書いてあること

  • 主な読者:軽減税率について、いま一度見直したい経営者・経理担当者
  • 課題:制度の導入から5年が経過し、詳細を忘れていることが多い
  • 解決策:飲食料品や定期購読の新聞が対象になるが、飲食料品の購入なのかサービスを受けたのか、新聞が紙か電子版かでも税率が異なる

1 忘れていませんか、消費税の軽減税率

消費税の税率は、商品の種類によって10%と8%の2種類あります。軽減税率とは、

特定の商品については税率を低くする(8%にする)

ことですが、導入から数年が経過して慣れもあるのか、8%で処理することを忘れてしまうなどのミスも散見されます。いま一度、対象商品を見直し、間違いやすいケースや注意点を確認してみましょう。

2 どんな商品が対象になるのか?

1)軽減税率の対象商品

軽減税率の対象商品は、

「飲食料品」と「新聞の定期購読料」

に大別されます。

1.飲食料品

飲食料品で軽減税率の対象になるのは、

アルコール及び外食を除く飲食料品の譲渡(購入)

の場合です。

まず、対象商品から除かれるアルコールは「酒税法に規定する酒類」です。つまり、

ビールや発泡酒、日本酒、焼酎、ワインなどは軽減税率の対象にならない

ということなので、アルコール購入時の税率は10%です。

次に外食です。飲食料品の購入も外食も似たもののように感じますが、外食はレストランなどで飲食を伴うサービスを受けていると解釈します。つまり、

飲食料品を「購入している」のではなく、レストランなどで「サービスを受けている」

ため軽減税率の対象とはならず、税率は10%となります。

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2.新聞の定期購読料

新聞の定期購読料は、次の条件を満たした場合に限り、軽減税率の対象になります。そのため、例えば週1回発行の新聞や、駅やコンビニで購入する新聞の税率は10%です。

  1. 週2回以上発行されていること
  2. 定期購読契約されているもの

2)税率を誤りやすい事例

1.飲食店で購入した商品(お土産)

取引先と会食する場合、その飲食店で販売している商品をお土産として手渡しすることもあります。この場合、飲食店での飲食の税率は10%ですが、

お土産は持ち帰りを前提に飲食物を「購入」したことになるので、税率は8%

となります。

2.ビールとノンアルコールビール

アルコールは軽減税率の対象となりません。この場合のアルコール(酒類)を正確に表現すると、

アルコール度数が1%以上のもの

となるので、いわゆるノンアルコールビールは酒類ではなく、一般的な飲食料品に分類されます。つまり税率は8%です。

3.テイクアウト、出前、ケータリングなどで振る舞われる飲食料品

社内行事で飲食店からテイクアウトや出前をしたり、ケータリングを利用したりすることがあります。

まず、テイクアウトは飲食料品の「購入」になるので、税率は8%です。また、出前は宅配を伴うものの飲食料品の購入と同じであると考え、税率は8%です。

ケータリングは、

調理や給仕といったサービスを伴うため外食と同じであると考え、税率は10%

になるので注意が必要です。

4.スポーツドリンクと栄養ドリンク

福利厚生の一環として、スポーツドリンクや栄養ドリンクを社内に常備することがあります。似たような飲み物ですが税率が違います。

まず、スポーツドリンクは清涼飲料水(=飲食料品)なので、税率は8%です。

栄養ドリンクは、

飲食料品ではなく「指定医薬部外品」として取り扱われる

ため、税率は10%です。

5.電子新聞の購読料

前述した通り、紙で発行される新聞は「1.週2回以上発行されていること」「2.定期購読契約されているもの」という条件を満たせば、軽減税率の対象となります。一方、いわゆる電子版については、これらの条件を満たしたとしても、軽減税率の対象にはなりません。

紙で発行される新聞は、新聞紙そのものの譲渡を受ける(購入する)ことになりますが、電子版は、

電子媒体の新聞を読むことができるというサービスを受けている

にすぎないと考えるからです。

3 実務で注意すべきポイント

1)会計ソフトへの入力は慎重に

多くの会計ソフトには、税込金額を自動で税抜処理してくれる機能があります。税率が1つなら問題ありませんが、税率が2つある現在は、会計ソフト上で適用する税率を正しく選択しなければなりません。

また、領収証がインボイスの要件を満たしているかどうかも併せて確認するようにしましょう。

2)請求書の記載内容も変更に

軽減税率の導入前も、請求書には「自社の社名」「相手先の氏名(社名)」「取引年月日」「取引内容」「取引金額」といった基本情報を記載していたと思います。軽減税率導入後は、これに加えて、

  • 軽減税率の対象品目である旨
  • 税率別に区分した税込対価の額
  • 税率ごとの消費税額および適用税率
  • 登録番号(インボイス登録している場合)

を記載しなければいけません。お手元の請求書を確認し、もしこれらの記載がないようならひな型を見直しましょう。

以上(2024年11月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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画像:kai-Adobe Stock

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