おはようございます。突然ですが皆さん、俳句はお好きですか。実は最近、季節の変わり目などに、昔の俳人が読んだ俳句を探すのにハマっています。私自身は素人なので、とても多くを語れるレベルではないのですが、「五・七・五」という短い文字数で、かつその季節ならではの「季語」を織り交ぜるという、俳句独特のルールがとても好きです。なぜなら、そんな制約に縛られながら、人々の心をつかんできた昔の俳人たちの俳句に触れると、「日本語とは、こんなに美しいものなのか」と感動させられるからです。
さて、今日は皆さんに、ある秋の俳句を紹介します。
柿くへ(え)ば 鐘が鳴るなり 法隆寺
ご存じの方も多いでしょう。明治時代の俳人・正岡子規(まさおかしき)の詠んだ有名な句です。意味は、柿を食べていると、法隆寺の鐘が鳴り、その響きに秋を感じたというものです。「なんだ、そのままじゃないか」と思った人もいるかもしれませんが、そう思った人はぜひ目を閉じて、私の話を聞いてください。
柿は奈良を代表する農産物。今でも全国第2位の生産量を誇ります。多くの場合、果実は小さいときには緑色をしていますが、秋が近づくにつれ、だいだい色の大きな実へと成熟します。実をたくさんつけた柿の木、その先には、これまた奈良を象徴する建造物、法隆寺が建っています。
ご存じ世界最古の木造建築、古き日本の歴史を伺い知れる、金堂や五重塔が印象的なお寺です。だいだい色の実をたくさんつけた柿の木、その先にある落ち着いた色合いの法隆寺、そしてその法隆寺から聞こえてくる鐘の音色、皆さんの頭にも、秋の情景が浮かんでくるのではないでしょうか。
五・七・五に記されたわずかな情報から、その句が詠まれたときの情景を「想像してみること」、これが俳句の1つの楽しみ方です。ちなみに、正岡子規が「柿」を俳句に使ったのには、「日本の歴史上、漢詩にも和歌にも『奈良』と『柿』を組み合わせた作品がなく、自分でこの組み合わせを見つけられたのがうれしかったから」という理由もあるそうです。本人の思いも踏まえて、改めてこの句に触れてみると、また違ったものが見えてくるかもしれません。これも1つの楽しみ方です。
さて、私が皆さんに俳句についてお話しした理由は、日ごろのビジネスでも「想像力を働かせる」ということを、もっと意識してほしいからです。今は、SNSなどでちょっとした発言が炎上したり、ハラスメントとしてトラブルに発展したりする時代です。もちろん、許されない発言はありますし、それらには毅然と対応しなければなりません。ただ、一方で言葉尻だけを捕まえて大騒ぎするのが健全なのかというと、それもまた違うと私は思うのです。話し手の言葉に注意深く耳を傾け、言葉の裏にあるものを想像してみる。こうしたスキルもビジネスパーソンには必要です。
以上(2024年9月作成)
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画像:Mariko Mitsuda