我が巨人軍は永久に不滅です
野球界の枠を超え、戦後、日本の象徴の一人として国民的な敬愛を集めたのが「ミスタープロ野球」こと長嶋茂雄氏です。華々しく活躍するスターのイメージが強いですが、実は数々の困難に立ち向かい、克服してきたのが長嶋氏です。経営者が激動の時代を生き抜き、組織を存続・発展させていく上で、長嶋氏の「不屈の精神」から学ぶべき点が数多くあります。
長嶋氏の言葉の中で、最も多くの人々の心に刻まれているのは、なんといっても1974年の現役引退セレモニーの際の「我が巨人軍は永久に不滅です」でしょう。この言葉には、読売ジャイアンツへの深い愛情、自身がその一員であったことへの誇り、そして、ファンへの感謝の念が凝縮されています。
また、ビジネスに置き換えれば、この言葉から経営者が率いる組織やブランドの「不屈の精神」を感じることもできます。個人の引退や世代交代があっても、あるいは厳しい逆境に直面しても、組織の魂は決して失われない、つまり、会社は存続していくのだというメッセージです。
長嶋氏の生涯はまさに「不屈の精神」を体現したものだといえます。長嶋氏は現役引退後、すぐに巨人軍監督に就任しますが、1年目の1975年には球団史上初の最下位という屈辱を味わいます。これは長嶋氏にとって大きな試練でした。しかし、この経験を糧にチーム再建に着手し、翌年には大型補強を行いリーグ優勝、若手には猛練習を課し、後の主力選手を育成しました。失敗を真摯に受け止め、未来を見据えた厳しい改革を断行するリーダーシップが伺えます。
また、2004年には脳梗塞で倒れ、右半身まひと言語障害という重い後遺症に悩まされました。スポーツの世界大会での監督就任も断念せざるを得ない状況でした。しかし、ここでも長嶋氏は「不屈の精神」で、壮絶なリハビリテーションに取り組みます。9年間でリハビリを休んだのはわずか2回だったと報じられています。
こうした長嶋氏の生き様は、経営者に次のような教訓を示しています。
- 困難な状況でも、組織やブランドは「不滅」であると信じ、それを内外に示すこと
- 自身の失敗や組織の低迷を恐れず、そこから学び、立ち上がる「不屈の精神」を持つこと
- 未来のために、時には厳しく、しかし情熱を持って人材育成に取り組むこと
- 予期せぬ個人的な困難に直面しても、諦めずに挑戦し続けること
2025年6月3日、長嶋氏は89年の生涯を終えられました。日本を代表する偉大な先達の死は悲しいことですが、彼が生涯を懸けて貫いた「不屈の精神」は、今なお、私たちに大きな勇気と希望を与えてくれています。
出典:「長嶋茂雄終身名誉監督が死去」(読売ジャイアンツ公式ウェブサイト、2025年6月3日)
以上(2025年6月作成)
pj17633
画像:Mariko Mitsuda