解決策:「参謀は内部人材に限らないし、ジョブ型でもいい」という感覚を持つ

1 「参謀2.0」を考える。なぜ、経営者には参謀が必要なのか?

いかに優れた経営者でも1人でできることは限られます。ですから、

経営者には、自身とは違う視点で物事を捉え、時には自身をいさめてくれる「参謀」

が必要です。特に、コロナ禍を経て、経済が再び急速に動き始めた今、攻めるときも守るときも、経営者を支える参謀の存在は頼もしいはずです。

一方、ここ数年で参謀の在り方も変わってきました。例えば、新規事業を立ち上げる際、コアとなる人物(参謀)を業務委託で外部から招聘(しょうへい)するケースがあります。また、金融機関がDX参謀などとして、会社を強力にサポートするケースもあります。これらの動きは、

  • 参謀を内部人材とは限らず、業務委託で外部から招聘できる
  • 一部の分野に特化した「ジョブ型参謀」の組み合わせでもよい

という状況の変化を反映したものです。以降ではこの流れを踏まえて、経営者が参謀を獲得する上で重要な視点を紹介します。

2 「内部×外部」で化学反応を起こす!

参謀は誰にでも務まるものではないため、その選定や育成に時間がかかります。とはいえ、経営者が捻出できる時間には限りがあります。また、経営者が自ら参謀を育成することになれば、参謀の考え方は経営者と似通ってくるので、「異なる視点 で局面を見る」という、参謀にとって重要な条件が満たされにくくなります。

もし、御社が参謀の育成に困っているなら、参謀を「業務委託で外部から招聘する」のも一策です。実際、こうして参謀を獲得し、事業を成功に導いている経営者は数多くいます。とはいえ、単に業務委託として使うだけだと、その参謀との契約期間が終了した後に何も残りません。ですから、社内の参謀候補と外部から招聘した参謀とでチームをつくり、自社の参謀候補に新しい知見を吸収させることが重要です。

これには別の意味もあります。外部から参謀が招聘されると、自社の参謀候補は面白くありません。しかし、外部から招聘した参謀とチームを組ませることで、参謀候補は自身への経営者の期待を再認識できるわけです。

3 「ジョブ型」参謀はすでに存在する

経営者に「経営に必要な能力は?」と質問すれば、おのおのが自身の考えを述べるでしょう。例えば、「人間力」「判断力」「リーダーシップ」などですが、これらは抽象的です。より具体的に掘り下げるにしても、経営者の仕事は多岐にわたり、具体化してみると実に多くの能力を求められていることが分かります。そして、多様な能力が求められるのは、経営者を支える参謀についても同様です。

ただ、何もかもに精通した「オールマイティーな参謀」は、そうそういるものではありません。ですから、考え方を少し変えて「ジョブ型参謀」のチームを意識してみましょう。「DXであればA参謀」「採用教育であればB参謀」といった具合です。例えば、顧問税理士は、税務会計における社外参謀といえますが、DXには明るくないかもしれません。こういう場合は、別の分野で専門的な知見を持つ参謀を獲得し、組み合わせればよいのです。

また、参謀は必ずしも管理職クラス(部長や課長など)である必要はありません。通常の社員の中にも、経営者の目が届かないところ(テレワークなど)で、さまざまなことを学習し、特定分野においては社内の誰よりも知識を持っている人がいます。そうした社員は、自分の得意とする分野において、ジョブ型参謀としての役割を立派に果たしてくれるでしょう。

4 参謀リーダーという考え方

参謀は1人とは限らず、複数人いるケースもあるわけですが、この場合、参謀を束ねる参謀リーダーがいると意見がまとまりやすくなります。この参謀リーダーは、DXや税務会計などに明るくなくてもよく、むしろ「コミュニケーション能力が高く、ある意味で狡猾(こうかつ)に経営者を利用できる器」であることが求められます。例えば、次のような資質を備えた人物は参謀リーダーに向いています。

1)イエスマンにも反対勢力にもならない

参謀リーダーは経営者が好みそうな意見をまとめる「イエスマン」ではありません。さまざまな知見に触れ、経営者に「異見」を提示できる立場である必要があります。ただし、決して経営者を軽んじたり、反対勢力になったりすることはありません。

2)現場(社員)の声を吸い上げる

経営者は現場の社員の声を聞こうとしますが、社員は経営者に率直な意見を言うことをためらいます。特に悪い情報は、経営者の耳に入らないことが多いものです。そこで、参謀リーダーは経営者の目となり耳となって、経営者が把握しにくい社内の声や雰囲気などをつかみ、経営者に伝えなければなりません。特に、経営者に反抗的な社員がいる場合は注意します。

3)経営者の代弁者となる

経営者は、社員にさまざまなことを語りかけます。組織に一体感を与えるために理念を語ることもあれば、新たに講じた施策の内容やその意図を語ることもあるでしょう。しかし、多くの社員にとって、経営者の思いや意図は分かりにくいものです。そこで、参謀リーダーが経営者の代弁者となり、経営者の真の思いや意図を分かりやすく伝えるようにしましょう。

4)経営者をうまく使う

経営者でなければ対処できない課題があります。例えば、重要な交渉が暗礁に乗り上げたときに、経営者が出ていくことで流れを変えられることもあります。常に経営者を頼るというわけではなく、「ここぞ!」というときに、良い意味で経営者を使い、物事をうまく運ぶ器用さが参謀リーダーには求められます。

以上(2024年6月更新)

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画像:pexels

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