書いてあること
- 主な読者:感覚だけでなく、定量的な基準や根拠を持ってビジネスの判断をしたい人
- 課題:売上ほど利益が伸びておらず、その原因をしっかりと把握したい
- 解決策:管理会計用の損益計算書を作成し、コスト構造を把握する
1 質問:なぜ、売上ほど利益が伸びないのか?
売上ほど利益が伸びない、あるいはその逆で予想以上に利益が伸びているなんてことがあります。感覚と実際の利益が違うのは、自社のコスト体質(売上と変動費・固定費との連動状況)に起因するので、その要因を分析しなければなりません。
しかし、いつもの損益計算書を見ても、その要因が分からないことはありませんか?
次の2つの損益計算書を見比べてみてください。いずれも同じ会社の損益計算書ですが、左側は財務会計、右側は管理会計のものです。売上と営業利益は同じですが、費用の項目が違っています。早速、それぞれの違いや分析ポイントなどを見ていきましょう。
2 ポイントは「限界利益」と「営業利益」
管理会計用の損益計算書では、費用を売上高に連動する「変動費」と、売上高に連動しない「固定費」に分けています。そして、以下の2つの利益を示しています。
- 限界利益:売上高に連動する利益で、「売上高-変動費」で計算
- 営業利益:限界利益から固定費を差し引いた利益
限界利益を導く変動費は売上高に連動するものなので、「額」ではなく「率」で把握するのがポイントです。次の計算式を覚えておくと便利です。
売上高と変動費(率)、限界利益の関係がシンプルになったところで押さえておきたいのが、
限界利益を高くするには、変動費率を下げること
という、ごく当たり前のことです。
次に営業利益です。営業利益が出るかどうかは、限界利益が固定費を回収できているかどうかにかかってきます。また、
営業利益を高くするためには、固定費を下げること
という、こちらもごく当たり前のことが必要です。
売上ほど利益が伸びていないと感じたら、管理会計用の損益計算書を作成し、限界利益と営業利益を確認します。そうすることで、
- 限界利益が少ない商品の売れ行きが伸びたことで売上が増えた
- 労務費や減価償却費などの固定費がかかりすぎている
など、財務会計用の損益計算書からは分からない要因が浮かび上がってきます。
以上(2022年4月)
(執筆 管理会計ラボ株式会社 取締役・公認会計士 福原俊)
pj35114
画像:apinan-Adobe Stock