書いてあること
- 主な読者:経理人材の育成や、経理部全体の効率化に悩む中小企業のマネジメント職
- 課題:慣行で行われている会議や、何年もやり方を変えていない会議が多い
- 解決策:会議は基本問題解決の場として設定する。そのためには、部下が上司にトラブルや問題点などを気兼ねなく言える雰囲気づくりのほか、会議の種類ごとの特徴をつかんだ上で、適切な会議を設定する
1 会議の実態:会議に充てる時間が毎日1時間以上
皆さんの会社でも、いくつもの会議が行われていると思います。経理部内、事業部門や経営者が相手、あるいは顧問税理士など社外の専門家との会議という場合もあるでしょう。
そこで、今回は
会議をテーマに取り上げて、経理部はどのように会議を活用したらいいのか、人材育成も含めた観点
から見ていきたいと思います。
以前新聞で見たアンケート結果によると、一般社員でも平均すると、毎日1時間程度の会議があるという話でした。そして、役職が上がっていくにつれ、2倍、3倍に増えていくとのこと。おそらく管理職の皆さんは、一日に2~3つの会議があり、準備も入れると半日程度費やしているという方が多いのではないでしょうか。意思決定のハブとして機能するためには、これぐらい必要になってしまうのではないかという印象が、自分の管理職経験からしてもあります。
また、経理の非管理職の方でも、昼はずっと会議で埋まっているという話を聞いたことがあります。その結果、作業時間がとれるのは夕方以降だそうで、毎日残業続きで大変そうでした。
社歴が長い会社であればあるほど、慣習的に行われている会議や、何年もやり方を変えていない会議もあると思います。業務改善の取り組みの一環として、自身の周りの会議のあり方・進め方を見直してみましょう。
2 経理にとっての会議:会議だけでは仕事は進まない
会議が多ければ、その分、作業時間が減るのは当然です。私たち経理は、伝票処理などの一定程度の作業時間をとらなければ、業務が遅れてしまいます。ゆえに、この一定程度の作業時間の存在を前提として、会議の量をコントロールする必要があるのです。これが経理にとっての会議を考える上で、1つ目のポイントになります。
2つ目のポイントは、会議は問題を解決する場として活用すべきという点です。私たち経理の業務は定型のものや、決算のように定期的に行われる業務が多くあります。そのため、大抵の業務は問題なく進むものの、時折、何らかの理由で遅れたり、トラブルが生じたりすることがあります。まさに会議は、このような担当者個人では解決が難しい問題(遅れやトラブル)を、上司やチームの力を借りて解決するためにこそ活用されるべきです。定例会議の場では、進捗報告が行われることがありますが、進捗を共有すること自体は手段にすぎません。本当の目的は問題を発見し、その上で解決することにあるのです。現場担当者に比べて豊富な知識や経験、人脈や権限を使って解決に近づけるケースも多いはずです。
ここで大切になるのが、部下が上司に対して今起きている問題をスムーズに報告できる会議の雰囲気づくりです。
3 会議に求められる雰囲気づくりの肝は“心理的安全性”
「会議では問題を扱うべき」という話をすると、メンバーからは「問題を報告するとうちの上司は機嫌が悪くなる」という声がしばしばあがります。確かに、自分がスタッフだった頃を考えると、やはり上司に悪い報告をするのは勇気が必要でした。そのことを見越して、私の日本マクドナルド時代の上司は「Bad News First」という標語を作り、ことあるごとにこの言葉を口にして、部内に浸透させていました。
課題や問題といった悪いニュースを伝えてくれるメンバーは、管理職自らそれを発見する手間と時間を省略させてくれる、部の運営上とても助かる存在のはずです。また、このような問題提起ができるメンバーは、リスク把握力が高いことが多く、今後の人材育成や部内の人材配置においても考慮に入れると効果的です。
近年、効果的に働くためには「心理的安全性」が大事と言われますが、私は
「悪いことでもメンバーが口に出せる状態かどうか」
ということだと捉えています。特に、複数のメンバーが参加する会議の場では、他人の目が気になるはずです。どのような意見に対しても即否定せずに、まずは発言してくれたことに感謝しつつ、なぜそう思うのかを穏やかに質問します。また、何か悪い報告があった場合は、個人を責めるのではなく、まずは事実の確認に徹しましょう。その上で、よく言われることですが、本人に反省を促す必要がある場合には、他の人がいないところに行き、1対1で話すのがベストな方法です。
ただ、すべての会議で同じやり方が通用するわけではありません。会議の種類(定例会議・臨時会議・1on1)ごとに、目的と進め方にポイントがありますので、次章で解説していきます。
4 会議の目的と進め方を整合させる
1)定例会議
定例会議の最大のポイントは、
「意味がある」議題を用意すること
です。もし皆さん管理職からみて、トラブルが無さそうなことがあらかじめ分かっていたり、そもそも重要な作業・イベントがない期間だったりすれば、会議自体をキャンセルしてもいいのです。この判断をできるのは主催者である管理職だけなので、定例だからと惰性で開催するのではなく、辞める勇気を持ってください。逆に、何か話し合った方がいい話題があれば、慣習的に行われている進捗報告に代わって、それを議題にしましょう。
そうすることで、必要なことを話せる場ができ、かつメンバーにとっても会議の重要性が伝わるため、結果として会議が活性化します。
ちなみに、多くの会社では、開始時刻は比較的守られるものの、終了時刻がうやむやになるケースが多いようです。終了時刻を守れるように、管理職の方は会議の進行管理に気を付けましょう。例えば、議題ごとに予定時間を設定したり、一人当たりの発表時間をあらかじめ定めたりするのも役に立ちます。また、1時間の会議を設定するケースが一般的ですが、スタートアップ企業でよく取り入れられているように、あえて30分間や45分間といった従来よりも短い時間枠で設定することで、緊張感が生まれることもあります。
2)臨時会議
スポットで生じた議題を話し合う臨時会議の最大のポイントは、
参加者選び
です。何か問題が生じると、念のためあの人も呼んでおこうと会議が大きくなりがちです。参加者が増えるとスケジュールの調整が難しくなり、開催が先延ばしになることもしばしばです。しかし、目的が問題解決ということであれば、会議を開催するスピードも大事です。
なるべく早く開催するためにも、関係が薄い人は参加者から外しましょう。内容が分かる人とその場で決定できる人の2種類がいれば十分です。回数も可能な限り一度で済ませましょう。
まとめると、臨時の会議は、小さく・早く・少なく開催できると、当初の課題が解決しやすいと私の経験から感じます。臨時で会議を開く目的はまさに問題の解決ですが、会議のあり方が問題解決に少なからず影響するということです。
3)1on1
次に、近年増えてきた1対1で行う面談(1on1。ワンオンワン)です。主に、日々の業務目的というよりは、各人の人材育成の観点から開催されることが多く、頻度も月次あるいは四半期に一度程度というケースが多いようです。つまり、短期ではなく中長期のスパン、業務ではなくメンバー個人の話をする場として一般に使われています。
1on1の最大のポイントは、
相手に話題を委ねること
です。この会議では、皆さんが議案を決めたり、進行したりしてはいけません。ひたすら相手の話を聞くことに徹します。これまで皆さんが経験してきた会議とは性質が大きく異なるため、はじめは慣れずに居心地が悪いかもしれません。あるいは、上司部下の関係において、心理的安全性が低い場合には、なかなか口を開いてもらえないかもしれません。その場合には、この場の趣旨に何度も触れたり、皆さん自身の他愛もない話をしたりするのもいいでしょう。日頃は業務の話しかしない上司が自分の話をすると、メンバーにとっては意外性が高いため親近感をもってもらうきっかけになりやすく、効果は高いものです。なお、もしメンバーが口を開いた内容が、業務の話だった場合には、注意しましょう。なぜなら、業務自体に関するコミュニケーションの量や質が不足していることのシグナルと考えられるためです。
1on1は、個人の思いや考えなど、人材育成のベースとなる情報を得る場として最適かつきわめて重要だと私は考えています。会議として設定することで、多忙でも時間がきちんと確保されやすいこと、継続して定点観測できること、個別に向き合うことができることなど、数多くのメリットがあります。
3つのタイプの会議を見てきましたが、それぞれの会議の特徴や進め方を理解した上で、議題を絞り込んだ会議を、何重にも活用することが大事です。
複数人いる会議であれば緊張感を活用できますし、1対1であれば限りなく相手に合わせた内容にすることができます。会議を問題解決の場だけに使うのでなく、ぜひ人材育成の場として活用してみてください。管理職の日々はあまりに忙しく、最近様子が気になるメンバーがいたとしても「時間があるときに個別に話そう」となりがちです。しかし、そう思いつつも気が付いたときには、そのメンバーから退職届が出てくるかもしれません。手遅れにならないように、ぜひ会議という身近な手段を上手に活用してみていただけると幸いです。
以上(2023年8月作成)
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