労働時間や賃金などについて違法が見つかると、企業は労働基準監督署から是正指導を受ける場合があり、多くの企業ではこの点について注意を払っていると思われます。しかし、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)の是正指導については、見落としがちです。本稿では、雇用環境・均等部(室)の是正指導についてポイントをお伝えします。労務管理の参考にしてください。

1 是正指導44,436件

都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)は、男女雇用機会均等法、労働施策総合推進法(パワーハラスメント関係)、パートタイム・有期雇用労働法、育児・介護休業法に関して違反を見つけると、企業に是正指導を行います。

厚生労働省のまとめによると、この4つの法律にかかわる令和6年度の是正指導は、全国で44,436件に上りました。

令和6年度の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)における雇用均等関係法令の施行状況

※厚生労働省「令和6年度の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)における雇用均等関係法令の施行状況について」より

令和6年度は、パートタイム・有期雇用労働法の是正指導が圧倒的に多く28,299件でした。このうち、労働条件の文書交付の違反が最多(6,899件)でした。企業はパートや有期雇用労働者を雇い入れる際と契約更新の際に、基本的な労働条件に加えて、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、相談窓口についても文書の交付などにより明示する義務があります。違反が改善されなければ、10万円以下の過料の対象になります。

次に多かったのは、雇用管理の改善措置の説明違反(4,612件)でした。パートや有期雇用労働者を雇う際、正社員との間で不合理な待遇差を設けないことや、基本給額は何を勘案して決めたかなどを必ず説明しましょう。

3番目は、正社員への転換に関する違反(3,821件)でした。企業は、パートや有期雇用労働者が正社員に転換できるよう、試験制度を設けるなどの対策をとらなければなりません。

2 ハラスメントも要注意

育児・介護休業法に関する是正指導は8,330件で、このうち最多は、休業等に関するハラスメント防止措置の違反(育児1,391件、介護1,341件)でした。

男女雇用機会均等法に基づく是正指導は5,087件でした。このうち1,364件が妊娠・出産等に関するハラスメント措置義務、1,302件がセクシュアルハラスメント措置義務の違反でした。

労働施策総合推進法(パワーハラスメント関係)の是正指導は2,720件で、このうち1,698件がパワハラ防止措置の違反でした。

企業には、これらのハラスメントを防ぐため、相談窓口の整備や、ハラスメント発生時の適切な対応などが義務づけられています。相談窓口がない中小企業が多いので、注意してください。

3 さいごに

これら4つの法律では、違反に対し罰則を設けているケースは少ないです。しかし、労働者の関心は高く、労使間トラブル(紛争)になりかねません。社内で解決できないと、都道府県労働局で、局長による解決援助や調停会議による調停に持ち込まれます。最悪の場合、民事訴訟に発展しますので注意してください。

※本内容は2025年12月10日時点での内容です。

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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