書いてあること

  • 主な読者:海外取引に関する消費税の取り扱いを知りたい経営者
  • 課題:輸出と輸入では、消費税の取り扱いが全く異なる
  • 解決策:輸出は消費税が課されないが、輸入は消費税が課される。また、輸出の場合は、仕入税額控除が受けられるので、会計処理を適切に行う必要がある

1 輸出と輸入では全く違う消費税の取り扱い

海外取引をする会社が知っておきたいのは、輸出と輸入とで消費税の取り扱いが全く違うということです。

  • 輸出:消費税が課されない
  • 輸入:消費税が課される

このような違いがあるのは、「消費税は日本国内の消費に対して課する」という考えがあるためです。つまり、

  • 物を海外に輸出したら、その物の消費地は「海外」になるので消費税は課されない
  • 物を日本に輸入したら、その物の消費地は「日本国内」になるので消費税が課される

ということです。

このように輸出と輸入では消費税の取り扱いが全く違うのに、その理解を誤ると、物を輸出した際に得意先に消費税を請求してしまうなどのトラブルが発生します。この記事では、輸出取引と輸入取引に対する消費税の取り扱いの概要と注意点を解説します。

2 輸出した際の消費税の取り扱い

1)輸出の考え方

物を輸出した場合は消費税が課されません。これを、

「免税取引(輸出免税)」

と呼びますが、同じように消費税が課されない取引として「非課税取引」があります。両取引は「消費税が課されない」という点で共通していますが、消費税の「納税額」を計算する際の取り扱いは全く違います。

具体的には、

  • 非課税:本来は課税対象だけど、例外的に課税しないこととしている
  • 免税:消費税は課税されているが、税率が0%(=免除)になっている

と考えるのです。つまり、「消費税が課税されない(=非課税)」のか「消費税は課税されているが、結果としてゼロになる(=免税)」のかということです。そして、このちょっとした違いが、納税額の計算方法に大きな影響を与えます。この点の詳細は後述します。

2)免税となる輸出の範囲と注意点

免税となる「輸出」の代表例は、「物の輸出」です。

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「物の輸出」は輸出免税とされる典型的な例ですが、この場合でも、

輸出許可証(税関長が証明した書類)を保存

しておかないと輸出免税として取り扱われません。税務調査では、この輸出許可証の提示を求められることがあるので注意しましょう。

また、「物の輸出」以外にも、非居住者に対して工業所有権(特許権や意匠権など)を貸し付けて貸付料を受け取ったり、「非居住者」に対するコンサルティングなどの役務提供を行って対価を受け取ったりする取引も輸出免税として取り扱われます。目に見えないサービスを海外に輸出していると考えるためです。

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この場合、輸出許可証などの保存は必要ない代わりに、次の事項が記載されている契約書その他の書類を保存しておかなければなりません。

  1. 役務の提供等をした側(つまり読者の皆さん)の氏名又は名称及び住所
  2. 取引を行った年月日
  3. 役務の提供等の内容
  4. 対価の額
  5. 相手側の氏名又は名称及び住所

なお、「非居住者」の詳細は、「外国為替及び外国貿易法(外為法)」という法律で定められています。その内容は多岐にわたりますが、主に、

取引相手先の事務所がどこにあるか

が判断の目安になるので、海外に事務所を構えている相手先に役務提供を行ったら輸出免税となります。ただし、外国法人でも、その法人の日本支店への役務提供は輸出免税にはなりません。

3)輸出免税がある場合の消費税計算の注意点は?

先ほど、非課税取引と免税取引との違いは、「消費税が課税されない(=非課税)」のか、「消費税は課税されているが、結果としてゼロになる(=免税)」のかの違いであるとお伝えしました。実はこのちょっとした違いが、消費税の納税額の計算方法に大きな影響を与えます。

具体的には、

仕入税額控除の金額が変わってくる

のです。

仕入税額控除とは、

預かった消費税(仮受消費税)から支払った消費税(仮払消費税)を差し引くこと

です。

仕入を行ったときに支払う消費税は、どんなときでも仕入税額控除が取れるわけではなく、

課税される売上に対応する仕入に掛かった消費税しか仕入税額控除は取れない

のです。そのため、

売上が非課税の場合、その仕入に掛かった消費税で仕入税額控除は取れない

ことになります。

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「免税取引」なのに、誤って「非課税取引」として処理した場合、本来は消費税が還付されるべきなのに、還付される消費税がゼロと計算されてしまいます(図表3の計算に置き換えると、仮払消費税が0円となってしまうため)。

経営者の方は消費税の細かい計算方法まで理解する必要はありませんが、同じ「消費税が課されない取引」であっても、

「免税取引」と「非課税取引」の区分を誤ると納税額(還付額)に大きな影響が出る

ということをしっかり理解しておきましょう。

3 輸入した際の取り扱い

1)輸入の考え方

海外で商品を購入しても、その時点で日本の消費税は課されません。しかし、その商品を日本国内に輸入する際は消費税が課されます。具体的には、

保税地域から商品を引き取った際に消費税が課される

ことになります。保税地域とは、

税関の輸入許可がまだ下りていない外国貨物を一時的に保管する場所

のことです。

海外で購入した商品を自由に日本国内に持ち込むことはできないため、まずは保税地域で保管されます。この商品を最終的に引き取る(日本国内に持ち込む)までの一般的な流れは次の通りです。

  1. 関税及び消費税の計算を行い、税関に対して「輸入申告」を行う
  2. 計算した関税及び消費税を納付する
  3. 税関より「輸入許可通知書」が発行される
  4. 商品を引き取る

2)輸入消費税がある場合の消費税計算の注意点は?

輸入申告を行った際に納付する消費税を、一般的に「輸入消費税」と呼びます。この輸入消費税も、日本国内で仕入をした際の仮払消費税と同様に、

仕入税額控除の対象

となります。ただし、仕入税額控除を取るには、

「輸入許可通知書」を保存しておく必要

があります。商品を引き取ったからといって書類を廃棄せずに保存しておきましょう。

なお、日本国内で仕入を行う際は、仕入価格に税率(10%)を掛ければ消費税額が計算できますが、輸入消費税の計算は少し複雑で、単に仕入価格に税率を掛けても計算はできません(具体的な計算方法は割愛)。そうしたこともあり、輸入取引について会計処理を行う際は、

一般的な仮払消費税と輸入消費税は別の勘定科目を使用する

ようにすると、消費税の申告作業時に必要な数値を集計したりするのに便利です。

以上(2024年11月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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画像:kai-Adobe Stock

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