書いてあること

  • 主な読者:税務調査を控えている、または税務調査を受けたことがない会社の経営者
  • 課題:税務署の調査官が、どのような情報を得ているのかを知りたい
  • 解決策:税務調査の調査方法は、実際に会社に訪問して調査する実地調査以外に、調査前後で、机上調査、内観・外観調査、反面調査、金融機関調査があるので、それぞれの特徴を押さえることで、調査官がどのような情報を得ているのかを想像する

1 【ご提案】税務調査の流れを理解し、備えよう

税務調査は、税務署の調査官が実際に会社に来て調べるだけではなく、

取引先や金融機関への問い合わせなど様々な方法

で行われます。これは、帳簿や書類だけではなく、様々な視点から取引の実態や会社の税務管理体制を把握するためです。

日々の記帳や経費の処理、売上の計上など正確に行っていても、「何かあるかもしれない」と不安を覚えるのが税務調査です。自分の会社に税務調査が入るとなった場合、税務署はどのような情報を持っているのか。税務調査時に適切な対応を取るためにも、税務調査の調査方法を押さえておくことをご提案いたします。以降では、次の5つの税務調査について紹介していきます。

  • 机上調査
  • 内観・外観調査
  • 実地調査
  • 反面調査
  • 金融機関調査

2 税務署内で確認する「机上調査」

机上調査とは、

会社が提出した申告書や帳簿資料を税務署内で確認する

調査方法です。調査官が現場に訪問する前段階の調査として行われ、書類の整合性や不備をチェックすることが主な目的です。

この机上調査を通じて、申告内容に矛盾や不自然な点がないかを確認します。もし疑問点が見つかった場合、軽微なものに関しては、この段階で税務署からの問い合わせや追加資料の提出依頼の連絡がくることもあります。問い合わせなどだけでは、足りないような不明点がある場合には、後述する実地調査へと進展します。

3 店舗などの営業状況や外観を調べる「内観・外観調査」

内観調査とは、

税務署の調査官が店舗などを直接訪れ、実際の客として通常の運営状況を観察する

調査方法です。この調査も、一般的に調査官が現場に訪問する前段階の調査として行われ、例えば、

  • 店内での顧客数や客単価はいくらか
  • 注文の処理方法やレジ打ちが適切に行われているか

などを観察し、申告内容との整合性を確認します。主に、現金取引の多い飲食店などに対して行われることが多いといわれます。

外観調査とは、

オフィスや店舗などの外観を観察し、立地や事業規模、客の入り具合などを確認する

調査方法です。この調査は、事前に行われる場合もあれば、現地に訪問して実地調査をする際に行われる場合もあり、例えば、

  • 店舗の外から観察した客の出入りと、申告された売上高が釣り合っているか
  • 会社の工場や倉庫の規模と、申告された売上高や在庫の規模と釣り合っているか

など、申告内容との整合性を確認します。また、社長の自宅の外観を観察して、申告された役員報酬の金額に違和感はないか(かなり豪華な自宅や複数の高級車所有にもかかわらず、役員報酬が極端に低いなど)を、確認するためにも行われることがあります。

また、近年では、ネット上の情報チェックも重要視されており、企業のホームページやソーシャルメディアの投稿を確認することも行われています。

4 対象会社のオフィスなどで行われる「実地調査」

実地調査とは、

税務署の調査官が対象会社のオフィスや工場、倉庫などを直接訪問し、帳簿や証憑(しょうひょう)書類(契約書や請求書など)や実物を見ながら、取引の実態を確認する

調査方法です。これは税務調査の中でも最も一般的な調査方法で、通常は事前に通知されます。顧問税理士がいる場合には、税理士に連絡があります。

基本的に、

  • 会社の財務担当者や経営者に対して質問
  • 申告書には添付されていない書類で確認が必要な書類の請求
  • オフィスの状況(出社人数や会社、工場などの固定資産の状況など)の確認
  • 調査結果の報告

などが行われます。

実地調査は数日から1週間程度かかることが多く、机上調査などで矛盾や不自然な点のあった箇所を重点的に調べたり、ミスの多い一般的な論点(会議費・福利厚生費・交際費の混同や役員報酬、減価償却費など)をまんべんなく調べたりと、調査ごとに異なります。

5 取引先などに出向いて調べる「反面調査」

反面調査とは、

調査対象である会社ではなく、取引先など関係先への文書や電話での問い合わせや、場合によっては直接出向いて契約書、請求書、受注書、発注書などを確認する

調査方法です。主に実地調査後に行われ、具体的には、

  • 必要な書類をなくしたり、廃棄したりしており、データがそろっていない場合
  • 嘘偽りを疑わせる応答があった場合
  • 重要な書類の提出を拒否したり、調査に対し協力的でなかったりした場合
  • 取引先や関連会社との取引に不明点がある場合
  • 受け答えの内容に不明確な部分があり、その裏付けが必要な場合
  • 所得隠しや不正な取引(架空取引など)が疑われる場合

に、実施される可能性があります。

反面調査は、調査対象の会社と取引先の間での口裏合わせなどを防ぐため、調査対象の会社への事前連絡はなく、なかには反面調査に入る取引先へ、事前連絡なしに突然訪問することもあります。反面調査があった時点で、税務署から疑われているというマイナスの印象を持たれかねず、自社に対する信用低下にもつながります。このことからも、実地調査は誠実に対応するよう心掛けましょう。

6 金融機関に直接連絡する「金融機関調査」

金融機関調査は、

税務署の調査官が金融機関に直接問い合わせて、銀行口座や証券口座の取引内容を確認する

調査方法です。金融機関調査は、前述した反面調査の一部で、その会社が口座を通じて、

  • 異常な金銭の動きがないか、
  • 送金先と入金先はまっとうか

などを確認し、申告内容と実際の取引内容に不一致がないかを検証するために行われます。また、会社名義の口座だけでなく、役員や親族名義の個人口座も対象に行われ、申告された役員報酬との整合性や、親族への不自然な送金や入金の有無などを調べることもあります。

以上(2024年10月作成)
(監修 南青山税理士法人 税理士 窪田博行)

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画像:Ashan-Adobe Stock

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