1 意外と知らない? 他の経営者の「座右の銘」
経営者が「あなたの座右の銘は何ですか?」と尋ねられるケースは、意外と多いかもしれません。有名な経営者の座右の銘、例えば
- ソフトバンク創業者・孫正義氏の「志高く」(*)
- ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長・柳井正氏の「店は客のためにあり、店員とともに栄える」(**)
などは有名ですが、企業のトップとして多忙な日々を送る中小企業の経営者が困難に直面したとき、あるいは大きな決断を下すときに、そっと背中を押してくれるのは一体どんな「言葉」なのでしょうか。この記事では、中小企業の経営者220人にアンケートを実施し、
- 座右の銘は何ですか? また、その理由は?
- 座右の曲(人生のテーマソング、つらいときに励まされる曲)は何ですか?
を聞きました。アンケートは2025年6月に、インターネットを通じて行いました。回答の中で、明らかに誤字と思われる表記などは修正しています。
【参考文献】
(*)「志高く 孫正義正伝 新版 (実業之日本社文庫)」(井上篤夫 (著)、実業之日本社・新版、2015年1月)
(**)「店は客のためにあり 店員とともに栄え 店主とともに滅びる倉本長治の商人学」(笹井清範(著)、柳井正(解説)、プレジデント社、2023年9月)
2 座右の銘ナンバーワンはあのことわざ!
1)経営者には謙虚さが大切
今回、「あなたの座右の銘は何ですか? また、その理由は?」というアンケートを行った中でいちばん多くの票を集めたのは、
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」(人は学問や徳が高まるにつれ、かえって謙虚になる)
でした! 他にも「一期一会」など、「謙虚さ」をモットーとしている人たちが数多くいました。経営者が選んだ言葉、それらを座右の銘としている理由をご紹介します。
実るほど頭を垂れる稲穂かな
「いつまでも謙虚で、人の話を聞く人でありたい」「仕事が上手くいくのは皆様のおかげだから」「人は謙虚であるべきと思うから」
一期一会
「何事にもこの考え方で、人にしても物にしても接することで、日々大切に過ごしていきたいと思っています」「人との出会いは、大切にしていくことと考えて前向きに行動する」
滅私奉公
「みんなのためならば、一時的な個人の感情で動かない」
人の為に何ができる
「必ずどんな形でも人の事を考えていると自分にも帰ってくる」
2)行動力の塊! まさに経営者!な座右の銘
企業のトップとしてチームを引っ張る経営者には、行動力が不可欠! こんな言葉を座右の銘にしている人たちもいました。
行動こそ思想の血である
「行動しないと結果は生まれないから」
考えるより先に動く
「考えている時間に動いてみて良くないなら別の方法を試してみる。考えている時間がロスになる」
求めよ、さらば与えられん
「とにかく何でも突き進んでいけば良しも悪しもとにかく結果が出る。中途半端なことでは結果がわからない」
路行かざれば至らず事為さざれば成らず
「まず実行することが大事」
人の行く裏に道あり花の山
「大勢の人が行く道とは別な道を選びたいので」
3)十人十色の座右の銘
その他の回答も、個性的なものが揃っています。
【達観する】
石の上にも三年
「長く待つことが大事」
至誠
「誠を貫けば人生の難局も乗り切れる」
人事を尽くして天命を待つ
「何事にも手を抜かずベストを尽くして、あとはくよくよしない」
在るがまま
「森羅万象肯定も否定もせず、在るがままから出発する」
【黙々と目の前の仕事をこなす】
凡事徹底
「当たり前のことをきちんとやることが大事」
凡事遂行
「いつもの仕事を淡々と遂行することで結果がついて来るから」
【日々の行いを大切に】
近き者説(よろこ)び遠き者来(きた)る
「まず自分たちが楽しくしていれば、自然に人が集まってくる」
中庸なれ
「何事もほどほどに、張り詰めすぎず、緩めすぎず」
和顔愛語
「笑顔で穏やかな気持ちで人に接することで関係性も良くなるし、自分にも返ってくると考えるので」
3 座右の銘ならぬ「座右の曲」1位はあのアーティスト!
辛いときや気合を入れたいとき、あるいは心をリセットしたいとき。お気に入りの音楽を聴くことをひとつのきっかけとしている経営者もいます。
今回「座右の曲」についてのアンケート結果を整理するなかで発見したのは、一曲として「被り」がないこと。経営者それぞれの人生に、それぞれの曲が寄り添っているようです。
その中でも多くの方が挙げられたのが、
伝説的シンガーソングライター・「ユーミン」こと松任谷由実(荒井由実)さんの楽曲
でした。
以降では、座右の曲とその理由を聞かせてくださった方のアンケート結果を中心に、詳しくご紹介します。
1)「愛は勝つ」など名曲がズラリ! つらいときに励ましてくれる曲たち
挫けそうになったときに心を支えてくれる、そんな「座右の曲」を挙げてもらいました。
松任谷由実「守ってあげたい」
「気持ちが落ち着くから」
KAN「愛は勝つ」
「心配ない、心配ないと唱えるように歌う」
本田路津子「一人の手」
「何も出来ないけど何かしなければと思うときが有るときに聴く」
天童よしみ「大ちゃんかぞえうた」
「上京して仕事が辛い時いつもこの歌に励まされていました」
lecca「スタートライン」
「『一度くらいつまずいたって、そんなのよくある話だって 二度三度もつまづいたって 続ければ終わりじゃない』という歌詞が響いた」
五木ひろし「道」
「前を向いて進む勇気をくれる歌」
松山千春「青空と大地の中で」
「この歌を聴くと自分の小ささと、でもそれでも自然の中で生きて行くんだという力をもらえます」
戸田恵子「コスモスに君と」
「淋しいように聞こえるかもしれないが、自分は一人ではないと思える」
2)クラシックに「旅人のうた」! 奮起一番のスイッチになる曲たち
自らを奮え立たせたいときや何かを始めるときに、音楽に背中を押してもらう人もいました。
ベートーベン 交響曲第5番ハ長調 作品67「運命」第3楽章アレグロ
「どんな状況でもワクワクしてくる」
谷村新司「昴-すばる-」
「聞くと力が湧いてくる」
中島みゆき「旅人のうた」
「奮い立たせられるものがある」
THE BLUE HEARTS「ながれもの」
「前向きになる」
ZARD「心を開いて」
「元気ややる気を与えてくれる」
かまやつひろし「どうにかなるさ」
「曲名の通り」
Deep Purple「Smoke on the Water」
「イントロで元気が出る」
クラシック音楽
「美しい曲を聴いていると頑張れる」
3)故郷の風景やかつての気持ちが蘇る 思い出の曲たち
今までの人生を振り返り、昔を懐かしむ……思い出の曲を挙げてくれた人たちもいました。
松任谷由実「あの日にかえりたい」
「思い出の曲だから」
竹内まりや「人生の扉」
「今迄やこれからの人生に共感する」
爆風スランプ「大きな玉ねぎの下で~はるかなる想い~」
「ペンフレンドを思い出す」
「童神」
「沖縄の子守歌。沖縄の青い海を望みながら諳んじていると嫌なことを忘れられる」
藤山一郎・奈良光枝「青い山脈」
「若い時の気持ちを持ち続ける」
村田英雄「人生劇場」
「地元の雄だから」
以上(2025年6月作成)
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画像:日本情報マート