1 契約書、覚書、念書・誓約書の違い

契約とは、

「申し込み」と「承諾」という、相対する意思表示が合致することによって成立する法律行為

です。当事者同士の意思が合致すれば、原則として口約束でも契約は成立します。しかし、ビジネス上では書面を交わすのが通常です。書面には「契約書」「覚書」「念書・誓約書」などがありますが、実務上は次のような使い分けがされています。

1)契約書

これから行う取引の条件を明確にするため、当事者の合意内容を双方の権利義務の形で記載した書面です。

念書・誓約書との違いは、「当事者双方が記名・押印していること」です。つまり、当事者一方の意思を示す念書・誓約書と異なり、契約書は当事者双方の意思が合意に至っていることが証明されているのです(これは覚書も同じです)。

2)覚書

契約書を作成する前段階で当事者の合意事項を書面にしたもの、あるいは既にある契約条項の解釈や前提事実を明確にするためや補足で合意したい事項を定めるために契約書に付随して別途作成される書面です。

3)念書・誓約書

契約の一方当事者が相手方に差し入れる形式で、自分が義務を負うことやその義務を履行することを約する内容の書面です。

念書・誓約書は、一方の当事者が相手に対して一方的に誓約を行うもので、この点が契約書や覚書との大きな違いです。そのため、念書・誓約書を差し出す側が署名や押印を記載し、受け取る側は署名や押印をしないのが一般的です。差し出す側だけが書面の内容に拘束されます。

2 紛らわしい用語の解説

1)「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」の違い

「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」は、いずれも時間的即時性(ある行為から次の行為までの時間の近さ)を表す語句ですが、緊急度の高い順に「直ちに>速やかに>遅滞なく」として用いられるのが一般的です。

ただし、「具体的にどの程度で遅滞と評価できるか」を示す基準にはなりにくいです。契約書上にはできる限り「3営業日以内」など、具体的に記載しましょう。

2)「~することができる」「~しなければならない」「~するものとする」の違い

それぞれ次の意味合いがあります。

  • 「~することができる」:するか否かを選択できる
  • 「~しなければならない」:することが義務である
  • 「~するものとする」:することが義務である

「~するものとする」は、「~しなければならない」と程度が異なることはあるものの、法的な義務付けを意味する用語である点は同じで、その効果も変わらないといえます。相手に義務を負わせたい場合は「~しなければならない」または「~するものとする」を使い、自社に選択の余地を残したい場合は「~することができる」を使います。

3)「~とみなす」

「~とみなす」は、その事実等を擬制する(そうであると扱う)意味で用いられます。例えば、売買契約書で「納品後5営業日以内に、乙(買い手)が甲(売り手)に対して検査に関する合否の通知を行わないときは、当該検査に合格したものとみなす」という条項がある場合、仮に検査に不合格となるような製品があっても、納品後5営業日以内に合否の通知を行わなければ、検査に合格したものとして扱われることになります。

4)「等」

「等」は、その前に示されているものと同種の他のものがあることを示します。例えば、「製品A」は「製品A」のみを示しますが、「製品A等」は製品A以外に特定できない別の製品があることを示します。「等」には曖昧さがあります。これを排除するためには具体的な事項を列挙することになります。一方で、あえて「等」を使用して、解釈に幅を持たせることもあります。自社に不利な義務を負う条項に「等」が使われている場合は要注意です。範囲を明確にするよう相手方に確認しましょう。

5)「及び」と「並びに」の違い

複数の用語を結ぶ接続詞です。「及び」と「並びに」はいずれも英語でいう「and」を意味しますが、契約書では使い分けがされています。

まず、複数の用語を並列にする場合は、「及び」を使います。基本的な使い方は次の通りです。

  • 2つの用語を並べる場合は「支社1及び支社2」
  • 3つ以上の用語を並べる場合は「支社1、支社2及び支社3」(最後を「及び」でつなぐ)

次に、複数の用語を2つ以上の階層に分けて並べる場合は、最も下位の階層のみ「及び」でつなぎ、その他の上位の階層は全て「並びに」でつなぎます。基本的な使い方は次の通りです。

  • 階層が2つの場合は「(支社1及び支社2)並びに(関連会社)」
  • 階層が3つの場合は「[(支社1及び支社2)並びに(関連会社)]並びに(取引先)」

「及び」は小さな段階の語句を併合的に連結する場合に、「並びに」は大きな段階の語句を併合的に連結する場合に用いることを意識するとよいでしょう。

6)「又は」と「若しくは」の違い

複数の用語を結ぶ接続詞です。「又は」と「若しくは」はいずれも英語でいう「or」を意味する言葉ですが、契約書では使い分けがされています。

まず、複数の用語を並列にする場合は「又は」を使います。基本的な使い方は次の通りで、「及び」の場合と同じです。

  • 2つの用語を並べる場合は「支社1又は支社2」
  • 3つ以上の用語を並べる場合は「支社1、支社2又は支社3」(最後を「又は」でつなぐ)

次に、複数の用語を2つ以上の階層に分けて並べる場合は、最も上位の階層のみ「又は」を使い、その他の下位の階層は全て「若しくは」でつなぎます。基本的な使い方は次の通りです。

  • 階層が2つの場合は「(支社1若しくは支社2)又は(関連会社)」
  • 階層が3つの場合は「[(支社1若しくは支社2)若しくは(関連会社)]又は(取引先)」

「又は」は大きい選択の段階で用い、「若しくは」はそれより下位の小さい選択の段階に用いる言葉であることを意識し、「又は」を基準に、前の文と後の文を分断するとよいでしょう。契約書の内容を確認する際に、押さえておくべきは用語に限りません。以降では、トラブルが発生した場合の規定など、内容確認で押さえておくべきポイントを紹介します。

3 内容確認で押さえておくべき5つのポイント

1)「5W2H」を確認する

契約書の内容をしっかり確認しないで締結してしまうと、後にトラブルになる恐れがあります。法務の知識や実務経験があれば理想的ですが、そうでなくても基本的な事項は確認することができます。まずは「5W2H」です。これはビジネスの基本ですが、契約書でも通用します。

  • Who(誰が):契約当事者は誰か(会社名、代表者名は正確か。相手が法人の場合、法人格(株式会社、合同会社など)は正しいか)
  • Why(なぜ):契約締結の目的は何か(目的条項で明確になっているか)
  • What(何を):締結する契約の内容は何か(製品・サービスの仕様は明確か、数量・品質基準は具体的か)
  • When(いつ):義務の履行日(権利の行使日)はいつか。契約期間はいつまでか(納期・支払期日は正確か。自動更新条項の有無を確認)
  • Where(どこ):義務の履行場所(権利の行使場所)はどこか(納品場所、研修場所は正確か)
  • How(どのように):義務はどのように履行されるのか(権利はどのように行使するのか。納品場所・支払い方法は明確か)
  • How much(いくら):契約を通じて支払う(受け取る)対価はいくらか(金額、消費税の扱い、支払い条件は明確か)

2)権利・義務の発生要件を確認する

権利・義務の発生要件をしっかりチェックしておかないと、トラブルになった際に自社が不利な立場に立たされることがあります。

例えば、製品の売買契約書の返品に関する条項が、「本売買契約に基づき納入された製品に不具合がある場合、乙(買い手)は、甲(売り手)に当該製品を返品することができる」としか定められていないと、「不具合」の基準が不明確です。

場合によっては、製品には問題は全くないが製品が入っているケースに傷がある、といったことでも、相手から返品を主張されかねません。こうした場合は、「不具合」に該当する事由をできる限り具体的に列挙するなど、権利・義務が発生する要件を明確にしておくべきです。

3)トラブルが発生した場合の規定を確認する

契約書の大切な役割の1つは、その契約に関するトラブルから自社の権利を守ることです。例えば、次のような条項は最低限、確認しておくべきでしょう。

  • 損害賠償条項:損害賠償の範囲は適切か、損害賠償額の上限は設定されているか
  • 契約解除条項:どんな場合に解除できるか、解除時の損害賠償や違約金の定めはあるか
  • 不可抗力条項:天災、疫病、戦争等で履行できない場合の扱いは明確か
  • 秘密保持条項:秘密情報の範囲は適切か、秘密保持義務の期間は適切か
  • 知的財産権条項:成果物の権利は誰に帰属するか、既存の知的財産権の扱いは明確か

全てのトラブルを想定することはできませんが、少なくとも「発生する可能性の高いトラブル」「発生した場合に被害が大きいトラブル」については洗い出し、契約書に定めておきます。

また、トラブルが発生した際に、自社の負う義務が、適切かつ許容できるものであるかということも確認が必要です。契約の相手方が契約書の草案を作成した場合は、特に注意が必要です。草案の作成者側(相手方)にとって有利な条項が盛り込まれていることで、自社にとっては不利になることがあります。

4)関連する契約書についても確認する

基となる契約書(「原契約」や「基本契約」などといいます)には、関連する契約(以下「関連契約」)が覚書などのタイトルで締結されることがあります。このような場合、原契約だけではなく関連契約についても確認が必要です。

例えば、原契約締結時の販売金額は1000万円でも、その後に価格改定が行われ、覚書で1200万円に訂正しているケースがあります。この他にも、原契約と関連契約との間で支払日、納品日、権利・義務などが変更となり違いが生じている場合があるため、注意が必要です。

5)分からない点は、相手方に確認する

契約書を確認していると、「意味が分かりにくい条項」「不要と思われる条項」などが出てきます。こうした場合は、次のような点について必ず相手方に確認しましょう。

  • なぜこの条項が必要なのか
  • この条項の具体的な適用場面はどのような場合か
  • 自社にとってどのようなリスクがあるか

ただし、不要と思われる条項で特に意味をなさないことが明らかであれば、契約をスムーズに締結するためにあえてそのままにしておくことも、場合によってはあり得ます。

以上(2026年1月更新)
(監修 弁護士 田島直明)

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画像:unsplash

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