書いてあること
- 主な読者:会社で働く上での基本的なルールを知りたい新入社員
- 課題:就業規則を読むように言われたけれど、どこから読めばよいのか分からない
- 解決策:まずは「服務規律」を読む。違反したら罰を受けることもある
分かっちゃいたけど、会社っていろいろ細かいよな。この前も、ランチのときに取引先の名前を出したら先輩にすごく叱られたし……。そういえば、「就業規則を見ておくように!」と言われたな。いろいろなルールが載っているらしいけど、「就業規則」って名前からして難しそう。あぁ~、面倒くさい。読まないと何かマズいことでもあるのかな?
1 悪いことをしたら罰を受ける!
あまり意識していないかもしれませんが、皆さんは会社と「労働契約」を交わしています。労働契約とは、
社員が会社から与えられた仕事をする代わりに、会社が社員にお給料を支払う契約
のことです。
皆さんが労働契約に基づいて仕事をし、商品・サービスをお客様に提供します。すると、会社はお客様からその代金を受け取り、その一部をお給料として皆さんに支払います。実際はもっと複雑ですが、シンプルに示すと次のような流れです。
大切なのは、皆さんが守るべきルールがあるということです。ルールには、会社のお金を着服しない、他人に危害を加えないなど、人として当たり前のことの他に、「取引先の名前など個人情報を守る」「就業時間中は仕事に集中する」など、労働契約だからこそのルールがたくさんあります。そして、そうしたルールをまとめたものが「就業規則」であり、これに違反して悪いことをすると罰を受ける場合もあります。
これから働いていくに当たり、皆さんは何度も就業規則を確認することになるでしょう。ですから、ここで就業規則の基本について知っておくことはとても大切です。
2 「働く上でのルール」は就業規則にまとまっている
「就業規則」とは、
労働時間や賃金(お給料のこと)などの労働条件について定めた「職場のルールブック」
で、社員が10人以上の会社は、必ず定めなければなりません。就業規則は皆さんがすぐに確認できるようになっていて、会社により冊子にしていたり、データで保管していたりします。
一般的な就業規則の項目は次の通りです。
項目がたくさんありますが、これらを覚える必要はありません。何か分からないことがあったときに就業規則を確認すれば大丈夫です。例えば、「残業代はどうやって計算されるのかな?」と思ったら、「賃金」の章の割増賃金の条文をチェックするといった具合です。
ただ、今の段階から1つだけしっかりと認識しておくべき項目があります。それは「服務規律」の章です。服務規律とは、
仕事をするに当たって、皆さんが守るべき基本的な行動規範
です。とても根本的なことであると同時に、違反すると罰を受けることもあります。
3 服務規律の内容は?
実は、服務規律を就業規則に定めるか否かは会社の自由です。しかし、ほとんどの会社は服務規律を定めています。服務規律は、会社から社員に対する「わが社の社員として、こうあってほしい」というメッセージでもあり、会社が大切にしている価値観でもあります。
例えば、服務の基本原則として、
- 職務上の責任を自覚し、誠実に職務を遂行すること
- 職務能率の向上および職場秩序の維持に努めること
などの心構えが書かれていることでしょう。さらに読み進めていくと、皆さんが遵守すべき具体的なことが書かれていると思います。例えば、次のような内容です。
- 仕事以外の目的で、許可なく会社の応接室、パソコンを使ってはいけない
- 会社のお金を横領してはいけない
- 就業時間中は仕事に専念する
- 会社の名誉や信用を損なう行為(飲酒運転、痴漢など)をしてはいけない
- 仕事で知った秘密をSNSなどで流してはいけない
- ハラスメントをしてはいけない
どれも大切なことですが、特に注意したほうがよいのは情報の取り扱いです。会社の秘密や個人情報は本当に慎重に扱ってください。悪気がなくても、何らかの拍子に個人情報が漏洩すれば、会社は損害賠償を請求されることだってあります。それだけではなく、皆さんも罰を受ける恐れがあります。
4 違反したら、どうなる?
就業規則で「服務規律に違反した社員を懲戒処分の対象にする」などと定められていたら、違反をした場合は罰を受けることになります。何をしてしまったかによって処分の重さは違いますが、代表的な懲戒処分を重い順に並べると次のようになります。
- 懲戒解雇:いわゆる「クビ」。通常はその場で解雇され、退職金も出ないことが多い
- 諭旨(ゆし)解雇:退職勧告があるなど懲戒解雇より軽いが、解雇であることは同じ
- 降格:役職が引き下げられる
- 出勤停止:自宅で謹慎するなど出社できない。通常はお給料も出ない
- 減給:お給料が減らされる
- けん責:始末書を書く
- 戒告:上司などから口頭で注意される
どれも経験したくはないですよね。ですから、皆さんは就業規則をきちんと読んで、服務規律を守って仕事をしなければならないのです。
また、最後に大切なことをお伝えします。服務規律(就業規則)は会社で働く上でのルールですから、原則として皆さんのプライベートまで効力は及びません。ただし、プライベートであっても、あまりに会社の秩序を傷つけるような行為をすれば、罰を受けることになります。社会人としての自覚を持って行動することを忘れてはなりません。
以上(2024年12月更新)
pj00345
画像:Mariko Mitsuda