書いてあること

  • 主な読者:予算管理を自社に取り入れたい、あるいはしっかり取り組みたい経営者
  • 課題:予算作成はスケジュールがタイトなため、チェックを効率よく行いたい
  • 解決策:作成した予算のチェックは、ロジックチェックとストーリーチェックの2つの方法により進めていく

1 立てた予算のチェック方法は?

予算を立てれば、それが正しいかどうかをチェックしなければいけません。予算は目標です。その数字自体が間違っているとしたら、目標として意味をなしません。

しかし、なかには「予算作成はスケジュールがタイトな中で行われるため、チェックに割く時間はない」と思う方もいるかもしれません。そのタイトさは筆者も経験していますが、やはり、苦労して作成する予算だからこそ、意味があるものにしなければならないのです。

そのためには、ただ集計して終わりではなく、必ず予算の数字のチェックを行っていただきたいと思います。私たちが予算を確認するときには、

  • ロジックチェック
  • ストーリーチェック

の2つの方法により進めていきます。

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2 予算をより正しい数字にするための「ロジックチェック」

ロジックチェックというのは、

そもそも数字自体に論理的、かつ客観的な誤りがない状態かどうかをチェックすること

です。

例えば、転記ミスにより売上の数字が1桁多いとか、誤って数字をコピーしてしまい、水道光熱費と消耗品費 に全く同じ金額が記入されている事柄がこれに当たります。予算管理でも経理業務でも、会計に携わる者であればイメージしやすい内容だと思います。

各部署から出された予算額がそもそも間違っていないか、転記作業確認のための突合や、その集計過程など のチェックを行うことで、その数字自体の整合性や正確性を高めます。

3 経営者の思い描いた数字にするための「ストーリーチェック」

ストーリーチェックというのは、

集計した予算は経営者が思い描いている数字になっているか、なっていないのであれば、その理由や背景をチェックすること

です。

例えば、経営者は増収増益を期待している、売上高が増える、利益も増えるというふうに考えているとします。この考えが予算の基になっていなければなりません。それなのに、作った予算が減収減益になっており、経営者の意に反した予算になっているケースがあります。また、全社的にコスト削減を考えているのに、A支店だけコストが上がっていたりするケースもあります。

経営者の立場に立って資料を見ると、全社的なコスト削減のケースでは「どうしてA支店は数字が増えちゃっているの?」というような話になることを、あらかじめ抽出して、チェックしておかなければなりません。仮にA支店では、近隣への競合店の出店があるために、チラシや景品などのマーケティングコストを必要としているなどといった情報を、事前に用意しておくということが、このストーリーチェックになります。

これはロジックチェックと違って、正しい1つの答えに修正するものではなくて、何が起きているかということを用意するために行われます。予算は目標なので、経営者が思い描いている通りにすることが一番良いのです。さらに、ストーリーチェックには大事な視点がもう1つあります。それは、

数字の意味は何か(なぜ、その数字になっているのか)ということ

です。当期予算が前期実績や前期予算と比べて、増減した場合に書くコメントがこれに当たります。

ストーリーチェックを行うことで、その予算が経営者に役立つものとして情報価値を高めます。

4 ロジックチェックとストーリーチェック

それでは、ロジックチェックとストーリーチェック、どちらが大事でしょうか。もちろん数字が間違っていると問題ではあるものの、

予算管理ではどちらかというと、ストーリーチェックのほうが大事

になります。

経理のキャリアが長い人からすると違和感があると思いますが、予算において確保すべき正しさは「100%」でなくてもよいのです。

例えば、B支店の水道光熱費が正しくは月1万円のところを、誤って年1万円というふうに転記されていたとします。当然、間違いですよね。この差というのは11万円(1万円×12カ月で年12万円と年1万円との差)になるわけです。確かに間違いではあります。経理業務であれば領収書や請求書をチェックすることで、必ず見つけないといけない間違いになります。しかし、会社全体で見る予算の場面では、それほど大きな影響ではないと思います。

このような誤りは、大胆に考えると、見つけなくてもよいのです。その代わりに、

予算の全体像に影響するような大きな誤りをなくし、さらに期待されている期限を守って提出すること

の方が優先されるべきです。

まず、提出する予算損益計算書でおかしな点がないかという視点で見てみます。例えば、人数を増やす計画なのに人件費が減っているなどが挙げられます。このようなストーリーが合わない問題を確実にチェックしましょう。

予算では大きな視点がより大事になるということです。予算作成は時間の制約があるので、その中で、チェックを効率的に行う方法を考えましょう。

5 ストーリーチェックはAIには難しい

予算管理はデータを正確に作成することはもちろんですが、その上で役に立つ経営情報を届けることが重要です。そのためには、「ロジックチェック」だけでなく、「ストーリーチェック」が必須です。ちまたで経理の仕事が奪われると騒がれているAIは、ロジックチェックは得意ですが、ストーリーチェックをすることはまだまだ難しいように感じます。“この数字”と“あの数字”が一致しているかどうかのロジックチェックは、私たちが目で見るよりもAIに任せてしまった方が正確かもしれません。しかし、AIは相手に合わせたカスタマイズは得意でないため、コミュニケーション領域への進出は難しいといわれています。ChatGPTやCopilotの出現により少し様相は変わってきましたが、理解力の限界、曖昧な指示への対応など、人間のような柔軟性には課題があるようです。

予算管理には、この「ストーリーチェック」のように、AIで代替されにくい業務が多く存在します。現場との緻密なコミュニケーションや、日々の些細な出来事への気付きといった地道な積み上げが、予算作成におけるチェックで大切な要素になるのです。

以上(2024年11月作成)

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