書いてあること

  • 主な読者:会社経営者・役員、管理職、一般社員の皆さん
  • 課題:コミュニケーションに関わる知識やノウハウは、頭では理解できても、実際の場面で使いこなせるようになるまでには高いハードルがあるものです。
  • 解決策:前回シリーズ『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』での知識やノウハウを聞いただけではまだ一歩を踏み出せない、あるいはトライしてみたがうまくいかないという方のために、新シリーズでは【実践編】として社内の“あるある”場面を想定した質問に対して一緒に考えながら、実践イメージを膨らませていただきます。またリーダー側の視点とは別に、若手社員側の視点による上司世代との上手な付き合い方のヒントも紹介していきます。リーダー世代と若手社員とのコミュニケーションギャップを埋めることは、世界を舞台にスピーディな成長をめざす日本企業にとっても喫緊の課題だからです。

1 部下のDさんがしょっちゅう会議に欠席・遅刻します、どう声をかけますか?

今シリーズは、前シリーズ『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』の実践編です。

知識やノウハウは分かったけれど、「現場で実践するにはまだハードルが高い」「うまく一歩を踏み出せない」という方のために、毎回実際にありそうなさまざまなシチュエーションを想定して、どんなコミュニケーションを取るのが望ましいかを一緒に考えていきます。

第4回の事例解説はいかがだったでしょうか。今回は課題[事例4]です。以下に再掲しますので、考えた解答を思い出してみてください。まだ考えていなかったという方もぜひ考えてみてください。繰り返しますが、解説だけを読んでいても実行や応用はままなりませんよ。

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Q.部下のDさんに対して、あなたはこの後、最初にどんな声をかけますか? また、それを考える際に注意するべきポイントを3つほど挙げてください。書かれているさまざまな要素を考慮してみましょう。

[事例4]

〇あなたの課(部)では、メンバーも入れ替わった今期から新たに毎週月曜夕方に定例ミーティングを設けており、メンバーは基本的に参加が必須となっています。しかし最近、Dさんの欠席率が高いように感じています。

〇始めた当初は全員が開始時間の少し前にはそろっていたのですが、1カ月くらいたった頃から、欠席や大幅な遅刻をするメンバーが毎回のように1人や2人いることも、上司であるあなたは気になっています。

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テーマは「会議」です。これまでの事例と同様に起こっている事象を整理することから始め、現場で起こっていることの可能性を整理してみましょう。

2 会議の成功に必要な事項を整理し、現状を点検してみる

いつものように事例を読み返して、起こっている事象の整理から始めてみましょう。現状は、会議そのものが理想的に機能しておらず、結果として遅刻や欠席が増えているのかもしれません。その場合、どんな原因が考えられるでしょう。

会議の成功には、「A.目的・意義が明確で共有されていること」と「B.A.の目的・意義が達成できるように適切に運営がされていること」が必要でしょう。「A.目的・意義の共有」と「B.適切な運営」です。その上で「C.参加者側の問題」もあるでしょう。

特にB.にはさまざまな事項が含まれていそうです。詳しく見ていきましょう。開催要項(頻度・曜日・開始時間・開催場所・所要時間・参加者など)、議題の事前提示や資料の提示、集合ルール、遅刻・欠席の連絡や違反者への対応ルール、当日の議事進行、終わり方(決定事項と継続事項の整理)、次回の告知など。実に幅広い事項が考えられます。

さらに細かく言えば、例えば上記開催要項の「参加者」だけを取っても、必須参加者とオブザーバーの選定・指名、欠席の場合の代理の立て方や、座席表などが含まれます。遅刻・欠席違反者への対応なども、甘すぎても厳しすぎても機能しません。結果としてさらに遅刻・欠席が増える、また参加意欲が低下する要因になります。

同じように「頻度・曜日・開始時間・所要時間」なども、適切でないと遅刻や欠席が増える原因になり得るでしょう。参加者は「こう変えたほうがいいかも」と思っていても、一旦決まった以上はなかなか口に出しません。まして遅刻・欠席した当人は意見があっても提案しづらいでしょう。

余談ですが座席について、私はできるだけ毎回ランダムに替えることを提案しています。視点を変えて新しい発想を生む、座り位置による発言力の違いや権力関係を固定化しないなどの意図があります。議事録担当も、特に記録係がいない場合は年次などに関係なく全員交替制が望ましいと思います。全員の参加意識も高まりますし、若手の発言機会も増えます。

こうして会議の成功要因を見ていくと、実に多くの事項が関係していることが分かります。会議への遅刻・欠席が発生した場合、直ちにそれを「C.参加者側の問題」とすることは実に短絡的であると言えるでしょう。

会議自体の原因を横に置いて、Dさんを呼び出して詰問したところで事態はもっと悪くなるばかりです。あなたが最初に取り組むべきは、会議自体に原因がなかったかを振り返ってみることです。

3 「会議の見直し」を議題に挙げて、事前アンケートも取ってみる

とはいえ、あなたの振り返りだけでは限界もあるでしょう。

会議も回数を経てきたわけで、この辺りで一度「当会議の目的・意義と運営の確認、見直しについて」といった議題を用意してみてはどうでしょう。A.とB.の成功要因を磨き直すのです。

先ほど挙げた事項ごとに現状のままでよいか、改善するべきか、具体的にどんな改善方法があるかについての事前アンケートを実施するのもいいでしょう。

個々の事項だけでなく、全体について感じる問題点や改善案も聞きましょう。予め回収して整理し集約しておけば、当日の議論も活発になり、改善点をすぐに次の会議から反映できます。

会議参加メンバーに働きかける際には、『新たな3つのコミュニケーション習慣』を思い出してください。「傾聴」「褒める」「前向き発想」、具体的にイメージできましたか?

事前アンケートを取ること自体が「傾聴」です。案内文では皆さんの意見を聞きたいことを真摯に伝えましょう。

ここで本音を引き出せなければ、本当の改善にはつながりません。

案内文の冒頭では「褒める=感謝の言葉」を忘れずに。

当会議の目的・意義を理解して、他の業務がある中でも優先してこれまで出席してくれたこと、活発な意見や提案をしてくれたことに「褒める=感謝の言葉」を伝えましょう。

会議当日の冒頭でも必要なことです。

その上で、アンケートの案内文や会議の最後は「前向き発想」の言葉で締めくくりましょう。

会議の見直しは“私”のためではありません。

「会議の目的・意義の達成に向けて、“みんな”のための会議となるように参加者全員で力を合わせましょう!」

“みんな”のため、に反応しない人もいるでしょう。会社や部署へのエンゲージメントが十分でない会議の場合、参加率を上げるには「出れば得する、出ないと損だ」と思える場を演出できるといいでしょう。「会議がどんな場であれば、必ず参加したくなりますか」と聞いてみましょう。

例えば営業会議の場合は、「会議に参加すればもっと売れるノウハウが得られる」「その場でしか聞けない生の情報が得られる」と分かればどうでしょう。誰もが目の色を変えて参加するのではないでしょうか。

毎週の会議であれば、会議の冒頭に前週最も売った営業担当者が講師役となって、その取り組みやノウハウを紹介するコーナーを用意してもいいでしょう。ノウハウを公開してくれるのですから、講師役を担ってくれた人には、登場頻度によって別途表彰するなり評価をしてあげてください。

4 Dさんには改善に向けて意見を聞く、あるいは様子を見て直接話す

事例4の私からの質問は「Q.部下のDさんに対して、あなたはこの後、最初にどんな声をかけますか? また、それを考える際に注意するべきポイントを3つほど挙げてください」でした。

こうして見てくると、Dさん自身に「C.参加者側の問題」の可能性もあれば、それ以前に「A.目的・意義の共有」や「B.適切な運営」に問題がある可能性も見えてきます。Dさんも見直しについて貴重な意見を持っていながら、自身に欠席が多い手前言い出せないのかもしれません。

事前アンケートや見直しを議題とする会議の前にDさんに声かけしてプレッシャーをかける必要はありませんが、Dさんのアンケート回答には注目しましょう。そこに欠席の原因につながる改善提案なく、気になるようであれば、会議の前にDさんを呼んでこう声をかけてはどうでしょう。

「実はDさんの欠席が増えていて心配です。目的・意義の達成に向けて毎回全員がそろうようにしていきたいので、会議の運営などでご意見や改善点があればぜひうかがいたいのですが…」

詰問になってはいけません。会議に見直すべき点がある以上は、「Dさんは出席したかったけれど何かが邪魔したのかもしれない」という前提で質問してください。“毎回全員がそろうようにしていきたいので”という「前向き発想」の一言が大切です。

他にも欠席だけでなく遅刻が目立つ人がいれば、同じように意見を求めるといいでしょう。

その答えは、毎回遅刻なく出席して前向きに取り組んでいる人全員が聞きたいはずです。こちらの場合も詰問するのではなく、Dさんへの質問と同じスタンスで。

会議で結論を得た改善点にDさんが納得しているようであれば、あえて本人に質問をしない選択肢もあります。次回以降の会議に改善点を反映し、様子を見てみましょう。Dさんはじめ、欠席や遅刻がなくなるなら、A.やB.の会議自体が問題であったと分かります。

初めてのケースですが、この場合、事例に関してDさんにかけるべき言葉は特にありません。

会議の良し悪しの一義的な責任は主催者である上司にありますが、会議は対象となるみんなのものです。目的や意義が共有されて「やろう」となったのであれば、会議の成功に向けて努力する責任は全員にあります。

今回全員の力で見直して、良い方向に向かっているのであれば、Dさんだけに声をかける必要もないという意味です。あえてDさんに声をかけるとすれば、こんな感じでしょうか。

「会議自体に問題があって出席しづらくなっていたみたいでごめんね。Dさんの積極的な参加を期待していますよ、よろしくお願いしますね」

【今回の3つのポイント】
1 会議の成功に必要な事項を整理し、現状を点検してみる
2 「会議の見直し」を議題に挙げて、事前アンケートも取ってみる
3 Dさんには改善に向けて意見を聞く、あるいは様子を見て直接話す。会議の見直しでDさんの出席が改善されたら、今回のことでは特に声をかける必要はない。

最後に、ここまで上司の側の視点からばかりお話ししてきましたが、あなたがDさんのような参加者の側で、会議自体に問題を感じていたらどのように行動すればいいでしょう。

会議で発言しない、欠席や遅刻をするなど後ろ向きな行動で抵抗してみたところで何も改善されません。会社や部署にとっても大いなる時間の無駄ですし、あなた自身にとってもそうでしょう。中身の薄い、結論の出ない会議などさっさと終えて、自分の仕事に戻りたいものです。

会議についての自分の不満や意見、改善点などを上司や事務局に言いにくいのであれば、「聞いた話」にする方法があります。聞く耳を持ってもらうために自身は出席した上で、次のように声をかけてはどうでしょうか。

「最近、欠席者多いですよね」「〇〇が良くないよね、〇〇したらいいのになんて声を結構聞きますよ」「一度みんなの意見を聞いてみてはどうでしょう」

5 Eさんに仕事を振ったら「この仕事の意味って何ですか?」、どう声をかけますか?

次回に向けた課題[事例5]を紹介します。

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Q.部下のEさんに対して、あなたはこの後、最初にどんな声をかけますか? また、それを考える際に注意するべきポイントを3つほど挙げてください。書かれているさまざまな要素を考慮してみましょう。

[事例5]

〇上長や人事部からは「働き方改革の一環として残業はなるべくしないように」と要求される中、部署に欠員があり、その業務の穴をみんなで埋めなくてはなりません。上司であるあなたは、ベテラン社員に手分けしてもらいながら、若手のEさんにも一部を振ることにしました。まだ一人前とはいえませんが、本人にとっても成長の“チャンス”だろうと考えたのです。

〇Eさんを呼んで「欠員もあったので、この仕事を新たに担当してほしい」と伝えました。するとEさんから「この仕事の意味って何ですか? 私が担当する意味がありますか?」と返されたのです。

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テーマは「新たな仕事の依頼」です。これまでの事例と同様に起こっている事象を整理することから始め、現場で起こっていることの可能性を探ってみましょう。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。さらに事例を使ってのシミュレーションがイメージできるようになられたでしょうか。もし日常で近いシーンに出会うことがあれば、ご自身で考えて『新たな3つのコミュニケーション習慣』の実践にトライしてみてください。

次回もお楽しみに。

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以上(2024年11月作成)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
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