書いてあること

  • 主な読者:特定施設入居者生活介護サービス事業を新たに手掛けたい経営者
  • 課題:申請に当たって必要な書類や、設備基準について知りたい
  • 解決策:介護保険法や厚生労働省令「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」に基づき、手続きや必要なものを確認する

1 特定施設入居者生活介護事業における指定の申請

1)居宅サービス介護事業としての特定施設入居者生活介護

「特定施設入居者生活介護」とは、有料老人ホームやケアハウスなど厚生労働省令で定める特定施設に入居している要介護者等について、特定施設サービス計画に基づき、入浴、排せつ、食事などの介護、その他の日常生活上の世話、機能訓練および療養上の世話を行うことです。

特定施設入居者生活介護は介護保険制度における居宅サービスの1つです。居宅サービス事業者は都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)より指定を受ける必要があります(介護保険法第41条第1項、同第70条第1項および第2項、同第203条の2)。入居定員が29人以下の小規模施設は地域密着型サービスを行う施設として市町村長への申請になります(介護保険法第78条の2第1項)。

2)提出事項

特定施設入居者生活介護を行うために事業者の指定を受けようとする者(居宅サービス事業者)は、次に掲げる事項を記載した申請書または書類を、当該指定に係る事業所の所在地を管轄する都道府県知事に提出しなければなりません(介護保険法施行規則第123条)。特定施設入居者生活介護に係る居宅サービス事業者の指定に当たって必要となる提出事項は次の通りです。

  • 事業所の名称及び所在地
  • 申請者の名称及び主たる事務所の所在地並びにその代表者の氏名、生年月日、住所及び職名
  • 当該申請に係る事業の開始の予定年月日
  • 申請者の定款、寄附行為等及びその登記事項証明書又は条例等
  • 建物の構造概要及び平面図(各室の用途を明示するものとする)並びに設備の概要
  • 利用者の推定数(要介護者及び要支援者のそれぞれに係る推定数を明示するものとする)
  • 事業所の管理者の氏名、生年月日、住所及び経歴
  • 運営規程
  • 利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要
  • 当該申請に係る事業に係る従業者の勤務の体制及び勤務形態
  • 当該申請に係る事業に係る資産の状況
  • 指定居宅サービス等基準第192条の2に規定する受託居宅サービス事業者が事業を行う事業所の名称及び所在地並びに当該事業者の名称及び所在地
  • 指定居宅サービス等基準第191条第1項に規定する協力医療機関の名称及び診療科名並びに当該協力医療機関との契約の内容(同条第2項に規定する協力歯科医療機関があるときは、その名称及び当該協力歯科医療機関との契約の内容を含む)
  • 当該申請に係る事業に係る居宅介護サービス費の請求に関する事項
  • 誓約書
  • 役員の氏名、生年月日及び住所
  • 介護支援専門員(介護支援専門員として業務を行う者に限る)の氏名及びその登録番号
  • その他指定に関し必要と認める事項

事業所の所在地を含む区域における利用定員の総数が、都道府県の介護保険事業支援計画に定める合計数に達しているか、新たに指定することによってこれを超えることになる場合などには、都道府県知事は事業者の指定をしないことができます(介護保険法第70条第4項)。

2 特定施設入居者生活介護の事業基準、介護報酬

1)特定施設入居者生活介護の基本方針

特定施設入居者生活介護事業の人員、設備、運営に関する基準は、厚生労働省令「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(以下「基準」)」に規定されています。

居宅サービスに該当する特定施設入居者生活介護の事業は、特定施設サービス計画に基づき、入浴、排せつ、食事などの介護、その他の日常生活上の世話、機能訓練および療養上の世話を行うことです。これにより、入居者が要介護状態などとなった場合でも、当該指定特定施設においてその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにするものでなければなりません(基準第174条第1項)。

指定特定施設入居者生活介護事業者は、安定的かつ継続的な事業運営に努めなければなりません(基準第174条第2項)。

2)特定施設入居者生活介護の設備に関する基準

指定特定施設の介護居室、一時介護室、浴室、便所、食堂および機能訓練室は、次の基準を満たさなければなりません(基準第177条第4項)。

  • 1居室の定員は1人とする。ただし、利用者の処遇上必要と認められる場合は2人とすることができるものとする。プライバシーの保護に配慮し、介護を行える適当な広さであること。地階に設けてはならないこと。一以上の出入り口は、避難上有効な空き地、廊下または広間に直接面して設けること。
  • 一時介護室は、介護を行うために適当な広さを有すること。
  • 浴室は、身体の不自由な者が入浴するのに適したものとすること。
  • 便所は、居室のある階ごとに設置し、非常用設備を備えていること。
  • 食堂は、機能を十分に発揮し得る適当な広さを有すること。
  • 機能訓練室は、機能を十分に発揮し得る適当な広さを有すること。

指定特定施設は、利用者が車いすで円滑に移動することが可能な空間と構造を有するものでなければなりません(基準第177条第5項)。

指定特定施設の建物は、建築基準法に規定する耐火建築物または準耐火建築物でなければなりません(基準第177条第1項)。

指定特定施設は、一時介護室(一時的に利用者を移して指定特定施設入居者生活介護を行うための室)、浴室、便所、食堂および機能訓練室を有しなければなりません。ただし、他に利用者を一時的に移して介護を行うための室が確保されている場合には一時介護室を、他に機能訓練を行うために適当な広さの場所が確保できる場合には機能訓練室を設けないことができるものとします(基準第177条第3項)。

3)特定施設入居者生活介護の介護報酬

要介護者に対する「特定施設入居者生活介護」、要支援者に対する「介護予防特定施設入居者生活介護」の各サービスを提供した事業者には介護報酬が支払われます。

  • 介護予防特定施設入居者生活介護(介護予防給付)
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護(定員29人以下):市町村が指定・監督権限を持ちます。
  • 地域密着型以外の特定施設入居者生活介護(定員30人以上):都道府県が指定・監督権限を持ちます。

特定施設入居者生活介護の介護報酬(1日当たり)は次の通りです。

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2018年4月の介護報酬改定において、特定施設入居者生活介護に新設された加算としては、退院・退所時連携加算、入居継続支援加算、生活機能向上連携加算、若年性認知症入居者受入加算、口腔衛生管理体制加算などがあります。

  • 退院・退所時連携加算:30単位/日
  • ※入居から30日以内に限る
  • 入居継続支援加算:36単位/日
  • 生活機能向上連携加算:200単位/月
  • ※個別機能訓練加算を算定している場合は100単位/月
  • 若年性認知症入居者受入加算:120単位/日
  • 口腔衛生管理体制加算:30単位/月

3 有料老人ホームとケアハウスの状況

特定施設入居者生活介護の指定を受けてサービスを行っているのは、主に有料老人ホームとケアハウスです。厚生労働省「社会福祉施設等調査」によると、有料老人ホームとケアハウスの施設数、定員、在所者数の推移(各年10月1日調査)は次の通りです。

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有料老人ホームは増加し続けています。これは介護専用型ではなく外部サービスを利用する「住宅型」の有料老人ホームが増加していることなどが理由にあります。

4 介護費の推移

国民健康保険中央会によると、特定施設入居者生活介護の介護費の推移は次の通りです。

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特定施設入居者生活介護の利用は拡大を続けています。指定を受ける主な施設は有料老人ホームですが、低所得者対策などからも、ケアハウスなど有料老人ホーム以外の施設の充実の重要性も高まっています。

以上(2018年10月)

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画像:photo-ac

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