書いてあること

  • 主な読者:リスキリングに取り組もうとしている社員を支援したい経営者
  • 課題:学ぶ気持ちはあるが、費用負担を嫌がっている
  • 解決策:「教育訓練給付金」の利用を社員に勧める

1 費用負担を抑えてリスキリングのハードルを下げる

DX時代の学び直しとして「リスキリング」が注目されていますが、

学びたい気持ちはあるものの、物価高などで費用負担がきつい

という人もいます。社員の向上心には応えてあげたいので会社が補助するのもよいですが、加えて「教育訓練給付金」の利用を勧めてみましょう。教育訓練給付金とは、

厚生労働大臣の指定する講座(指定講座)を受講・修了した場合、その入学料や受講料の一部が国から支給されるという雇用保険給付の1つ

で、次のような講座などがあります。

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2 教育訓練給付金は3種類、対象は雇用保険の被保険者

教育訓練給付金は、社員が「一般教育訓練」「特定一般教育訓練」「専門実践教育訓練」のいずれかを指定講座を受講(通学、通信教育、eラーニング)することで支給されます。

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いずれも、社員が指定講座を運営する学校に受講を申し込み、その講座を受講・修了することで、入学料や受講料に一定率を掛けた金額が本人に支給される仕組みです。教育訓練給付金をもらうためには、社員が指定講座の受講開始日時点で

雇用保険の被保険者(短期雇用や日雇いを除く)

であって、さらに指定講座ごとに決められた被保険者期間を満たしている必要があります(過去に被保険者であった者も一定の要件を満たせば対象になりますが、ここでは割愛します)。

以降では、一般教育訓練、特定一般教育訓練、専門実践教育訓練それぞれについて、指定講座の種類や教育訓練給付金の支給要件を見ていきます。なお、直近では

  • 2024年4月1日に、特定一般教育訓練と専門実践教育訓練の受給要件の緩和
  • 2024年10月1日に、専門実践教育訓練の最大給付率の引き上げ(予定)

という法改正がありますので、併せて確認しておきましょう。

3 一般教育訓練の教育訓練給付金

1)指定講座

一般教育訓練は、最長1年(原則)の短期間の教育訓練です。指定講座は9種類あり、内容はパソコンの操作から特定の資格や免許の取得まで多岐にわたります。

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なお、指定講座のカリキュラムは学校によって異なるので、詳細はこちらの検索システムをご確認ください(特定一般教育訓練、専門実践教育訓練についても同じ)。

■厚生労働省「教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座 検索システム」■
https://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/

2)教育訓練給付金の内容

1.支給要件

1回目と2回目以降とで支給要件が異なります。

  • 1回目:受講開始日時点で被保険者期間が1年以上あること
  • 2回目以降:受講開始日時点で被保険者期間が3年以上あり、前回の教育訓練給付金受給日から当該受講開始日前までに、3年以上経過していること

2.支給額

入学料や受講料、キャリアコンサルティングの

費用の20%(上限は1回当たり10万円)が支給

されます。ただし、20%に相当する額が4000円以下の場合、教育訓練給付金は支給されません。キャリアコンサルティングとは、民間のコンサルタンティング会社などが実施する、職業選択や能力開発に関する相談サービスのことで、教育訓練給付金の対象となるのは、受講開始日前1年以内のもの(2万円まで)に限られます。

3.申請手続き

社員は受講修了日の翌日から1カ月以内に、「教育訓練給付金支給申請書(学校が配布)」と添付書類を、社員の住所地を管轄するハローワークに届け出ます。添付書類の詳細は、こちらをご確認ください。

■厚生労働省「一般教育訓練の教育訓練給付金の支給申請手続きについて」■
https://www.mhlw.go.jp/content/001066320.pdf

4 特定一般教育訓練に関する教育訓練給付金

1)指定講座

特定一般教育訓練は、最長1年の短期間の教育訓練です。指定講座は3種類あり、ITスキルなどキャリアアップ効果の高い分野の知識を習得できます。

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2)教育訓練給付金の内容

1.支給要件

1回目と2回目以降とで支給要件が異なります。

  • 1回目:受講開始日時点で被保険者期間が1年以上あること
  • 2回目以降:受講開始日時点で被保険者期間が3年以上あり、前回の教育訓練給付金受給日から当該受講開始日前までに、3年以上経過していること

2.支給額

入学料、受講料の40%(上限は1回当たり20万円)が支給されます。ただし、教育訓練経費の40%に相当する額が4000円以下の場合、教育訓練給付金は支給されません。

3.申請手続き

まず、社員は受講開始日の2週間前まで(2024年4月1日改正。改正前は「1カ月前まで」)に、「訓練前キャリアコンサルティング」を受講します。訓練前キャリアコンサルティングとは、職業能力の開発・向上に関する事項を記載した「ジョブ・カード」を作成するためのコンサルティングです。

また、社員は同じく受講開始日の2週間前までに、「教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票」とジョブ・カード、添付書類を社員の住所地を管轄するハローワークに届け出ます。

さらに、受講が修了したときは、受講修了日の翌日から1カ月以内に、「教育訓練給付金支給申請書(教育訓練実施者が配布)」と添付書類を社員の住所地を管轄するハローワークに届け出ます。添付書類の詳細は、こちらをご確認ください。

■厚生労働省「特定一般教育訓練の『教育訓練給付金』に関する支給申請手続きのご案内」■
https://www.mhlw.go.jp/content/001066319.pdf

5 専門実践教育訓練に関する教育訓練給付金

1)指定講座

専門実践教育訓練は、1年以上3年以内(原則)の中長期の教育訓練です。指定講座は7種類あり、大学院レベルの高度な知識や、特定の分野の専門的な知識を習得できます。

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2)教育訓練給付金の内容

1.支給要件

1回目と2回目以降とで支給要件が異なります。

  • 1回目:受講開始日時点で被保険者期間が2年以上あること
  • 2回目以降:受講開始日時点で被保険者期間が3年以上あり、前回の教育訓練給付金受給日から当該受講開始日前までに、3年以上経過していること

2.支給額

入学料、受講料の50%(上限は年間40万円)が支給されます。指定講座に関連する資格等を取得し、かつ修了した日の翌日から1年以内に被保険者として雇用された場合は、教育訓練経費の70%(上限は年間56万円まで)が支給されます。ただし、50%(70%)に相当する額が4000円以下の場合、教育訓練給付金は支給されません。なお、専門実践教育訓練については、

2024年10月から、給付率が「最大70%」から「最大80%」に引き上げられる予定

です。

3.申請手続き

特定一般教育訓練と同じく、まず社員は受講開始日の2週間前まで(2024年4月1日改正。改正前は「1カ月前まで」)までに、訓練前キャリアコンサルティングを受講しなければなりません。

また、社員は受講開始日の2週間前までに、「教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票」とジョブ・カード、添付書類を社員の住所地を管轄するハローワークに届け出ます。

さらに、受講開始後は、支給単位期間(受講開始日から6カ月ごと)末日の翌日から1カ月以内に、「教育訓練給付金支給申請書(教育訓練実施者が配布)」と添付書類を社員の住所地を管轄するハローワークに届け出ます。

なお、受講が修了したときは受講修了日の翌日から1カ月以内に、受講修了後、講座に係る資格等を取得して追加給付を受けるときは、雇用された日(被保険者として雇用されている場合は、資格取得等をした日)の翌日から1カ月以内に、同じ手続きを行います。添付書類の詳細は、こちらをご確認ください。

■厚生労働省「専門実践教育訓練の給付金のご案内」■
https://www.mhlw.go.jp/content/001066317.pdf

以上(2024年7月更新)
(監修 社会保険労務士法人AKJパートナーズ)

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画像:pexels

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