書いてあること
- 主な読者:管理会計を取り入れたい中小企業の経営者、経理担当者
- 課題:不測の事態に対して、どのように管理会計を活用すればよいのか分からない
- 解決策:資金調達、業績予測、費用削減における管理会計の活用方法を解説
1 非常時は何よりも資金
日ごろから資金繰りには気を配っていることと思いますが、非常時は、より一層重要になります。万が一資金が切れることがあっては、会社が存続できません。資金は会社にとって血液であり、救命のためにはキャッシュアウトを止め、資金源を確保することが大事です。実際にコロナ禍において実施された給付金や補助金、制度融資には多くの会社が申請しました。
給付金などの申請時には、必要な数字などの情報をどこまで自分たちで用意できたかによって、自社の管理会計の仕組みがうまくできているのかが確認できます。申請に必要とされる数字は、損益計算書(PL)に関連する重要なものです。これらの数字を顧問税理士に頼らずともすぐに出せるようでなければ、管理会計が目的にする「使う」(=役に立つ)に至ることはできません。
2 必要なときに「業績予測」が作れればよい
当面の資金が用意できたら、次は、これからどうなるかという将来の「業績予測」に着手します。ポイントは、自社の状況が「どれくらいまずそうなのか」を客観的に把握することです。
業績予測は、上場会社を中心に行われている管理会計の活動ですが、非常時には中小企業にも大きな助けとなります。中小企業においては定期的に行っているケースは少なく、必要になった際におおまかな業績予測ができれば大丈夫です。今後の行動の目安として使えればよいからです。例えば、追加の融資がどのくらい必要か、費用の削減の規模はどの程度かなどを判断するのに使います。
非常時に行う中小企業の業績予測には、売上と資金という2つの視点が必要です。まず売上の視点では、当面の月次売上高を予想し、それを損益分岐点売上高と比べてみます。月次売上高を予想するには、足元数週間の売上の数字や、最新の受注状況が必要なので、そうしたデータがすぐに用意できる仕組みを作っておきましょう。また、得意先や商品カテゴリによって、その影響度合いはさまざまだと思います。そこで、どのような分け方で売上を整理すれば見通しを持ちやすいのかについて、ノウハウをためておくことも必要です。
もう1つの視点は、資金です。売上が損益分岐点を超えたとしても、資金が足りていないことがあり得ます。例えば、売掛金の回収に時間がかかる場合や未払いの支払いが早い場合が代表例であり、まさに「勘定合って銭足らず」の状態です。自社はどのような理由で、利益=資金にならないのか、その要因については月次決算を通じて把握するようにします。
3 費用削減に取り組む
業績予測の結果、「このままでは、◯◯程度の赤字になりそうなのか」ということが分かったとします。赤字の程度が分かった上で、事業への影響を踏まえながら、費用の削減を進めます。利益を出す方法は、売上を上げるか費用を削減するかのどちらかです。緊急時において即効性があるのは費用の削減です。売上は顧客あってのことで、すぐに上がるとは限らないからです。
どの費用を削減するかを決め打ちするのではなく、全体を見渡してから決めるようにしましょう。そのために、費用を必須と任意とに分けます。例えば、同じ従業員のための費用でも、社会保険料は法律に基づく必須の費用ですが、レクリエーションなどの福利厚生費は任意の費用といえます。
削減できない必須の費用については、払い方に目を向けてみましょう。分割払いやリスケジュールなど、可能な範囲で支払いを先延ばすことを検討しましょう。最終的には支払うことが必要ですが、手元資金に不安がある会社にとっては、資金を絶やさないために役に立ちます。
4 日常の管理会計の積み重ねが危機にも役に立つ
このように管理会計は、日常の意思決定だけではなく、不測の事態にも役立ちます。しかし、これらは別々に存在するわけではありません。危機時の管理会計は、日常の管理会計の延長線上にあります。日ころから管理会計に取り組むことで、過去の数字を整理でき、その内容も理解することができます。ある意味、日常の管理会計をやることで、日常だけではなく非常時に備えることができ、一石二鳥といえます。
管理会計は天気予報のようなものです。天気予報の訓練を重ねることで、万が一の場合にも、身を助けるための「災害予報」にも対応することができます。少しずつ気負わずにできることから、管理会計に取り組んでみてください。
以上(2024年6月更新)
(執筆 管理会計ラボ株式会社 代表取締役 公認会計士 梅澤真由美)
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