活用する機会の例
- 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
- 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
- マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など
片側一車線の道路を走行中、前にゆっくり走る車がいると、対向車の有無など周囲の状況をよく確認しないまま前の車を追い越したくなることはありませんか。
追い越し時に対向車と衝突するかもしれない、というようなリスクに気付いていながら効率など何らかのメリットを得るためにリスクを冒そうとしてしまう心理について考えます。
1.「心の天秤」に影響されるリスクテイキング行動
リスクテイキング行動とは「危険や損害の可能性を認識しているがリスクを冒す」行動です。
冒頭の例は、追い越し行為を行った場合とそうでない場合との、それぞれのメリット・デメリットやリスクの大きさなどを「心の天秤」にかけ、リスクテイキング行動となる追い越しを実行するか考えながら運転している状態と言えます。
リスクテイキング行動の例としては先に挙げた追い越しのほかに、信号無視、短い車間距離、割り込み、カーブや交差点でのスピードの出しすぎなどが挙げられます。
運転中のリスクテイキング行動といえる例
もし、周囲に車がいるのにそれを見落とすなどしてリスクの大きさを見誤ると、事故発生につながる危険なリスクテイキング行動となる恐れがあります。
2.なぜ危険なリスクテイキング行動を選んでしまうのか
運転中に、「心の天秤」はなぜ危険なリスクテイキング行動を選択するほうに傾いてしまうのでしょうか。これには以下のような原因が考えられます。
【リスク(ハザード、事故の要因や対象)の見落とし】
「右左折時に信号や標識を見落とす」、「歩行者を見落とす」、「車線変更のとき右後方の死角に潜んでいるバイクに気付かない」などの状況のままリスクテイキング行動を選ぶケースです。
【自分の運転スキルを過大評価】
「少々危ないかもしれないが、自分の運転なら、まあ大丈夫だろう」などと判断するケースです。
【経験による「メリットが大きい」との思い込み】
多少危ない運転をしても、事故に遭わず到着時間短縮などメリットが感じられる経験を重ねた結果、「大丈夫だろう」と思い込みがちになるケースです。
【個人の性向による「メリットが大きい」との思い込み】
積極的にリスクを冒す運転をすることで感じられる「スリル」を、ストレス解消や眠気覚ましの手段として利用するなどのケースです。
※上記のほか、心身状態の影響による判断ミスなども考えられます
参考文献: 蓮花一己, 向井希宏 編著, 「交通心理学」, 2013, NHK出版
3.より安全な運転に向けて
例えば駐車場から出てくる車や、車の陰にいる歩行者の存在を予測しながら運転すること、つまり『かもしれない』運転の励行は安全運転の基本であり、危険なリスクテイキング行動を避けることにつながります。
これ以外にも以下のような対策が考えられます。
【自分の運転スキルを過大評価しないために】
同乗者からの意見や、ドラレコやスマホアプリ等の運転診断機能活用など、第三者からの評価は自分自身の運転スキルについて気づきを得られるきっかけになりそうです。
【慣れ、個人の性向の問題に対応するために】
個人での解決が難しい部分もあります。安全運転を「ほめる」文化や、トップから現場まで同じレベルの交通安全意識を共有する風土作りなど、組織的な取り組みをお勧めします。
以上(2024年7月)
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画像:amanaimages