書いてあること
- 主な読者:2024年中に住宅をローンで購入した人
- 課題:はじめて確定申告をするが、必要な書類や控除額の計算が分かりにくい
- 解決策:まずは5つの要件を全て満たすかを確認する。例えば、建ててから6カ月以内に住み始め、適用を受ける各年の12月31日まで住んでいるなどがある
1 住宅ローン控除ではじめての確定申告
年末調整だけで済んでいた人が、はじめて所得税の確定申告をする。そのきっかけとして最も一般的なのが、いわゆる「住宅ローン控除」(正式には「住宅借入金等特別控除」)です。しかし、はじめての確定申告は戸惑うものです。また、住宅ローン控除は、控除期間が10年または13年と長いので、毎年、きちんと手続きしなければなりません。
この記事では、2024年中にローンで住宅を購入した人向けに、住宅ローン控除の基本的な手続きや適用要件、事例を用いた控除額の計算などを説明します。
2 確定申告は1年目だけ。2年目以降は年末調整で
住宅ローン控除を受けるには、次の書類を添付した確定申告書を税務署に提出します。給与所得者の場合、住宅に住み始めた年に確定申告をすれば、翌年以降は勤務先の年末調整で大丈夫です。
- 金融機関等から交付を受けた「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」
- 法務局で発行を受ける「家屋の登記簿謄本または抄本」
- 不動産会社との「売買契約書、請負契約書など」で、家屋の新築年月日または取得年月日、家屋の新築工事の請負代金または取得対価の額および家屋の床面積を明らかにする書類またはその写し
- 認定長期優良住宅等(詳細は後述)の場合、その証明書等
土地の取得に係る住宅ローンがある場合、土地の登記簿謄本または抄本、売買契約書などで土地等を取得したこと、取得年月日および取得対価の額が明らかになる書類またはその写しが必要です。
確定申告をすると、申告をした年の秋ごろに残りの年数分(9年または12年分)の控除申告書が、まとめて税務署から郵送(確定申告時にe-Taxで電子データによる交付を希望した場合には、e-Tax上で証明書を受け取る)されます。年末調整では、その控除申告書に毎年金融機関から送られてくる残高等証明書の項目を転記し、年末調整の書類と併せて会社に提出することで、2年目以降の住宅ローン控除を受けることができます。
3 全て満たす必要がある6つの要件
1)新築した住宅は省エネ基準を満たしていますか
2024年1月1日以降に建築確認を受けた新築の住宅(不動産会社が中古住宅をリホームして販売する買取再販住宅を含む)については、省エネ基準などを満たさない住宅(以下「一般住宅」。住宅区分の詳細は後述)は、住宅ローン控除の適用を受けられなくなりました。
ただ、次のいずれかのケースに該当する場合には、新築した住宅が一般住宅であっても、借入限度額2000万円かつ控除期間10年間の住宅ローン控除を受けることができます。
- 2023年12月31日までに建築確認を受けているケース
- 2024年6月30日までに工事が完了しているケース
- 取得した住宅が、買取再販住宅ではない中古住宅に該当するケース
2)年末まで住み続けていますか?
新築・取得・増改築(以下「新築等」)の日から6カ月以内に住み始め、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいる必要があります。
3)控除を受ける年の合計所得金額は2000万円以下ですか?
特別控除を受ける各年分の合計所得金額が2000万円以下である必要があります。
4)新居の床面積や用途は適切ですか?
新築等をした住宅の床面積が50平方メートル以上(その年分の合計所得金額が1000万円以下の人は40平方メートル以上)であり、床面積の2分の1以上の部分を自分自身が居住するために使っている必要があります。つまり、賃貸や店舗利用をしていないということです。
5)住宅ローンの借入先・返済期間・利率は適切ですか?
10年以上の分割返済をする新築等のための、一定の借入金または債務(住宅の敷地となる土地を取得するための借入金を含む)である必要があります。一定の借入金または債務とは、例えば、金融機関、独立行政法人住宅金融支援機構、勤務先などからの借入金や、独立行政法人都市再生機構、地方住宅供給公社、建設業者などに対する債務です。しかし、勤務先からの借入金で、無利子または0.2%に満たない利率による場合は該当しません。また、親族や知人からの借入金は全て該当しません。
6)住み始めた年の直前2年間・直後3年間に今まで住んでいた住宅を売って、特例を受けていませんか?
住み始めた年とその直前2年間、直後の3年の6年間に、以前居住していた住宅を譲渡した場合の特例(住宅を譲渡したときに受けられる3000万円の特別控除や軽減税率などの特例)の適用を受けていると該当しません。
4 自分が購入した住宅はどの区分か
住宅ローン控除は、新築等をした住宅を次のように区分しており、一般住宅以外の住宅には一定の評価基準があります。
- 認定長期優良住宅:長期に使用するための構造設備などが備わっている住宅
- 認定低炭素住宅:二酸化炭素の排出が抑制できる住宅
- 省エネ基準適合住宅:日本住宅性能表示基準(外壁などの耐熱性や給湯・照明などの1次エネルギー消費の評価基準)において一定以上の性能を満たしている住宅
- ZEH水準省エネ住宅:日本住宅性能表示基準(外壁などの耐熱性や給湯・照明などの1次エネルギー消費の評価基準)において一定以上の性能を満たしている住宅。省エネ住宅よりも多くの性能を満たす必要がある
- 一般住宅:上記以外の住宅
いずれの場合も、居住開始1年目~10年目または13年目において、合計所得金額が2000万円以下の年について適用できます。
5 控除対象年と控除額
1)認定長期優良住宅または認定低炭素住宅の新築等
認定長期優良住宅や認定低炭素住宅を新築等した場合の控除額は、2024年に変更(縮小)されました。控除期間、控除額の計算方法は次の通りです。
- 控除期間:13年(増改築または中古住宅の場合は10年)
- 各年の控除額の計算:各年末借入金残高等×0.7%
- 控除限度額:31万5000円=4500万円×0.7%(増改築の場合は14万円=2000万円×0.7%、中古住宅の場合は21万円=3000万円×0.7%)
なお、子育て世帯(19歳未満のこどもがいる世帯)と若者夫婦世帯(夫婦のうちいずれかが40歳未満の世帯)の控除限度額は縮小が見送りになり、
- 35万円=5000万円×0.7%(増改築または中古住宅の場合は上記と同じ)
となります。
2)省エネ基準適合住宅
省エネ基準適合住宅を新築等した場合、2024年に変更(縮小)されました。控除期間、控除額の計算方法は次の通りです。
- 控除期間:13年(増改築または中古住宅の場合は10年)
- 各年の控除額の計算:各年末借入金残高等×0.7%
- 控除限度額:21万円=3000万円×0.7%(増改築の場合は14万円=2000万円×0.7%または中古住宅の場合は21万円=3000万円×0.7%)
なお、子育て世帯(19歳未満のこどもがいる世帯)と若者夫婦世帯(夫婦のうちいずれかが40歳未満の世帯)の控除限度額は縮小が見送りになり、
- 28万円=4000万円×0.7%(増改築または中古住宅の場合は上記と同じ)
となります。
3)ZEH水準省エネ住宅
ZEH水準省エネ住宅を新築等した場合、2024年に変更(縮小)されました。控除期間、控除額の計算方法は次の通りです。
- 控除期間:13年(増改築または中古住宅の場合は10年)
- 各年の控除額の計算:各年末借入金残高等×0.7%
- 控除限度額:24万5000円=3500万円×0.7%(増改築の場合は14万円=2000万円×0.7%または中古住宅の場合は21万円=3000万円×0.7%)
なお、子育て世帯(19歳未満のこどもがいる世帯)と若者夫婦世帯(夫婦のうちいずれかが40歳未満の世帯)の控除限度額は縮小が見送りになり、
- 31万5000円=4500万円×0.7%(増改築または中古住宅の場合は上記と同じ)
となります。
4)一般住宅(中古住宅に限る)
一般住宅(中古住宅に限る)に係る住宅ローン控除の控除期間、控除額の計算方法は次の通りです。
- 控除期間:13年(増改築または中古住宅の場合は10年)
- 各年の控除額の計算:各年末借入金残高等×0.7%
- 控除限度額:14万円=2000万円×0.7%
5 事例で計算してみよう
1)条件
居住者甲は、2024年3月1日に新築のマンション(床面積84平方メートル、省エネ基準適合住宅に該当)を取得し、すぐに住み始めました。
- マンションの取得対価:5350万円(消費税10%込み)
- 取得資金
- 自己資金:1250万円
- 借入金(20年間):4100万円
- 借入金の年末残高:4062万円
- 甲の2024年分の合計所得金額:850万円
2)住宅ローン控除額の算出方法
1.要件の確認
合計所得金額が850万円(2000万円以下に該当)、かつ、床面積が84平方メートル(50平方メートル以上に該当)なので「適用あり」とします。
2.控除額の計算
年末借入金残高は4062万円であり、3000万円を上回っているため、控除額は28万4340円(4062万円×0.7%)ではなく、21万円(3000万円×0.7%)となります。
6 住宅ローン控除の注意点
1)適用除外になるケース
住み始めた年とその直前2年間、直後の3年の6年間のどこかで、居住用財産の課税の特例(住宅の買換えがあった場合の課税の繰延規定や、住宅の譲渡があった場合の3000万円特別控除など)の適用を受ける場合、住宅ローン控除は住み始めた年以後10年または13年間は適用できません。従って、住宅を譲渡または買換える場合は、どの特例が有利なのかを判断しましょう。
2)転勤などで購入した住宅に住めなくなったケース
住宅ローン控除の適用を受けた人が、転勤などやむを得ない事情で住宅に住めなくなった場合、その年以後は住宅ローン控除が受けられません。しかし、その人が再び居住用家屋に住むことになったら、一定の手続きをして適用を受けることができます。一定の手続きとは、計算書や控除額を添付・記載した確定申告書の提出です。
例えば、東京に住宅を購入して住み始めた年以後3年間、住宅ローン控除の適用を受けた人が大阪に転勤となり、その間、東京の家屋は他人に賃貸していたとします。2年後、その人が東京に戻り、元の家屋に再び住み始めた場合、当初の居住開始年からの適用期間(10年または13年間)のうち賃貸していた年の翌年から、再び住宅ローン控除が適用できます。
以上(2024年12月更新)
(監修 税理士 谷澤佳彦)
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