1 OOH広告を使って「とがったアプローチ」を!
2 広告を通じて手渡す「想いを込めたお守り」
3 ポスター~ビジュアルと文言でシンプルに勝負
4 ピールオフ~「自分で手に取る」体験を提供
5 サイネージ~より的確なターゲティングが可能
1 OOH広告を使って「とがったアプローチ」を!
売り上げにつながるような「広告」の出し方って何でしょう? 分かりやすいのは、電車内のスクリーンに流れる動画や渋谷スクランブル交差点の3D広告のように、
掲示する場所や機会を多くして、広告に触れる人の母数を増やすこと(大量のリーチ)
ですが、これには大掛かりで費用も手間もかかるという問題があります。
なるべく費用や手間をかけたくない場合、
掲示数が少なくても、広告に触れた人に強烈な印象を残すこと(とがったアプローチ)
が必要になりますが、これはこれで「そんな簡単に印象に残るなら、誰も苦労しない」という話になります。ただ、取り組むハードルが低い分、アイデア次第で可能性は無限に広がるので、他社の事例などを見ながら勉強するだけでも、御社の広告は‟前進”していきます。
そこで、この記事では「OOH(Out Of Home)広告」、つまり屋外広告にスポットを当てて、
ユーモアのあるOOH広告を使った、とがったアプローチ
のポイントを紹介します。まずは、実際にOOH広告を出している会社へのヒアリング内容を紹介するので、ぜひご覧ください。
(注)この記事では、実際に屋外にある広告以外に、スマートフォンやPC、テレビなどを通さず、掲示してある場所を通りかかった人の目に入る広告も、OOH広告として扱います。
2 広告を通じて手渡す「想いを込めたお守り」
ここでは、生活者起点のマーケティング支援会社であるネオマーケティング(東京都渋谷区)が2023年に行った、乳酸菌タブレット「おなかはかせ(現在は販売終了)」のOOH広告を紹介します。この広告は、
若い世代に、乳酸菌タブレットを効果的にアピールすること(認知度アップ)
を目的に実施され、2023年1月27日から7日間、小田急線新宿駅構内に貼り出されました。
「本番で集中したい受験生をおなかはかせは応援します。」という文言と共に、ポスターに貼り付けられていたのは、実物のお守り。それも、プロジェクトメンバーが実際に神社へ持って参詣し、ゲン担ぎをしたものだといいます。
本広告では7日間で約500個のお守りを配布し、大盛況になったそうです。成功のポイントは
「受験生」を明確なターゲットにして、期間(受験シーズン)や場所(通勤・通学の人が多い駅)を選定し、エモーショナルで想いが込められたアプローチを行った点
です。
どのような思いで広告を作ったのか、どのような点を工夫したのかなどを、「おなかはかせ」事業責任者であるネオマーケティングの加藤 賢大(かとう たかひろ)氏に聞きました。
「(広告制作時は)ただひたすら、悩みを持つ受験生を応援したい、という気持ちでした。人通りの多い駅構内でのピールオフタイプ広告であれば、目に入った受験生や保護者の方にお守りを持って帰ってもらえるかもしれないと思い、この形を選びました」(加藤氏)
「ピールオフ」とはそもそも、「剥がす」という意味。ピールオフタイプ広告は、ポスターにグッズを貼り付け、それを見た人が剥がして持って帰ることのできる広告のことです。思いが詰まったお守りを手渡す手段としては最適でしょう。
また広告のデザインについても、次のように語ります。
「お守りを貼り付けるポスター本体のデザインにもこだわりました。お守りがメインなので背景は主張しすぎず、けれど、“お守りで受験生を応援したい!”というメッセージはきちんと伝わるよう、絵馬風の木目のデザインなども盛り込んだものを自社で制作しました」(加藤氏)
実際に貼られた広告を見てみると、
- 明確なメッセージ
- コンセプトに合ったデザイン
- ピールオフすることで文字が見える仕組み
といった具合に、随所からこの広告にかける想いが感じられます。
また、期間中は思いも寄らない苦労もあったそうです。
「予想以上に、お守りがすぐにさばけてしまうことが判明したんです。半日に一度はお守りを補充しに新宿駅に行ったりして、期間中はなかなか大変でした……。けれど、メンバーが願掛けしたお守りは全て、配り終えることができました。結果的に認知度アップにもつながり、とても充実したプロジェクトになりました」(加藤氏)
努力のかいあって、広告の開始前と比べてSNSのインプレッション数は1.76倍、サイトのユニークセッション・ユニークユーザー数は2.7倍まで上昇したそうです。
また、「おなかはかせ」のプロジェクトでは、広告が貼り出されるまで毎日(30日間)、プロジェクトメンバーがお守りを手に健康祈願を行う様子を、XとInstagramのアカウントに投稿。SNSでの宣伝を組み合わせることで、若い世代に効果的なアプローチを行いました。
実際、ピールオフタイプ広告の写真を撮って、SNSにアップロードする方もいらっしゃったそうです。プロジェクトメンバーの「受験生を応援したい!」という情熱が、ピールオフタイプ広告によってターゲットにきちんと伝わったのでしょう。
ネオマーケティングの事例から、OOH広告は、
利用者(特に広告のターゲット)が多く行き交う場所を確保する
というポイントを押さえることが重要だということがわかります。また、
対象物(貼り付けるもの)がなくなり次第、補充する時間と人員が必要
という手間もかかりますが、従来より幅広いターゲットにとがったアプローチを与え、自社製品や自社サービスの認知度を高めることが可能といえます。
以上、実際にユーモアのあるOOH広告を出しているネオマーケティングの事例でした。以降では、この章のピールオフタイプ広告も含め、OOH広告の種類を次の3タイプに分けて紹介します。
3 ポスター~ビジュアルと文言でシンプルに勝負
ポスタータイプ広告は、街中で最もよく見かける屋外広告です。大まかな概要は、下の図表の通りになります。
設置場所は駅、バス停、道路脇など多岐にわたり、用意するものはビジュアル、文言、印刷物。
最も手数が少なく、うまくいけば、かなりの手間対効果を得られる
ことが利点です。
一見簡単そうに思えますが、シンプルなだけあり、自社商品を効率的に宣伝するためには、かなりとがったアプローチが必要です。
例えば、ただ単に商品の写真・宣伝の文言・自社のロゴをデザインしたポスターを作るのではなく、
コピーライターを雇い、ユーモアのあるキャッチコピーを考案する、デザイナーと連携してカメラマンやモデルを用意する
など、広告の前を通りかかった人の視覚と好奇心を刺激するような工夫が必要不可欠です。
4 ピールオフ~「自分で手に取る」体験を提供
ピールオフタイプ広告は、ポスタータイプ広告に試供品やステッカー、カードなどを貼り付け、通行人がそれを剥がして持ち帰ることができるタイプの、近年流行している広告です。大まかな概要は、下の図表の通りになります。
特に人通りの多い駅や学生街、または商業施設の中などで実施されることが多く、ポスタータイプ広告と比べると、貼り付けるものも必要になってくることから、費用も手間もかかります。
しかし、希求力が強く、影響力が大きいのも確かです。基本的に軽量で落下しづらいものであれば貼り付けることができますので、例えば、化粧品やマスクなどのサンプルを貼り付け、
自社商品に興味がある人が直接手に取れる
ことが大きな利点です。
また、コミックやドラマなどのピールオフタイプ広告では、通行人がステッカーやカードなどを剥がしていくことによって、ポスターの全容が見えるようになる仕組みも多用されます。毎日の通勤・通学途中にだんだんとポスターの全容が明らかになっていくことによって注目をあおり、より強い宣伝効果を得ることができます。
5 サイネージ~より的確なターゲティングが可能
サイネージタイプ広告は、ポスタータイプ広告、ピールオフタイプ広告とは違い、特定の場所に設置されたサイネージ(画面)に、「映す」という手法が取られる広告です。大まかな概要は、下の図表の通りになります。
サイネージタイプの広告は、東京駅や新宿駅などのターミナル駅をはじめ、商業施設やサービスエリア、ゴルフ場、あるいは高層マンション、ビルのエレベーター内などにも設置されています。ポスター
タイプ広告、ピールオフタイプ広告と比べて最も大きな利点は、
広告に動きをつけることが可能であること
です。また、画面がある場所であればどこでも設置できるので、
「富裕層」「ファミリー」「若者」など、自社商品を宣伝したいターゲットに合わせて、より的確な時間帯・場所に掲示することが可能
です。
以上(2025年4月作成)
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画像:ネオマーケティング