1 中小企業者等に対する軽減税率の一部変更と延長
法人税率は原則23%ですが、中小企業者等(資本金が1億円以下など一定の要件を満たす租税特別措置法上の中小企業)の場合、年800万円までの所得に対しては15%の軽減税率が適用されています。今回の税制改正により、この軽減税率の適用期限が、2027年3月31日までに開始する事業年度まで2年間延長されます(現行:2025年3月31日までに開始する事業年度まで)。
また、2025年4月1日以後に開始する事業年度から、
- 所得の金額が年10億円を超える事業年度については、軽減税率を17%に引き上げる
- グループ通算制度の適用を受けている法人は適用除外する
といった見直しも行われます。
2 中小企業経営強化税制の見直し、新たな措置の創設と延長
中小企業経営強化税制とは、中小企業者等が、
- 生産性向上設備(A類型)
- 収益力強化設備(B類型)
- デジタル化設備(C類型)
- 経営資源集約化設備(D類型)
に分類される一定の設備を、指定された事業の用に供した場合(設備ごとに決められた要件を満たす必要あり)に、特別償却または税額控除が受けられる制度です。今回の税制改正により、
- 生産性向上設備(A類型)と収益力強化設備(B類型)の要件の見直し
- 収益力強化設備(B類型)について、売上高100億円企業を目指す中小企業者等向けの措置を創設
- デジタル化設備(C類型)の廃止
の3つが行われます(詳細は後述)。
また、本制度の適用期限が2027年3月31日まで2年間延長されます(現行:2025年3月31日まで)。
1)生産性向上設備(A類型)と収益力強化設備(B類型)の要件の見直し
A類型で使用する指標と、B類型で使用する投資計画における投資利益率の要件が、それぞれ次のように見直されます。
2)収益力強化設備(B類型)について、売上高100億円企業を目指す中小企業者等向けの措置を創設
適用要件に経営規模拡大要件や、対象設備に建物および附属設備(1000万円以上のもの)が追加されるなど、新しい措置が創設されます。
3)デジタル化設備(C類型)の廃止
2025年3月31日をもって、デジタル化設備(C類型)は、中小企業経営強化税制の対象設備から除外されます。
3 新リース会計基準に対する法人税の取り扱いの決定
2024年9月13日に、新リース会計基準(リース取引に関する会計の取り扱いが変わる新たな会計基準)が公表されました。今回の税制改正により、この会計基準の変更に伴う税法上の取り扱いが明らかになりました。この新リース会計基準は、2027年4月1日以後に開始する事業年度から、監査法人の監査が必要な上場企業などに対して強制適用されます(中小企業は任意適用)。
まず、現行のリース取引について、会計上・税務上の取り扱いについて説明します。リース取引は会計上、
- ファイナンス・リース:実質売買と同じ性質(分割払いで購入しているのと同等の性質)を持つリース取引。貸借対照表上の資産・負債の計上が必要となる
- オペレーティング・リース:ファイナンス・リース取引以外のリース取引。貸借対照表上に資産・負債としての計上は不要で、毎年度支払ったリース料を費用処理できる
の2種類の取引に分類されます。税務上は、
- ファイナンス・リース:売買処理(資産・負債を計上し、減価償却費と利息費用が損金になる)
- オペレーティング・リース:賃貸借処理(資産・負債としての計上は不要で、支払ったリース料が損金になる)
されます。
新リース会計基準ではこの取り扱いが変わり、オペレーティング・リース取引についても、会計上は貸借対照表上に資産・負債の計上が必要となりました(改正前は、支払ったリース料を費用処理するだけでよかった)。ただし、
今回の税制改正では、税務上、オペレーティング・リースについて、現行の賃貸借処理からの変更はなく、今まで通り支払ったリース料を損金とする処理が継続
されることになります。そのため、新リース会計基準を早期に適用した会社については、会計上の費用計上額(減価償却費と利息費用)と、税務上の損金(賃借料)に差異が生まれ、2026年度以降の税務申告書上で税務調整が必要になります。
4 防衛特別法人税の創設
課税標準法人税額(基準法人税額から基礎控除額を控除した金額)に対して、税率4%が課される防衛特別法人税(仮称)が創設されます。これは、防衛費強化に伴う財源確保を目的とした税金で、2026年4月1日以後に開始する事業年度から課税が始まります。
防衛特別法人税=基準法人税額-基礎控除額(年500万円)×4%-税額控除(外国税額控除など)
基準法人税額とは、一定の税額控除(所得税額控除や外国税額控除など)を適用しないで計算した、各事業年度の所得に対する法人税額のことです。
5 中小企業投資促進税制の延長
中小企業投資促進税制とは、生産性の向上を目的に、一定の設備投資やソフトウエアを購入した場合に、その投資額の一部を、税額控除(7%)か特別償却(30%)のいずれかを選択して適用できる制度です。今回の税制改正により、本制度の適用期限が2027年3月31日まで2年間延長されます(現行:2025年3月31日まで)。
以上(2025年1月作成)
(執筆 南青山税理士法人 税理士 窪田博行)
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