書いてあること

  • 主な読者:留学生の雇用を検討している経営者
  • 課題:募集ルートや、雇用に当たっての留意点が分からない
  • 解決策:大学への求人情報や人材紹介会社からのあっせんが主な採用ルート。雇用時には語学力や在留資格に注意

1 初めての外国人雇用、まずは留学生から当たってみよう

「日本人でなくてもいいから、優秀な人材が欲しい」「海外進出したいから、現地の言葉が話せる外国人を雇いたい」などと言いつつ、日本との言語や文化のギャップが不安で、なかなか外国人雇用に踏み切れない……。こうした経営者は少なくないかもしれません。

そんな場合に検討したいのが「留学生の雇用」です。コンビニや飲食店での働きぶりを見ていると気付くかもしれませんが、彼らは日本に来てからある程度の期間が経過しているため、日本語や日本の文化に精通している人も多いです。つまり、

留学生を雇用すると、海外に居住している外国人を日本に呼ぶのよりも、会社に早くなじめる可能性がある

というわけです。

一方で、「どこに求人を出せばいいのか分からない」「言語の違いや在留資格などでトラブルにならないか不安」などの理由から、留学生の募集に踏み切れない人もいるでしょう。まずは、

  • 大学への求人情報など、留学生を募集するためのルートを知ること
  • 在留資格など、雇用に関するトラブル防止のポイントを押さえること

が大切です。以降で詳しく見ていきましょう。

2 留学生を募集するための5つのルート

1)大学への求人情報の提供

留学生を募集する一番シンプルな方法は、彼らが通っている大学と連絡を取ることです。具体的には、学内のキャリア支援課や留学生支援室に、求人案内を出します。まずは会社のことをよく知ってもらいたいということであれば、インターンシップの募集や学内説明会への参加から始めてみるのもよいでしょう。

ちなみに、日本学生支援機構が運営する日本留学情報サイト「Study in Japan」では、留学生の受け入れ・就職支援に力を入れている大学の情報、求人案内やインターンシップの受け付け状況が分かります。

■日本学生支援機構「Study in Japan」■
https://www.studyinjapan.go.jp/ja/

2)留学生を対象とした合同会社説明会や交流イベントへの参加

人材紹介会社や地方自治体、地元の商工会議所などが主催する合同会社説明会や交流イベントに参加すると、一度に多くの留学生と接点をつくることができます。会社が求める人材像やスキルなど具体的な話もしやすいです。

例えば、東京外国人材採用ナビセンターでは、都内の中小企業と外国人のマッチングなどを目的とした合同会社説明会を開催しており、2022年度は年間実績で留学生などが1231人参加しています。

■東京外国人材採用ナビセンター■
https://tir-navicenter.metro.tokyo.lg.jp/

3)人材紹介会社からのあっせん

1.大手人材紹介会社

リクルートキャリア、パソナ、ネオキャリアなどの大手人材紹介会社では、留学生を紹介するエージェントサービスを提供しています。

人材紹介会社ごとに詳細は異なりますが、多数の登録者の中から人材紹介会社がスクリーニングを行い、顧客である会社のニーズに適した人材を紹介するというサービスが一般的です。

また、リクナビやマイナビといった日本人の就活生が利用する就活サイトでも、留学生のための特集ページや留学生を採用する会社の検索機能を設ける取り組みをしています。

■ネオキャリアグループ「外国人留学生紹介サービス」■
https://www.neo-career.co.jp/service/ryuugakusei-syoukai
■マイナビグローバルエージェント■
https://ag.global.mynavi.jp/

2.特定の国や業種に強い人材紹介

会社海外進出する地域が決まっていたり、自社の業種が特殊だったりする場合は、特定の国や分野の留学生の紹介に強みを持つ人材紹介会社を頼るのも一策です。

例えば、ASIA Link(アジアリンク)は、東アジア、ASEAN諸国の留学生の紹介を強みとしています。同社では、経営者と留学生の合同会社面談会だけでなく、会社の採用ニーズに合わせて留学生を1人ずつピンポイントで紹介する個別紹介サービスも手掛けています。

他にも、Funtoco(ファントコ)では、介護・宿泊・外食といったサービス業での外国人人材の紹介に強みがあります。

■ASIA Link(アジアリンク)■
https://www.asialink.jp/
■Funtoco(ファントコ)■
https://funtoco-inc.com/

4)公的機関からのあっせん

厚生労働省管轄の外国人雇用サービスセンターでは、留学生の就職支援、会社向けの情報提供、留学生との面接会、インターンシップなどを行っています。いわば「外国人専門のハローワーク」で、東京、名古屋、大阪、福岡にそれぞれ設置されています。

また、厚生労働省が運営する「外国人雇用管理アドバイザー制度」では、ハローワークを窓口として、外国人の採用や労働条件に関する課題、生活上の悩みなど、外国人雇用に関する幅広い事項について無料で相談を受け付けています。

■厚生労働省「外国人雇用サービスセンター」一覧■
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_12638.html
■厚生労働省「外国人雇用管理アドバイザー制度」■
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/anteikyoku/koyoukanri/index.htm

5)SNS・アプリを使ったダイレクトリクルーティング

会社がFacebookやLinkedInなどのSNSに自社アカウントで求人情報を投稿すれば、大学や人材紹介会社を介さずに、留学生と直接やり取りができます。いわゆる「ダイレクトリクルーティング」です。求人情報以外にも、実際に社員が働いている様子や社内で開催しているイベントの様子などを投稿すれば、会社の雰囲気をよりリアルに留学生に伝えられるでしょう。

「WORK JAPAN」や「ギフコネ」など、外国人専用の職業仲介アプリを使う方法もあります。アプリであれば、求人票の掲載から面接調整、結果通知がオンラインで完結するので、スピーディーに採用活動を進められます。

3 言語の違いや在留資格などに注意する

1)言語の違いに配慮した募集・選考

留学生が日本での生活に慣れているとはいえ、日本語能力のレベルは人によってまちまちです。「当然、日本語は分かるだろう」という先入観にとらわれると、募集の際、留学生との意思疎通がうまくいかず、トラブルになりかねません。ですから、日本語能力にハンディを抱える留学生にも自社の情報が伝わるよう、募集方法を工夫しましょう。

例えば、採用サイトで情報発信をする場合、日本語版の採用ページにひらがなをつける、英語版の採用情報ページを設けるなどの工夫をします。また、すでに外国人を雇用している会社であれば、採用面接の際にその社員に同席してもらうなどの配慮もあるとよいでしょう。

なお、募集・選考に先立って、留学生にどの程度の日本語能力を期待するかの方針を決めておきましょう。日本語が堪能なのに越したことはないですが、例えば、

  • コンサルティング業務などは、日本人の顧客と接する機会が多い場合、高い日本語能力が求められる
  • 研究開発職などは、英語や技術用語を使うことが多い場合、日常のコミュニケーションが図れる程度の日本語能力があればよい

など、入社後の業務内容によって必要とされるレベルは異なります。

また、雇用の際に交付する「労働条件通知書」にも注意しましょう。会社と留学生との間で、労働条件について認識のギャップがあると、後々トラブルになる恐れがあります。厚生労働省では、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語など13カ国語に対応した「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」を公表しているので、留学生の出身国に合わせて活用するとよいでしょう。

■厚生労働省「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」(下記URL中段)■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000056460.html

2)在留資格の確認

1.業務内容に応じた在留資格への変更

留学生を卒業後に正社員として雇用する場合、在留資格を「留学」から、業務内容に応じたものに変更しないと、日本で働かせることができません。在留資格と対応する職業は、例えば次のようなものが挙げられます。

  • 「技術・人文知識・国際業務」:機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、私会社の語学教師、マーケティング業務従事者等
  • 「介護」:介護福祉士
  • 「技能」:外国料理の調理師,スポーツ指導者、航空機の操縦者、貴金属等の加工職人等
  • 「特定技能(1号・2号)」:特定産業分野(注)で一定の技能を必要とする業務の従事者

(注)特定技能1号は14分野(介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業)、特定技能2号は2分野(建設、造船・舶用工業)です。

在留資格の変更は、外国人の住所地を管轄する地方出入国在留管理局(出入国在留管理庁の地方支分部局、以下「入管」)に申請しますが、申請してから新しい在留資格が許可されるまでは一定の期間があるので、場合によっては入社日の延期などが必要になります。なお、トラブルにならないよう、求人案内や労働条件通知書には「在留資格が許可されていること」が雇用の条件である旨を明記しておきましょう。

在留資格が許可されると、入管から在留資格と在留期間(満了日)が記載された在留カードが発行されます。在留期間が満了すると国内で働けなくなるので、会社のほうでも在留期間を把握しておき、更新の手続きが滞らないようにしましょう。

この他にも、留学生の採用・雇用については、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)をはじめとした法令上の留意点があるため、詳細については、外国人の雇用に詳しい行政書士や社会保険労務士などの専門家、入管などに確認・相談するようにしましょう。

4 留学生採用の現状

1)日本国内の留学生数の推移

日本学生支援機構「外国人留学生在籍状況調査」によると、日本国内の留学生数の推移は次の通りです。

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2022年5月1日現在の留学生数は23万1146人で、2021年の24万2444人と比べて1万1298人(前年比約4.7%)の減少となりました。また、出身国別の留学生数は、1位が中国(10万3882人)、2位がベトナム(3万7405人)、3位がネパール(2万4257人)となっています。

留学生数が減少した背景として、コロナ禍の入国制限で、新たに入国予定の留学生が入国できなかったことなどが挙げられます。ただ、入国制限は2023年4月をもって解除されましたので、今後は状況が変わるかもしれません。

2)留学生の国籍・地域別に見た採用者数の推移

出入国在留管理庁「留学生の日本企業等への就職状況について」によると、留学生の国籍・地域別に見た採用者数の推移は次の通りです。

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採用者数はアジア諸国が上位5位を占めています。特に、2020年からの3年間では、スリランカからの留学生が増加しています。

スリランカでは国内の経済事情から人々が海外に向かう動きが強まっており、特に待遇面や日本の商品・文化に対するイメージの良さなどから、日本での就業を志す人が多いようです。

3)国は留学生の就職を後押し

文部科学省では、関係省庁等と協力し、留学生の就職支援に係るプラットフォームの構築など、留学生の受け入れ環境支援を進めています。また、留学生の採用に不慣れな会社向けに、「外国人留学生の採用や入社後の活躍に向けたハンドブック」を公表しています。このハンドブックには、留学生の採用などにおける課題を整理できるチェックリストや、採用・活躍に向けた成功事例などが掲載されています。

■文部科学省「外国人留学生の採用や入社後の活躍に向けたハンドブック」■
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/mext_00001.html

参考:採用に当たって利用できる機関・相談先

1)相談

■厚生労働省「外国人雇用管理アドバイザー制度」■
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/anteikyoku/koyoukanri/

2)情報提供

■出入国在留管理庁「在留支援」■
https://www.moj.go.jp/isa/support/index.html
■厚生労働省「外国人雇用対策」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/
■文部科学省「外国人留学生の受入れについて」■
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1306886.htm

以上(2024年1月更新)

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画像:pexels

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