厚生労働省は、年収が一定額を超えると手取りが減ることから、パートタイム労働者等が就労調整をする事例がみられる、いわゆる「年収の壁問題」の支援強化パッケージを発表し、「106万円の壁」「130万円の壁」への当面の対応策を示しました。

年金制度の改正が予定される令和7年度までの措置として、令和5年10月から実施していくとのことです。

本稿では、厚生労働省から公表された「年収の壁・支援強化パッケージ」について、説明いたします。

1 年収の壁とは

厚生労働省が実施した「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査」によると、会社員などの配偶者で扶養されていて保険料の負担がない「第3号被保険者(社会保険上の被扶養配偶者)」のうちおよそ4割が就労していることが明らかになっています。

第3号被保険者の手取り収入の変化(イメージ)

(厚生労働省「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査」)

上記のように、一定以上の収入増となった場合、新たに発生する社会保険料の負担や収入要件が定められている配偶者手当等が無支給となるなど、手取り収入が減少することを恐れ、就業調整をしている方が存在します。

これにより、本人の働く意欲が阻害され、さらには企業にとっても貴重な労働戦力を有効活用できないジレンマが常態化していました。

2 支援強化の内容

厚生労働省は、「年収の壁・支援強化パッケージ」の中で、大きく分けて3つの対応を行うとしております。

年収の壁・支援強化パッケージ

(厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」)

3 さいごに

厚生労働省が発表した具体的な施策の概要は、次の通りとなります。

  1. キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」の新設
  2. 社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外
  3. 事業主の証明による被扶養者認定の円滑化
  4. 企業の配偶者手当の見直し促進
  5. 業務改善助成金の活用促進

同省は、この「年収の壁・支援強化パッケージ」の各対応策について、今後所要の手続きを経た上で、関係者と連携し、着実に進めていくこととしています。企業は、このパッケージの趣旨や制度内容を良く理解し、適切に活用していきましょう。

※本内容は2023年10月6日時点での内容です

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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画像:photo-ac

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