書いてあること

  • 主な読者:社員の安否確認手段が確立されていない会社の経営者、総務担当者
  • 課題:いざというとき、社員の安否をすぐに確認できるか分からない
  • 解決策:安否確認の目的を明確にして、自社に合った手段を整備する

1 緊急時、社員の安否確認が不可欠な2つの理由

2024年は元日に能登半島地震、8月8日に日向灘地震(宮崎県日向灘を震源とする地震)が発生しました。いつどこで大きな地震が起きてもおかしくなく、備えはどの会社にとっても必須です。

いざ災害が起こってもスムーズに行動できるよう、事前に決めておきたいのが、安否確認の手段です。緊急時に社員の安否確認が不可欠なのは、

  • 社員と、社員の家族の安全を確保するため
  • 事業継続や再開の判断をするため

です。

社員の安否確認をすることは当然ですが、社員の家族も心配です。また、大規模な自然災害の場合、社員の状況によって事業継続(あるいは再開)の状況は変わってきます。「誰が業務をできるのか?」は大切な情報です。

会社が行うべき安否確認の流れは次の通りです。

  1. 避難して安全を確保してから、集合場所に集まった社員を点呼で確認する
  2. 外出中やリモートワークなどでその場にいない社員と連絡を取り、安否確認をする
  3. 安否情報を集計し、待機や出社などの状況に適した指示を出す

このとき、2.で発生しがちな課題として、いざというときに普段の連絡手段が使えないことがあります。特に電話は、災害発生時に回線の混雑や通信制限で使えない場合があります。

では、どうやって社員の安否確認を行えばよいでしょうか。また、日ごろからどのような備えをしておくべきでしょうか。具体的に見ていきましょう。

2 どのように社員の安否確認を行うか?

1)5つの主な安否確認手段を比較

ここでは、官公庁や各種企業が提供している防災情報を参考に、5つの主な安否確認手段を取り上げ、その特徴と注意点を比較します。

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「社員への使い方の教育」「安否状況の集計作業」「導入費用」「運用費用」などを比較すると、それぞれの手段で一長一短があります。

東京商工会議所「会員企業の災害・リスク対策に関するアンケート(2023年調査)」によると、社員の安否確認に最も多く使われる手段は、「メールやSNS」の56.2%となっています。普段から使い慣れている連絡手段とはいえ、集計作業が煩雑であり、社員数や事業拠点数が多い場合は、安否情報を集めるだけでもかなりの時間が取られてしまいます。

対して、安否確認システム/サービスは、導入や運用に費用がかかるものの、安否状況を自動で集計できる上、安否確認メールの自動送信や、報告がない場合のメール再送信機能を備えているものもあり、混乱した状況でも安否情報をスムーズに整理できます。

また、災害用伝言ダイヤル(171)は無料で利用できますが、データ通信専用SIMカードでは音声通話ができないため、社員が格安SIMを使っている場合には注意が必要です。災害用伝言ダイヤル(171)と災害用伝言板(web171)について、詳しくは以下の総務省ウェブサイトをご確認ください。

■総務省「災害用伝言サービス」■

https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/net_anzen/hijyo/dengon.html

2)安否確認の前提となるインターネット接続環境の確保

安否確認手段はさまざまありますが、災害用伝言ダイヤル(171)を除けば、インターネットに接続できる環境が必要です。

そこで知っておきたいのが、「00000JAPAN」(ファイブゼロジャパン)です。「00000JAPAN」は、災害発生時に携帯電話会社などが無料開放する公衆無線LAN(Wi-Fi)のアクセスポイントで、これを利用してインターネットに接続できます。

ただし、「00000JAPAN」は、被災地で誰でも使えるという利便性を確保するため、通信の暗号化などセキュリティーへの対応は行われていません。「00000JAPAN」を利用するときは、安否確認や災害関連情報の収集にとどめるようにしましょう。

■無線LANビジネス推進連絡会■

https://www.wlan-business.org/00000japan/

3 日ごろから備えておきたいことは?

災害発生時に、安否確認手段が未整備だったら、もう手遅れです。そうならないために早急に決めておくべきなのは、「安否確認で優先的に使う手段」と「安否情報として報告する内容」です。その上で、報告・連絡といった基本的な行動が普段からしっかりできる組織を作っていきましょう。

1)安否確認で優先的に使う手段を1つ決めておく

日常業務で、メール、電話、ビジネスチャットなど複数のツールを用途に応じて使っている会社も多いでしょう。

しかし、緊急時には、連絡手段が複数あることで、かえって混乱を招く場合があります。バックアップ的に複数の安否確認手段を持っておくことは大切ですが、優先的に使う手段は1つに決めておきましょう。

2)安否情報として報告する内容を決めておく

社員が安否情報を登録するときの文言(メッセージ)については、

  • 名前
  • 現在いる場所(自宅・会社・外出先)
  • 状況(例:1人・家族や同僚と一緒)
  • 安否(けがの有無など)
  • 出社の可否
  • 次にメッセージを入れる時刻

など報告する内容を決めておきましょう。

災害用伝言ダイヤル(171)の録音時間は30秒以内、災害用伝言板(web171・各キャリア)の文字数は100文字以内(名前と状況以外)となっており、簡潔に伝える必要があります。災害発生時は、社員がパニックを起こし、うまく情報を伝えられなくなることもあり得ます。安否確認の訓練の実施や、報告すべき情報を記したカードを配布するなどの工夫をしましょう。

なお、災害用伝言ダイヤル(171)と災害用伝言板(web171・各キャリア)は、体験利用日を設けており、災害発生時以外でも利用できます。詳しい日程は、各サービスのウェブサイトをご確認ください。以下、一例として紹介します。

■NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)体験利用のご案内」■

https://www.ntt-east.co.jp/saigai/voice171s/howto.html

■NTT東日本「災害用伝言板(web171)体験利用のご案内」■

https://www.ntt-east.co.jp/saigai/web171s/howto.html

■NTT西日本「災害用伝言ダイヤル(171)体験利用のご案内」■

https://www.ntt-west.co.jp/dengon/taiken/

■NTT西日本「災害用伝言板(web171)体験利用のご案内」■

https://www.ntt-west.co.jp/dengon/web171/taiken.html

3)報告・連絡をしっかりできるようにする

どれだけ事前に安否確認の体制を整備しても、災害発生時には想定外の事態が起こり得ます。

重要なのは、平時でも基本的な報告・連絡を、全員がしっかりとできる組織であることです。例えば、連絡に対して迅速にレスポンスを行う、外出するときに行き先を周知する(周囲のメンバーも確認する)といった基本的な行動です。社員がこうしたことをできているのか、いま一度確認し、できていないようであれば、普段から徹底するように、あらためて注意を促しましょう。

また、避難を要する災害に見舞われた場合、スマートフォンや携帯電話のバッテリーが切れてしまい、継続的な安否確認ができなくなる恐れがあります。外出時の持ち物や避難用品に充電済みのモバイルバッテリーを加えるなどの呼びかけをしておきましょう。

以上(2024年9月更新)

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画像:NOBUHIRO ASADA-shutterstock

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