書いてあること
- 主な読者:予算管理を自社に取り入れたい、あるいはしっかり取り組みたい経営者
- 課題:現状の経理と予算管理の位置付けの違いが分からない
- 解決策:経理は過去の情報収集であり、「やらされている会計」。一方、予算管理を含む管理会計は将来のためであり、「自分からやる会計」である。
1 予算とは何か?
「予算」とは何か? 一言で言うならば、
1年かけて達成したい数字の「目標」
です。上場企業は、中期経営計画や業績見込みを対外的に公表しなければならないので、予算管理が経理業務に組み込まれています。一方、取引先の銀行などを除けば、中小企業が中期経営計画などを外部に公表することはなく、予算管理の取り組み度合いも経営者次第です。
ですが、このシリーズでは中小企業もきちんと予算を作ることをご提案します。その理由は2つです。
- 成り行きまかせで経営を行うとリスクコントロールがしづらいから
- 従業員の目線を合わせるため
経営の先行きは常に不透明です。足元では物価高が多くの会社の経営に影響を与えています。こうした際、少しでも将来を見据え、少なくとも1年後にどのようになっていたいかという数値を明確に整理し、その達成に向けて行動をしていくことはとても重要です。
また、そうした行動を起こす際の共通言語として「予算」を示すことで、予算達成に向けた組織のモチベーションが高まります。経営者や一部の経営幹部だけではなく、従業員も巻き込んだ取り組みが期待できます。
2 過去ではなく、将来のためにある会計
予算管理は「管理会計」の1つなので、まず管理会計がどういうものかを説明します。管理会計とは、
将来を予測し、将来を変える会計
のことです。イメージしやすいように日常生活に置き換えて考えると、
管理会計は天気予報にとてもよく似ている
のです。
皆さんは、なぜ、天気予報を確認しますか? 雨だったら傘を持ち、寒いなら厚手のコートを着るためでしょう。つまり、これからの天気を知った上で、自身が快適に過ごせるように対応するのです。
まさに管理会計も同じです。
会社の売上や利益がどうなるか(晴れか雨か)を把握し、問題がありそう(降水確率が高い、気温が高い低い)なら何らかの手を打つためのものです。
3 予算管理は将来のために「自分からやる会計」
「管理会計と経理は何が違うのか?」という疑問を持たれた方もいるでしょう。一言で答えるなら、
経理(財務会計または税務会計と呼ばれます)は「やらされている会計」、管理会計は「自分からやる会計」
です。
「やらされている会計」というのは、法律などに基づいて行うことが強いられているという意味です。その代表格は税務計算のための税務会計であり、ルール通りに厳格に処理しなければなりません。
一方、「自分からやる会計」である管理会計はやるもやらないも会社の自由で、特にルールもありません。
管理会計の目的は、会社のより良い将来を実現するために、経営者の意思決定に役立つ情報を提供することです。経営に役立つ情報というものは、会社の状況によって異なり、10社あれば10通りあるものです。
4 役立つ予算とはどういうものか
予算はこうなりたいという「目標」なので、
一度決めたら簡単に変えないことが原則
です。予算をコロコロ変えるとどれが最新のものなのか、どのレベルを目指したらよいのかが分からなくなり、予算が目標として機能しない事態に陥ってしまいます。
ただ、会社が置かれている環境に大きな変化があった場合は予算を変えざるを得ません。例えば、極端な円安の進行といった外部環境の変化や、会社の経営方針の大転換といった内部環境の変化が起きた場合には、当初の予算に固執する意味はありません。
次に、役立つ予算に必要なことは、
どう頑張っても達成できないものを予算としない
ことです。とはいえ、その逆に簡単に達成できる予算というのも、目標としては意味が薄くなってしまいます。ということは、予算には、
- 達成にある程度の頑張りが必要
- 現実的に達成可能
という2つの条件をバランスよく満たすようにする必要があるのです。
以上(2024年7月作成)
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