書いてあること

  • 主な読者:会計をこれから勉強しようとしている人や、基礎をもう一度確認したい人
  • 課題:会計処理の判断に迷った際、どのようなことを基準に判断すればよいのか知りたい
  • 解決策:会計処理の判断は、7つの一般原則と3つの考え方(主義)が基軸となる

会計は、会社で行う取引を記録し、決算書などの報告書にまとめて、株主や取引先(利害関係者)に報告するためのものです。

もし、その記録が事実でないもの(粉飾)であったり、決算書に記載された金額が独自ルールにのっとったもの(不適切会計)であったりした場合、会計は全く意味をなしません。そのため、会計には処理を行う上で外してはいけない基本原則や考え方(主義)があります。それが、以下で紹介する7つの一般原則と、3つの考え方(主義)です。会社の経理を行う上で何が正しいか迷ったり、自身の部署の営業利益などを考えたりする際にも役立ちます。

1 7つの一般原則

1)真実性の原則

企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。

言葉の通り、決算書上に載せる会計情報は、すべて真実なものでなければなりません。

2)正規の簿記の原則

企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。

正規の簿記とは「すべての取引」を、「客観的に検証できる証拠(契約書や請求書など)」に基づき、「複式簿記のルール」に従って記録することをいいます。会計帳簿(試算表や総勘定元帳など)は、正規の簿記により記録されたデータを基に作成しなければなりません。

3)資本取引・損益取引区分の原則

資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。

資本取引とは主に株式の発行により会社財産が増減する取引をいいます。損益取引とは商品やサービスの売買による損益(売上-費用)により、会社財産が増減する取引をいいます。

貸借対照表上では、出資による財産の増減と、事業活動の成果である損益による財産の増減を、明確に区別して記載しなければなりません。

4)明瞭性の原則

企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。

どの利害関係者でも分かるように、一般的に用いられている勘定科目で示すことや、ひと目で分からない部分は注記(決算書の下に記載する注意書き)することで、利害関係者の判断にミスリードが起きないよう、明瞭に表示しなければなりません。

5)継続性の原則

企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。

例えば、固定資産の減価償却方法には定額法や定率法など幾つかの方法が認められていますが、一度採用した償却方法は、よほどの理由がない限り変更してはいけません。定額法と定率法では減価償却費として計上される金額が異なります。もし年ごとに変更ができてしまえば、利益を大きく見せたいときは、定率法に比べ減価償却費を少なく計上できる(購入初期の場合に限る)定額法を採用するなど、利益操作が可能になってしまいます。

また、年ごとに計算方法が異なる金額では、期間比較をすることもできません。そのため、一度採用した会計処理の原則や手続きは、継続して適用しなければなりません。

6)保守主義の原則

企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。

保守主義では、売上などの収益は遅く少なめに、費用や損失は早く多めに見積もって会計処理を行うことが求められています。つまり、自社にとって良いことは遠慮気味に、悪いことは早めに公表するということになります。もちろん、上記の真実性をゆがめるような会計処理をしてはいけません。

具体例には、取引先が倒産しそうという情報が入ったときに、なるべく早く貸倒引当金を計上して、将来生じそうな損失を利害関係者にいち早く報告することがあります。

7)単一性の原則

株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。

会社が作成する決算書は1つだけしか認められません。例えば、株主総会用には利益を大きく、税務申告用には利益を小さくした2種類の決算書を作ることなどを禁じています。もちろん、裏帳簿や二重帳簿と呼ばれる複数の帳簿も作ってはいけません。

2 3つの考え方(主義)

1)発生主義

すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。

費用と収益は、現金のやり取りではなく、取引が発生した事実に基づいて認識する考え方です。例えば、掛け仕入れや掛け売上をした際には、現金の支払いや受け取りは生じていません。しかし、掛け仕入れや掛け売上をした時点で費用や収益が発生しているとして、会計上の仕入(費用)や売上(収益)に計上されることになります。

また、身近な例で言えば、立替経費があります。自身が立て替えた電車代やタクシー代などの経費(費用)は、月次決算を組んでいる会社であれば、その月に計上しなければなりません。経費精算の締め切りが厳守されているのは、決算書を作る上でこの発生主義を守らなければならないからです。

2)実現主義

未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。

実際に実現したものだけを収益として確定する考え方です。売上に関しては、いつ実現したのかを判断するために、納品基準(商品を納品したときに実現したとする)、出荷基準(商品を出荷したときに実現したとする)、検収基準(納品された商品に不良がないと認められたときに実現したとする)などの基準を設け、それぞれの時点で売上に計上されることになります。

上記の発生主義では、商品などの受け渡しがなくても、口約束だけで売上が計上できてしまうなど、利益操作が行われやすいというデメリットがあります。そのため、売上に関しては計上できる時期をより厳格になるように、発生主義ではなく実現主義で認識することになります。

3)費用・収益対応の原則

費用及び収益は、その発生源泉に従って明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示しなければならない。

特定の売上に対して個別に対応可能な費用は、売上の計上に合わせて認識する考え方です。例えば、建築やソフトウエアの開発など完成までに1年を超える事業がある場合、建築や開発にかかった費用は建設仮勘定(ソフトウエア開発の場合は、ソフトウエア仮勘定)などに一旦資産計上し、完成・納品(工事進行基準の場合は進捗度合い)などにより売上が立ったときに、費用計上(製造原価や減価償却など)することになります。

以上(2021年3月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)

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画像:MR Gao-Adobe Stock

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