書いてあること

  • 主な読者:自社でポイントを付与している企業、「ポイ活」をしている個人消費者
  • 課題:そもそもポイントについて会計・税務処理が必要になるかが分からない。ポイ活で集めたポイントは確定申告が必要なの?
  • 解決策:自社が付与したポイントが使われたら「販売促進費」など、他社からもらったポイントを使ったら「雑収入」など。個人はポイントのもらい方で確定申告が必要

1 どうすればいいの? 具体的な処理・手続き

〇円以上お買い上げのお客さまにポイントを付与!

このような「ポイント制度」は、顧客を囲い込む一般的な方法として普及しています。ポイントを受け取る消費者も、「ポイ活」をして賢くショッピングを楽しんでいます。

ところで、ポイントが魅力的なのは「お金のように使えるから」に他ならないのですが、付与する側もされる側も、会計や税務の処理はいらないのでしょうか。実は、双方に求められる処理があります。まだ、適切に処理をしていない人は、この記事を参考にしてください。ポイントに関する会計・税務の処理を次のように整理しています。

  • ポイントを付与する企業の法人税:販促費で処理、引き当て計上など
  • ポイントを受け取る企業の法人税:ポイントを使った際に雑収入として計上など
  • ポイントを受け取る個人の所得税:ポイントのもらい方によっては確定申告が必要

2 ポイントを付与する企業の法人税

企業がポイントを付与した場合の会計処理は次の3つです。

  • ポイントが使用されたときに、販売促進費(または値引き)として処理
  • 付与したポイントに対して、決算時に引当金を計上
  • 収益認識基準を採用し、ポイントを付与したときに契約負債を、使用されたときに収益を計上(主に上場企業や大会社で採用)

どの方法を選ぶかによって法人税の取り扱いが変わるので、それぞれの特徴を把握しましょう。なお、上場企業などは、3.の方法で処理することが義務付けられていますが、中小企業はどの方法で処理しても大丈夫です。

1)ポイントが使用されたときに、販売促進費(または値引き)として処理

ポイントが実際に使用された時点で、その金額を販売促進費(または値引き)として処理する方法で、

  • ポイントを付与した時点では会計処理は発生しない
  • ポイントが使用されたときのみ会計処理が発生する

ことになります。

ポイントが使用されたときの仕訳は次の通りです。

この方法により会計処理した場合の法人税の取り扱いについては、

特別な留意点はなく、通常通り計上した売上と費用科目(販売促進費)を使って利益計算(収益-費用)をし、所得(法人税法上の利益)を求める

ことになります。

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2)付与したポイントに対して、決算時に引当金を計上

付与したポイントについて、将来のポイント使用分の見積額を計算し、決算時に引当金を計上する方法で、

  • ポイントを付与した時点では会計処理は発生せず、決算時に会計処理が発生
  • ポイントが使用されたときにも会計処理が発生

します。

決算時の仕訳は次の通りです。なお、一般的に、引当金の金額は過去数年間の実績からポイントが使用された割合(実績割合)を計算し、それを期末時点のポイント残高に乗じて計算します。

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この方法により会計処理した場合の法人税の取り扱いでは、決算時に計上した引当金がポイントになります。法人税を計算する上で、原則引当金の計上は認められていません。そのため、

決算時に計上したポイント引当金は、損金不算入(税務上の費用にならない)として、税務申告書上で調整が必要

になります。

ポイントが使用されたときの対応は、前述した「1)ポイントが使用されたときに、販売促進費(または値引き)として処理」する方法と同じです。

3)収益認識基準を採用し、ポイントを付与したときに契約負債を、使用されたときに収益を計上(主に上場企業や大会社で採用)

収益認識基準を採用し、ポイントを付与したときに将来のポイント使用の見込額を計算して、契約負債を計上し、使用されたときに契約負債の取り消しと、収益を計上する方法です。収益認識基準は、上場企業や大会社(資本金5億円以上もしくは負債200億円以上の会社)に強制的に適用される会計基準です。現時点で、中小企業が適用する必要はありません(任意適用)。そのため、この記事では収益認識基準の解説は省略します。

この方法では、

  • ポイントを付与した時点で会計処理が発生
  • ポイントが使用されたときにも会計処理が発生

します。

以下のケースで考えてみましょう。

  • 10万円の商品を販売
  • 自社が発行する1万円のポイントを付与
  • 実績割合は70%

一般的には、まず過去数年間の実績からポイントが使用された割合(実績割合)を計算し、それを期末時点のポイント残高に乗じて、見積額(独立販売価格という)を出します。次に、その独立販売価格を使い、取引価格を商品売上に係るものと自社ポイントに係るものに配分します。

この場合、ポイントを付与したとき、使用されたときの仕訳は、次の通りです。

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この方法により会計処理した場合の法人税の取り扱いについては、

特別な留意点はなく、法人税を計算する際の調整も不要で、通常通りの利益計算(収益-費用)をし、所得(法人税法上の利益)を求める

ことになります。なお、法人税の計算を会計上の取り扱いに一致させるには、法人税法で決められている詳細な要件を満たす必要があります。そのため、ポイント制度を導入する際は税理士などの専門家に相談し、法人税の取り扱いについて確認するようにしましょう。

3 ポイントを受け取る企業の法人税

ポイントを使用するのは個人消費者に限りません。企業も、消耗品やパソコンなどを購入する際や、出張時の宿泊料や航空券の購入時などに、ポイントを使用することがあります。

ポイントを受け取った企業の法人税の取り扱いは、

  • ポイントを受け取った時点では会計処理は発生しない
  • ポイントを使用したときのみ会計処理が発生する

ことになります。そして、ポイントを使用したときの会計処理は、

  • 雑収入または値引きとして処理
  • 現金で支払った金額で処理

の2つがあります。それぞれの仕訳は次の通りです。

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法人税を計算する際の調整はなく、通常通りの利益計算(収益-費用)をし、所得(法人税法上の利益)を求めます。

4 ポイントを受け取る個人消費者の所得税

最後に、ポイントを受け取った個人消費者の税金(所得税)の取り扱いを見ていきましょう。所得税の取り扱いのフローは次の通りです。

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1)確定申告が必要か否か

最も気になるのは、受け取ったポイントについて所得税の確定申告が必要か否かですよね。

この点は、

どのようにポイントを受け取ったか

が重要です。具体的には、次の1.〜3.のどのケースに該当するかということです。

1.買い物の際に購入金額に応じて付与されたもの

このケースに該当するポイントは、

確定申告が必要な所得には該当しない

とされています。具体的には、買い物の際に購入金額に応じて付与され、ためたポイントで、現金や電子マネーには交換できず、そのサイトや店舗内の商品を値引きする際に使用されるものなどがそうです。

2.抽選キャンペーンに当選するなどとして付与されたもの

このケースに該当するポイントは、プレゼント(贈与)としての性質から、

確定申告が必要な所得になり、「一時所得」に該当

します。具体的には、抽選キャンペーンに当選して、受け取る懸賞金などとして付与されたポイントがそうです。この場合、抽選キャンペーンで付与されたポイントが、株式などの金銭的価値のある商品の購入に充当されるケースなども含まれます。

3.アンケート回答や広告視聴などで得られるもの

このケースに該当するポイントは、特定の行為に対する対価としての性質から、

確定申告が必要な所得になり、「雑所得」に該当

します。具体的には、サイト内などのアンケートに回答したり、広告を視聴したりして得られるポイントが該当します。

2)確定申告が必要なケースとは

前述の「2.抽選キャンペーンに当選するなどして付与されたもの」「3.アンケート回答や広告視聴などで得られるもの」に該当するポイントで、次のいずれにも当てはまる場合、確定申告が必要です。

  • ポイントを現金や電子マネーなどに交換した(以下「現金化」)
  • 交換したポイントの合計額が年間20万円(一時所得の場合は原則50万円)を超えている

ポイントがサイト上でたまっているだけの場合などは、現金化されていないので、申告の対象にはなりません。

いかがでしょう。「ポイ活」上手な人は確定申告の必要があるかもしれません。例年、確定申告は2月中旬から3月中旬までに行う必要がありますので、確認は早めに!

以上(2024年12月作成)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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