【ポイント】
- 指輪物語の主人公フロドは、小さく非力な種族でありながら、勇気を示した
- 部下の中にも、経験が少ないなりに何かにチャレンジをしようとしている人がいる
- 一見頼りなさそうでも、チャレンジする部下の言葉に耳を傾ける管理職であってほしい
今日は、管理職の皆さんに集まっていただきました。私は時折、皆さんから「部下があまり主張をせず、物足りない」という声を聞きます。確かにおとなしい若手は多いですが、一方で、部下が主張をしているのに、皆さんがそれを聞き逃しているというケースもあるかもしれません。今日はそんなテーマで、J.R.R.トールキン氏のファンタジー小説「指輪物語」の話をしたいと思います。
指輪物語は、人間、エルフ、ドワーフなど、さまざまな種族が暮らす「中つ国(なかつくに)」を舞台に、巨悪サウロンの指輪を手にした主人公フロドが、その指輪を破壊するため旅をする物語です。この話には武器や魔法の使い手が多く登場しますが、フロドはホビットという平和を愛する種族で、背丈も人間の子どもぐらいしかありません。しかし、そんな彼が実は誰よりも勇敢なのです。
私が好きなのが、故郷を旅立ったフロドがエルフの暮らす「裂け谷(さけだに)」にたどり着き、指輪の今後を話し合う会議に出席するシーンです。会議にはさまざまな種族が集まり、指輪を「滅びの山」と呼ばれる火山の中に投げ込めば、サウロンを滅ぼせることが明らかになります。しかし、滅びの山はサウロンの軍の本拠地にあり、誰がそこに指輪を持っていくかという話になると、皆が黙ってしまいます。それでも、誰かがやらなければならない。そこで、フロドはこう言うのです。
「わたしが指輪を持って行きます。でも、わたしは道を知りませんが……」(*)
小さく非力なホビットの、自信なさげで頼りない言葉です。しかし、これを聞いたさまざまな種族がフロドの勇気に感銘を受け、彼を含む9人により、指輪を運ぶ「旅の仲間」が結成されるのです。
管理職の皆さん、経験豊富な皆さんからすると、部下の言葉は自信なさげで頼りないものに聞こえるかもしれません。ですが、そんなときこそ、部下の話を聞くようにしてください。もしかしたら、彼らは経験が少ないなりに勇気を出して、何かにチャレンジしようとしているのかもしれません。部下から聞こえてくる「小さな勇気の声」に、注意深く耳を傾けてください。
【参考文献】(*)「新版 指輪物語〈2〉/旅の仲間〈下〉」(J.R.R.トールキン(著)、瀬田貞二(翻訳)、田中明子(翻訳)、評論社、1992年5月)
以上(2025年3月作成)
pj17211
画像:Mariko Mitsuda