書いてあること
- 主な読者:入社3~5年目の中堅社員を一段バージョンアップさせたい経営者
- 課題:中堅社員の成長を促すための、経営者の思いがなかなか伝わりにくい
- 解決策:中堅社員に何を期待するのかを明確に示す。伝え方は、自らの失敗談や身近な話、ことわざ、漫画のエピソードなどを引用して、親しみやすく具体的な事例を交える
1 中堅社員の成長が会社のこれからを決める
皆さんの会社の中堅社員は頼れる存在に育っていますか? 中堅社員の成長は、会社の今後に影響します。その理由は、主に4つ挙げられます。
- 会社の戦力の底上げを図るためには、中堅社員の「伸びしろ」が重要になる
- 中堅社員は、ベテラン社員と若手・新入社員とのつなぎ役として欠かせない
- 中堅社員と年齢などが近い若手・新入社員の成長にも影響する
- これから先、今の中堅社員が会社を動かす幹部になる可能性がある
自分で仕事を回せるようになってきた中堅社員に対して、細かくあれこれ口出しするようなメッセージの伝え方は反発を招きかねません。経営者のメッセージは、テーマを絞って、
経営者が伝えたい思いや、中堅社員に期待していることを明確
にする必要があります。
また、メッセージを伝える際は、単なるお説教にならないよう、自らの失敗談、身近な話、ことわざ、漫画のエピソードなど、親しみやすく具体的な事例を交えるとよいでしょう。
この記事では、中堅社員の成長を促す経営者のメッセージの例を紹介します。
2 「自分で考え行動する」ことを伝える
会社のこれからを担う中堅社員を成長させるには、若手・新入社員の頃のように、上司に言われた業務をこなすだけの状態から変わる必要があります。経営者は中堅社員に、「会社と自身の成長のために、自分で考えて行動する」ことを伝えましょう。この思いを伝えるには、中堅社員が失敗を恐れずに行動できるように、その背中を押す内容が好ましいです。
ただし、単に「自分で考えて行動せよ」と言うだけでは、中堅社員は何をしてよいか分かりませんし、“上から目線”と感じるかもしれません。そこで、経営者自身の失敗談なども織り交ぜながら、中堅社員に勇気を与えることが大切です。
【文例:自らの失敗談を交えて「自分で考え行動する」ための背中を押すメッセージ】
若い頃、私はたくさんの失敗をしました。特に忘れられないのは、マニュアル通りの対応しかせず、お客さまに嫌な思いをさせてしまったことです。言われたことだけをやればいいと考えていた私は、お客さまをきちんと見ていなかったのです。
このときから私は、「本当にお客さまが望んでいることは何か」をしっかり考えて行動しようと決心しました。そこで、当時の上司に直談判し、月に1度はお客さまに必ず会いに行って直接話を聞くことを徹底したのです。
中堅社員の皆さんも同じです。日ごろ仕事で、「もっとこうしたほうがよいのでは」と思うことや、「こうすればよかったかもしれない」と悔やんだことがきっとあるはずです。そうしたことは声に出し、ぜひ自ら実践してみてほしいのです。
3 「周りのことを考える」ことを伝える
中堅社員は、ベテラン社員と若手・新入社員とのつなぎ役として貴重な存在です。ですから、自分や目の前のことだけでなく、周りのことも考えるようにしてもらいたいものです。
こうした場合は、「お客さまに対するのと同じような丁寧さで、次工程の担当者が仕事を進めやすいようにする」という趣旨の「次工程はお客さま」など、中堅社員にとっても身近な事例を用いるとよいでしょう。
【文例:分かりやすい身近な例から「周りのことを考える」ことを伝えるメッセージ】
後輩は、皆さんが思っている以上に、皆さんの仕事ぶりから学ぼうとしています。皆さんが「次工程はお客さま」と思って丁寧に仕事をしていれば、後輩もそれに倣うでしょう。特に離れた場所で仕事をしているリモートの場合、「次工程はお客さま」という思いで丁寧に仕事をしているか否かは、すぐに分かります。皆さんは後輩に対して、「自分と同じようにやればいい」と自信を持って言えますか?
4 「教えることが自分の学びにつながる」ことを伝える
若手・新入社員は、自分と最も年齢の近い中堅社員の後ろ姿を常に見ていますし、中堅社員を相談相手に求めるケースも多いでしょう。新入社員の離職率を下げるためにも、中堅社員の存在は重要です。中堅社員にとっても、後輩の面倒を見る経験は、部下を持つ立場になったときに必ず役立ちます。
そこで、ともすれば自分の仕事にかかりきりになりがちな中堅社員に対して、後輩の面倒を見ることの重要さを伝えましょう。押し付けがましくならず、自発的に若手・新入社員に接してもらえるように、ことわざを使うことも1つの方法です。
【文例:ことわざを使って、教えることが自分の学びにつながることを伝えるメッセージ】
皆さんは、「教えるは学ぶの半ば」という言葉を知っていますか? 教えるということは、自分が学ぶことにもなるという意味です。英語でも「teaching is learning twice」(教えることは2度学ぶこと)という言葉もありますので、世界共通の認識といってもよいでしょう。
皆さんはこの言葉を忘れずに、ぜひこれまで身に付けてきた知識やノウハウを、積極的に若手・新入社員に教えてあげてください。自分では「何となく分かっているつもり」でも、他人に教えられない程度しか理解していないのであれば、役には立ちません。自分の身に付けてきた知識やノウハウを本当に使える武器にするために、周りに教えることで学んでいってください。
5 「将来の自分の姿をイメージする」ことを伝える
今の中堅社員はこれから先、会社を動かす幹部になる人たちです。今から将来の自分の姿をイメージすることで、長期的な視点で「自分には何が足りないのか」「今、何をすべきか」を考えることができるようになります。
とはいえ、若い世代の人たちに、自分の今後の姿を想像してもらうのは難しいものです。そこで、難しい話をするときほど、親しみやすい事例を用いてみてはいかがでしょうか。人気の漫画のエピソードを引用してみるのも手です。
【文例:漫画を引用して、将来の自分の姿をイメージすることを伝えるメッセージ】
皆さんの中のほとんどの人は、人気漫画「One Piece」をご存じでしょう。主人公は、事あるごとに「海賊王に、俺はなる」と宣言します。漫画の主人公は数多くの試練を味わいますが、この主人公は自分自身が海賊王になることをイメージできているので、その試練に立ち向かうことができるのだと私は思います。
皆さんも、周囲に宣言する必要はありませんが、自分が将来、何になりたいのか、なって何をしたいのかをイメージする癖をつけてみてください。自分のイメージを持っている人といない人とでは、日々の仕事に対する取り組み方が違いますし、成長のスピードも大きく変わるものです。何より、毎日が楽しくやりがいのあるものに感じられるでしょう!
以上(2023年2月)
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画像:unsplash