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たとえ利益が上がっていても、現金の流れが滞れば会社は倒産してしまいます。特に経営の先行きが不透明さを増す現代において、資金ショートを回避し、安定した経営を維持するための「資金繰り」は、中小企業の経営者にとって最も重要な課題の一つです。
この【資金繰り】シリーズでは、日々の運転資金の計算、会社の現金の動きを正確に把握する方法、不確実な支出(税金など)への対応など、実務に即したノウハウを紹介します。今の資金繰りの進め方に不安がある場合や、将来の資金ショートのリスクを徹底的に洗い出したい場合にぜひご活用ください。
1 自社に必要な運転資金の計算方法と余裕のある資金繰りの心得
運転資金とは、
売上の入金と費用の出金のタイミングのズレをカバーする資金
であり、日常的な資金繰りに大きな影響を与えます。
経営者が最も気になる
「自社に必要な運転資金」の目安は、「売掛金+棚卸資産-買掛金」
で計算できます。ただ、実際は、売掛金が入ってくる「入金」のタイミング、買掛金が出ていく「出金」のタイミングによって、必要な運転資金の額が変わってくるため、
資金繰りに余裕を持たせるためには、「入金は早く、支払うのは遅く」する
ことがポイントです。具体的には、運転資金の中身である、売掛金、棚卸資産、買掛金の残高を確認することが重要になります。
詳細については次のコンテンツをご確認ください。
2 不確実な時代の資金繰りを安定させるポイントとは?
経営が行き詰まる最大の原因は資金ショートであるため、
資金繰り表を作成し、適切な資金繰りを管理することでリスクを回避する
のが基本です。
資金繰り表は、おおむね3カ月先(理想的には1年先)までの
- 収入:営業収入(現金売上など)、投資収入(設備売却など)、財務収入(借入など)
- 支出:営業支出(買掛金支払など)、投資支出(設備投資など)、財務支出(支払利息など)
を月ごとに記載し、将来のお金の流れを把握して経営のかじ取りに活かすための内部資料です。
過去の実績を基に将来予測を作成するため、
実績が判明した段階で予測と実績の差異を分析し、その後の資金繰り表の作成に活かす
ことがポイントになります。
詳細については次のコンテンツをご確認ください。
3 資金ショートしない支払いと入金のベストタイミングの求め方
会社の利益は売上から費用を差し引いて計算されますが、
利益に相当する現金が売上と同時に獲得できるわけではない
ことに注意が必要です。売上債権(売掛金など)や仕入債務(買掛金など)の決済には数カ月かかることが多く、常に支出が先行し、資金不足が拡大する状態が続くと、「黒字であっても支払いができずに会社は倒産してしまう」、いわゆる「黒字倒産」に陥る恐れがあります。
営業の現場で入金や支払いのタイミングを決めるシーンがありますが、経理部から指示される時期を伝えるだけでなく、資金繰りの視点から、なぜ、○日締めの○日払いなのかであるとか、請求書を発行した後○日以内の入金をお願いしているのかを考えてみることが大切です。
仕入債務の支払期限到来前に売上債権が入金されていると資金繰りは楽になるので、自社の都合だけで考えれば、資金繰りを改善する理想的な方法は、
- 入金サイト(売上計上から入金までの期間)をできる限り短くする
- 支払サイト(仕入れから支払いまでの期間)をできる限り長くする
ということになります。
詳細については次のコンテンツをご確認ください。
4 税金の中間申告・納付を正しく理解して安定した資金繰りをしよう
税金の中間申告・納付は、年度の途中に発生しますが、これが資金繰りに直結する問題になることがあります。中間申告・納付は税金の種類ごとに、また前期の確定納付額などで納付時期や回数が異なるため、前期どおりと考えていると痛い目を見ます。
中間納付額の計算方法には、
- 前期の実績に基づく計算方法(原則として前期の法人税額の半分を納める)
- 仮決算に基づく計算方法(事業年度開始の日から6カ月間を一事業年度とみなして、決算(仮決算)を行う)
の2つがあります。例えば、前期に不動産売却があって臨時的に所得が大きく生じた場合などは、前期の実績に基づく方法ではなく、仮決算に基づく計算方法を採用し、実態に合った中間納付額を申告・納付する対策が必要になります。
ただ、こうした対策を講じるためには、中間申告・納付に関する基本を押さえておくことが前提となります。
詳細については次のコンテンツをご確認ください。
以上(2025年12月作成)
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