1 スキマバイトで人手不足を乗り越える!
テレビCMなどもあり、「スキマバイト」はすっかり定着した感があります。改めて、
スキマバイトとは、空いた時間(スキマ時間)を活用して行う単発的な仕事
のことです。会社にとっては、人手が必要なときに必要なだけ人員を確保できることが魅力です。例えば、イベントを開催するために、「土曜日だけ」「会場の設営で3時間だけ」などのように募集できます。
一方、スキマバイトは新しい募集方法であるだけに、これまでなら想定しなくてもよかった「トラブルはないのか?」といった心配もあるでしょう。また、PRのためにスキマバイトの時給を高くすれば、一緒に働いている既存社員から反発の声が上がる可能性もあります。このような心配をクリアし、スキマバイトで人手不足を乗り越えるヒントをお伝えします。
2 スキマバイトの基本的な仕組み
1)スキマバイトのイメージ
一般的なスキームでは、スキマ時間に働きたい人(以下「ワーカー」)と、人手が欲しい会社(以下「会社」)がアプリなどでつながり、マッチングが成立すればすぐに働けるという流れになっています。
例えば、アプリに「明日の午後3時から5時まで、荷物の仕分けを手伝ってほしい」という求人を出すと、その時間に働ける人材とすぐにマッチングできます。基本的には単発の仕事ですが、ワーカーとのマッチング次第では、自社の業務と適性のある人に繰り返し仕事に来てもらったり、長期雇用に切り替えたりできる場合もあります。
2)どんな業務に活用できる?
スキマバイトというと、飲食業のデリバリーやホールスタッフをイメージする人が多いかもしれませんが、実はそれ以外にも幅広い業種で活用されています。業務の一例は次の通りです。
業界ごとに様々な業務がありますが、共通しているのは、
特別なスキルを必要としない単純作業が中心
ということです。そのため、教育に時間をかけず「必要なときだけ」人手を確保できるのです。
3 スキマバイトを活用するメリット
1)スピーディーに人材確保が可能
スキマバイトのアプリに求人を出すと、掲載から数時間以内に応募が集まることもあります。また、基本的に書類審査や面接などの手続きはないので、採用にかかる時間がかなり短縮できます。「問題のある人が応募してきたらどうしよう……」と不安になりますが、仲介業者によっては、ワーカーの過去の評価や実績がアプリに蓄積され、会社がどんな人材かを事前にチェックできるようになっています。
2)柔軟なシフト管理が実現
必要な日や時間帯に絞って人材を確保できるので、柔軟なシフト管理が可能です。通常のバイトを雇うほどの業務量ではないから、「今の人員では厳しいが頑張るしかない」というケースがあると思いますが、このような場合、スポットでスキマバイトを募集すれば、無理なく業務を回すことができます。
3)コスト削減効果
通常の求人広告よりも低価格で求人を掲載できるケースが多く、社会保険や福利厚生といった長期雇用に伴うコストも削減できます。
4 スキマバイトを採用する際の流れ
1)求人を掲載募集
要項(日時、報酬、仕事内容など)を作り、スキマバイトのアプリに掲載します。アプリのアカウントを作成する際、審査で数日かかることがあります。求人の掲載は基本的に無料で、実際にワーカーが働いた場合に費用が発生します。
2)ワーカーとのマッチング
求人掲載後、条件に合うワーカーとのマッチングが行われます。会社はマッチングしたワーカーのプロフィールや評価を確認した上で、受け入れるかどうかを判断します。
3)労働条件を明示する
採用が確定したら、必要な持ち物や注意点を連絡し、現場での受け入れ準備を行います。ここで忘れてはいけないのが「労働条件の明示」です。時折「スキマバイトだから明示しなくていい」と勘違いしている会社がありますが、ワーカーは、
労働基準法の「日々雇用される者」に該当するため、労働条件の明示は必須
です。具体的には次の労働条件を明示する義務があります。
なお、「必ず書面で明示する事項」は、ワーカーの希望があれば電子メールやチャットでも送信できます。
5 スキマバイトとのトラブルを未然防止
1)既存社員からのクレーム
スキマバイトの時給が既存社員より高くなると、「なぜ簡単な作業しかしていないのに、私たちより給料が高いのか」と、クレームが出てくるかもしれません。次のようなポイントを押さえて既存社員に丁寧に説明し、理解を得る必要があります。また、スキマバイトを雇い入れた後も、既存社員との関係性には配慮しましょう。
- 必要な時だけの短時間勤務であること
- 社会保険料等の負担がないこと
- 急な依頼に対応してもらうため
2)労働条件をめぐる擦れ違い
前述した通り、スキマバイトにも雇入時の労働条件を明示します。「簡単な作業だから」と、時給・勤務時間・休憩時間などの労働条件を曖昧にしているとトラブルになる恐れがあります。
例えば、労働時間管理の場合、着替えの時間や作業前の説明時間が、「労働時間に含まれるのかどうか」を明確にしておきましょう。スキマバイトのワーカーはスキマ時間で働く分、労働時間についてはシビアです。
3)「過大な要求」によるパワハラ
スキマバイトの業務は、特別なスキルを必要としない単純作業が中心です。裏を返すと、急に難しい作業を押し付けたり、経験者並みの作業スピードを求めたりすると、トラブルになる恐れがあります。
パワハラ(パワーハラスメント)の類型の中には、
過大な要求(業務上明らかに不要・遂行不可能なことの強制、仕事の妨害等)
というものがあり、上のような行為はこれに該当する恐れがあります。十分に留意しましょう。
以上(2025年2月作成)
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画像:ChatGPT