1 正直ウンザリの「ハラスメント」でも対策は必須
2 どんなハラスメントについて対策が必要?
3 防止措置の一歩目「ハラスメント防止規程」はどう定める?
4 ハラスメント相談窓口の担当者は誰にすればいい?
5 ハラスメントの事実確認はどうやって進める?
6 行為者の処分はどの程度が妥当? 被害者のケアは?
7 ハラスメントの再発防止のためには何をすればいい?
8 結局のところ、上司は部下をどう指導すればいい?
9 就活生や取引先へのハラスメントについてはどう対応する?
10 顧客などからの「カスハラ」についてはどう対応する?
11 職場に貼れる、ハラスメント防止に役立つ「職場ポスター」
1 正直ウンザリの「ハラスメント」でも対策は必須
職場で発生する「ハラスメント(嫌がらせ)」。時代とともにモラハラやロジハラなど、次々と新しいものが出てきて、正直ウンザリという人もいるでしょう。
とはいえ、深刻なハラスメントで精神などを病んでしまう人が後を絶たないのも事実。また、男女雇用機会均等法などにより、会社には一定の「ハラスメント防止措置」の実施が義務付けられています。これが不十分なせいでハラスメントが発生すると、会社がその責任を問われるリスクもあります。思いは人それぞれでしょうが、いずれにせよ対策は必須です。
この【ハラスメント対策】シリーズでは、会社に義務付けられているハラスメント防止措置の内容をはじめ、ハラスメントについて押さえておくべきポイントを紹介します。
2 どんなハラスメントについて対策が必要?
冒頭でも述べた通り、近年はさまざまなハラスメントが増えてきていますが、まずは法令によってその内容が明確に定義されている
- パワハラ(職場などでの上下関係を背景にしたハラスメント)
- セクハラ(性的な言動によるハラスメント)
- マタハラ、パタハラ、ケアハラ(妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント)
について対策を講じましょう。会社はこれら5つについて、ハラスメント防止措置を講じる義務を負っているので、まずは各ハラスメントの内容を正しく理解することが肝心です。
3 防止措置の一歩目「ハラスメント防止規程」はどう定める?
ハラスメント防止措置とは、具体的には次の5つを指します。
- ハラスメントの方針(ハラスメントを行ってはならない旨など。就業規則等の文書に規定)の明確化、周知・啓発
- ハラスメントに関する相談窓口の設置・運用
- 事実確認、被害者に対する配慮のための適正な措置、行為者への適正な措置と再発防止に向けた措置の実施
- 相談者や行為者のプライバシーを保護、相談したことや事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨の周知・啓発
- 業務体制の整備など、マタハラ等の原因や背景となる要因を解消するための措置の実施
このうち、1.の「ハラスメントの方針」については、「ハラスメント防止規程」などの形で定めることが多いです。4.の「不利益な取扱いの禁止」などもこの規程に定めるとよいでしょう。
4 ハラスメント相談窓口の担当者は誰にすればいい?
ハラスメント相談窓口は、ハラスメントに関する相談や苦情を受け付け、被害を最小限に食い止めるための窓口です。
相談窓口がうまく機能していれば、深刻なハラスメント問題に至る前に事態を収めることができます。逆に、社員から「相談しにくい」と思われてしまうと、いつまでたっても会社がハラスメントの存在を感知できず、問題が深刻化してしまう恐れがあります。
- 相談窓口は、会社の内部に設置するのか、外部に設置するのか(併設も可)
- 内部に設置する場合、担当者を誰にするのか(経営者や役員、管理職、人事労務担当部門や法務部門の社員、社内の診察機関、産業医、カウンセラー、労働組合など)
などを検討しつつ、「相談しやすい」窓口にしましょう。
5 ハラスメントの事実確認はどうやって進める?
ハラスメントに関する相談が相談窓口に寄せられた場合、会社はすぐにハラスメントの事実があったか否かを確認します。これを「事実確認」といいます。具体的には、
相談者(被害者など)、第三者(目撃者など)、行為者の順番で事情聴取をする
ことになります。
経営者としては、早く白黒をつけたいので、ついつい事実確認を行う担当者をせかしがちですが、調査不足は事実誤認のもとです。後々の対応(社内処分など)を誤らないためにも、「焦らず、じっくりと事実確認を行うこと」を心がけましょう。
6 行為者の処分はどの程度が妥当? 被害者のケアは?
事実確認の結果、ハラスメントがあったことが明らかになったら、すぐに行為者の処分と被害者のケアをします。
- 行為者の処分の基本は、行為の内容と懲戒処分の重さを釣り合わせること
- 被害者のケアの基本は、被害者がつらくないよう、行為者と被害者とを引き離す
です。仮にハラスメントの事実が確認できなくても、被害者に対し、事実確認の調査や調査結果を丁寧に説明し、会社が真剣に対応したことを伝えるなど、真摯な対応が求められます。
7 ハラスメントの再発防止のためには何をすればいい?
ハラスメントが発生した場合、会社は再発防止策を講じなければなりません。具体的には
- 発生したハラスメントについて社内に情報を開示する
- ハラスメントの方針(ハラスメント防止規程など)を再周知する
- ハラスメント防止研修を実施する
などが挙げられます。
8 結局のところ、上司は部下をどう指導すればいい?
ハラスメント防止措置を講じることは会社の義務ですが、措置を講じた結果、上司がハラスメントと指摘されるのを恐れて、部下を指導できなくなってしまっては本末転倒です。
- 上司がハラスメントになりそうな言動や指導をしていたら、改めさせる
- 一方、部下の指導は上司の役目であり、そこに臆病になる必要はないと伝える
ことが大切です。
なお、ハラスメントは上司から部下に対して行われることが多いですが、パワハラなどの場合、部下から上司に対して行われる、いわゆる「逆パワハラ」が話題に上がることも多いです。逆パワハラも会社が防止すべきハラスメントの1つですので、毅然とした対応が求められます。
9 就活生や取引先へのハラスメントについてはどう対応する?
ここまで紹介したハラスメント防止措置は、主に社内のハラスメント(社員に対して行われるもの)を想定していますが、この他に社外のハラスメント(就活生や取引先の担当者に対して行われるもの)についても対策を講じる必要があります。
就活生に対するハラスメントについては、
就活生の内定辞退を回避するために行われる「オワハラ(就活終われハラスメント)」
など、特有のハラスメントもあるのでしっかり内容を押さえておく必要があります。
取引先に対するハラスメントについては、基本的な対応の流れは社内の場合と同じですが、
取引先の社員を事情聴取する場合、必ず取引先の担当部署の承諾を得なければならない
など、特有の対応のポイントがあります。また、2024年11月1日から
フリーランスに対しても、ハラスメント防止措置を講じることが義務化されている
ので、併せて押さえておきましょう。
10 顧客などからの「カスハラ」についてはどう対応する?
カスハラ(カスタマーハラスメント)とは、
顧客などが、社員に悪質な嫌がらせ(土下座の強要など)をすること
です。「お客様は神様です」などというように、日本企業は総じて顧客を上に見てその要求を受け入れる姿勢がありますが、
正当なクレームには真摯に、理不尽なカスハラには毅然と対応する
ようにしないと、社員を守れません。カスハラの類型や対応のポイントを押さえ、正しい対応が取れるように周知しましょう。
11 職場に貼れる、ハラスメント防止に役立つ「職場ポスター」
最後に、ハラスメント防止に役立つ「職場ポスター」を紹介します。印刷してそのまま職場に掲載してお使いいただける、PDF形式のコンテンツになっています。ぜひご活用ください。
以上(2024年12月作成)
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画像:あんみつ姫-Adobe Stock