書いてあること
- 主な読者:感覚だけでなく、定量的な基準や根拠を持ってビジネスの判断をしたい人
- 課題:当期の業績の変化をどう見たらいいのか分からない
- 解決策:当期の月次推移表を確認する。数値の整理後に、変動結果になった理由や状況について把握する
1 質問:月次推移表から変化を読み取れますか?
月次決算では「月次推移表」を作成します。月次推移表は、毎月の数字を勘定科目ごとに並べたもので、これを見ていると数字の小さな変化にも敏感になれます。経営者はその変化が「一時的なものか、継続的なものか」ということだったり、その後の業績への影響を考慮して、戦略を見直したりします。
早速、月次推移表を見てみましょう。次の月次推移表は人件費と地代家賃を示したものですが、どのような業績の変化がありそうでしょうか。自分なりの仮説を立てた上で、読み進めてみてください。
2 数字の変化の理由を探る
4月から8月までを見ると、
- 人件費:8月だけ2500千円と、他の月より1000千円多い
- 地代家賃:7月だけ500千円と、他の月より500千円少ない
ことが分かります。大切なのは、そのような変化をしている理由ですが、例えば、次のような仮説が立てられます。
- 会計仕訳を入れ忘れたか、二重に入れてしまった
- 季節的な要因で増減している
- 特別なイベントがあった
この仮説を検証するためには、次のような確認をすることになります。
- 経理の仕訳にミスがないかを確認する
- 前年同月の数字を確認する
- 経営者が把握していないイベントなどを確認する
また、このような変動の原因となるイベントを確認するために一覧表に記録しておきましょう。エクセルにまとめてもよいですし、Googleカレンダーなどを使うこともできます。例えば、工場の新設など多額のコストが発生する出来事があった場合、その時期、内容、会計上の影響を記録しておきます。
よくあることですが、起こった年はよく覚えているのですが、翌年になるとみんな記憶が曖昧になってきます。出来事カレンダーを作成すると、思い出す時間の無駄がなくなります。
3 月次推移表は自社用にカスタマイズする
月次推移表は、多くの会社で使っている会計システムの標準メニューにあります。まずは貸借対照表と損益計算書の月次推移表を使ってみましょう。
そのときに、勘定科目を補助科目に細分化するなど切り口を変えてみると、業績の変化が見えてきます。さらに詳細に管理したい“重要な”勘定科目が出てきたら、Excelで資料を作成することを検討してもよいでしょう。ここで“重要な”と書いたのは、すべてにおいて細かく管理する必要はないからです。業績に重要な影響がある勘定科目を抜粋することで作成にかかる時間や検索する時間を短縮し、より効率的な管理会計の仕組みを自社に取り入れることに繋がります。
以上(2022年2月)
(執筆 管理会計ラボ株式会社 取締役・公認会計士 福原俊)
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