書いてあること
- 主な読者:フリマアプリやインターネットオークションで所得がある人
- 課題:副業で得た所得でも納税義務があるのか分からない
- 解決策:給与以外で20万円を超える所得がある場合、基本的に所得税の確定申告が必要
1 副業収入が20万円を超える人は要注意
近年、いわゆる「フリマアプリ」やインターネットオークションによる個人間の売買、民泊、仮想通貨、カーシェアリングなどの取引が拡大しており、これらの取引によって多額の所得が生じる人もいます。副業を認める会社が増えていることも相まって、従業員の中にも初めて自分で確定申告をしなければならない人も出てくるでしょう。
1カ所の勤務先からの給与所得・退職所得(以下「給与所得等」)以外に所得のない従業員は、年末調整によって所得税は精算され、基本的には所得税の確定申告をする必要はありません。しかし、副業などによって、その年の給与所得等以外の所得の金額が20万円を超える場合、翌年の3月15日(2020年分は、2021年4月15日)までに所得税の確定申告をしなければなりません。
今まで年末調整のみで確定申告を行う必要のなかった人が、新たに給与所得等以外の所得を得た場合には、申告義務が発生したことに気付かず、確定申告書の提出が遅れたり、未提出のままとなってしまったりするケースがあります。
2 注意しておきたい取引と所得税法上の取り扱い
1)フリマアプリやインターネットオークションによる個人間の売買
フリマアプリやインターネットオークションによる個人間の売買により生じた所得は、基本的に譲渡所得に該当します。ただし、生活の用に供する家具や使用しなくなった衣服など(以下「生活用動産」)の売買により生じた所得については、所得税は課税されないものの、1単位当たりの金額が30万円を超える貴金属や美術品の売買による所得については課税されます。一方、当初から転売を目的として購入した資産の売買により生じた所得については課税されると考えられます。
2)民泊による不動産の貸し付け
不動産を民泊によって貸し出したことにより生じた所得は、原則として所得税が課税されます。個人が空き部屋などを有料で旅行者に宿泊させるいわゆる「民泊」は、一般的に、利用者の安全管理や衛生管理、また、一定程度の観光サービスの提供等を伴うものなので、単なる不動産賃貸とは異なり、その所得は、不動産所得ではなく、雑所得に該当する旨、注意喚起しています。
3)カーシェアリングによる自家用車の貸し付け
カーシェアリングアプリやウェブサイトなどを介して、自家用車を貸し出したことにより生じた所得は、基本的には雑所得に該当すると考えられます。
4)家事・育児代行や技術の提供などリソースの提供
プライベートレッスンや、家事・育児代行など、リソース(人手など)の提供によって生じた所得は、基本的には雑所得に該当すると考えられます。
5)仮想通貨の売買
ビットコインをはじめとする仮想通貨の売買や使用によって生じた所得は、原則として雑所得に該当します。ただし、仮想通貨を売却せずに保有している場合における含み益に関しては、課税されません。
3 確定申告を忘れてしまった場合
確定申告をしなければならない人が確定申告をすることを忘れてしまった場合、期限後申告という形で申告をすることができます。
期限後申告をした場合、原則として、納税額の15%相当額の無申告加算税が課されます。また、納期限の翌日から納付する日までの間において、納税額の年8.9%(納期限の翌日から2カ月を経過する日までの期間については、年2.6%)により計算される延滞税が課されます。このため、確定申告の対象とされる副業などによる所得がある場合において、確定申告期限までに確定申告をせず、期限後申告をしたときは、別途、ペナルティーが課される点に留意する必要があります。
もし、確定申告の提出を忘れていたことに気付いたときは、なるべく早く申告書を提出するようにしましょう。
4 副業時に知っておくべき給与所得以外に生じる主な所得
所得税の対象となる所得には、給与所得等以外に事業所得・不動産所得・利子所得・配当所得・雑所得・譲渡所得・一時所得・山林所得を含めて計10種類の所得があります。ここでは、副業などにより、給与所得等以外に生じる主な所得として、「譲渡所得」「不動産所得」「雑所得」の内容を紹介します。
1)譲渡所得
譲渡所得とは、資産の譲渡により生じる所得をいいます。譲渡所得に係る所得税の計算方法は、譲渡した資産の種類により異なります。
不動産・有価証券以外の資産に係る譲渡所得は、他の所得と総合して所得税を計算します(以下「総合課税」)。一方、不動産・有価証券の譲渡による譲渡所得は、他の所得と分離して所得税を計算します(分離課税)。不動産・有価証券の譲渡による譲渡所得に対する税率は、原則として15%(復興特別所得税0.315%および住民税5%を合計すると、計20.315%)です。
譲渡所得の計算方法は、次の通りです。
譲渡収入-(取得費+譲渡費用)
総合課税の場合は、上記により計算した金額から特別控除額(限度額:50万円)が控除されます。このため、総合課税の対象となる譲渡による利益が50万円以下の場合には、譲渡所得は生じないことになります。
2)不動産所得
不動産所得とは、不動産の貸し付けにより生じる所得をいいます。不動産所得は、総合課税により所得税を計算します。
不動産所得の計算方法は、次の通りです。
不動産収入-必要経費
不動産所得については、事前に、青色申告の承認申請書を提出することにより、青色申告特別控除(最高65万円)などの特典を受けることができます。
3)雑所得
雑所得とは、利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得のいずれにも該当しないその他の所得をいいます。雑所得は、総合課税により所得税を計算します。
雑所得の計算方法(公的年金等以外)は、次の通りです。
収入金額-必要経費
毎年確定申告を行う必要がある個人事業主等に比べ、給与所得者は確定申告をすることを忘れることも珍しくないと思われることから、注意が必要です。
また、年末調整の対象外である医療費控除などの適用を受けるために確定申告を行う場合には、副業などによる所得の金額が20万円以下であっても、確定申告の所得計算にその金額を含める必要があります。
以上(2021年3月)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)
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