書いてあること

  • 主な読者:被災した地域などに寄附金を送りたいと考えている人
  • 課題:寄附金の税務上の取り扱いは、誰が誰に寄附をしたかによって異なるため複雑
  • 解決策:「誰が誰に寄附するか」を明確にして、税務上のルールを確認する

1 寄附金や義援金で被災地を応援したい

2024年1月に発生した能登半島地震は甚大な被害をもたらしました。自然災害が多く、「災害大国」ともいわれる日本。被災地支援のために「寄附金や義援金」(以下「寄附金」)を送りたいと考える経営者も多いことでしょうが、その際は税務上の取り扱いに注意しましょう。

結論から言うと、誰が誰に寄附するのかによって税金の種類が違ってきますし、どこに寄附するのかによって税務上の取り扱いも変わってきます。以下の図表は、被災地や被害を受けた人、団体などに寄附した場合の取り扱いを、大まかにまとめた早見表です。

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この記事では、上の早見表ごとに金銭を寄附するケースを想定して、税務上の取り扱いを紹介します。なお、寄附金の税務上の取り扱いは非常に複雑なため、実際に寄附する際には、事前に税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

2 法人として寄附金を送った場合

1)国や地方公共団体に寄附金を送った場合

法人が国や地方公共団体に寄附金を送った場合、法人税の計算上、寄附金の全額を損金算入できます。

なお、災害に関するものとは限らないため詳細な説明は省略しますが、地方公共団体が企画した地方創生のプロジェクトに対して寄附金を送った場合は、法人税・地方税の計算上、税額控除を受けられます(企業版ふるさと納税)。

2)日本赤十字社に寄附金を送った場合

法人が、一定の期間内(例年は4月1日~9月30日まで)に財務大臣が指定した日本赤十字社の事業に寄附金を送った場合、寄附金の全額を損金算入できます。

また、法人が通年において日本赤十字社に寄附金(上記以外のもの)を送った場合、法人税の計算上、通常の寄附金の損金算入限度額(以下「損金算入限度額」)と、特別損金算入限度額の合計額を上限に損金算入できます。

  • 損金算入限度額

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  • 特別損金算入限度額

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例えば、資本金等の額1000万円、所得の金額2500万円、当期の月数が12カ月の場合には、16万2500円(損金算入限度額)と80万円(特別損金算入限度額)の合計額96万2500円となります。このように、法人の資本金や出資金の額、所得の金額が影響してくるので、資本金の額が少ない場合、思ったよりも損金算入額が少ないケースがあります。

3)NPO法人に寄附金を送った場合

法人がNPO法人に寄附金を送った場合、法人税の計算上、そのNPO法人が認定NPO法人かそうでないかで、損金算入限度額が違います。

認定NPO法人の特定非営利活動事業に関連する寄附金を送った場合、損金算入限度額と特別損金算入限度額の合計額を上限に損金算入できます。

  • 損金算入限度額

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  • 特別損金算入限度額

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認定NPO法人以外のNPO法人に寄附金を送った場合、特別損金算入限度額の適用はなく、損金算入限度額が損金算入の上限となります。

  • 損金算入限度額

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認定NPO法人以外のNPO法人に寄附金を送った場合の損金算入限度額は、日本赤十字社や認定NPO法人に寄附金を送った場合よりも少額です。例えば、前述の事例同様、資本金等の額1000万円、所得の金額2500万円、当期の月数が12カ月の場合には、16万2500円になります。

寄附先の法人が特別損金算入限度額、損金算入限度額のいずれの対象となるかは、該当法人のウェブサイトなどで確認するようにしましょう。

4)民放テレビの義援金専用口座に寄附金を送った場合

法人が民放テレビの義援金専用口座に寄附金を送った場合、最終的な寄附先がどの団体等になるのかで判断されます。最終的に日本赤十字社や認定NPO法人に寄附されることが多いようで、この場合は前述した取り扱いと同じになります。

なお、最終的な寄附先は、民放テレビ各社のウェブサイトなどで確認することができます。

5)得意先に見舞金を送った場合

法人が直接得意先に見舞金を送った場合、寄附金ではなく交際費になります。中小法人(資本金の額が1億円以下の法人で一定の法人)の場合、交際費は原則として年間800万円以下まで、損金の額に算入できます。

ただし、見舞金が災害に関連したものは交際費には該当しないものとされ、災害見舞金として全額が損金に算入できます。ただし、金額があまりに過大だと、税務調査などで交際費に該当すると指摘される恐れがあります。明確な金額の基準がない分野のため、金額については、税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

6)従業員に見舞金を送った場合

法人が従業員に見舞金を送った場合、寄附金ではなく福利厚生費になります。福利厚生費は、法人税の計算上、全額損金に算入できます。ただし、金額があまりに過大だと、税務調査などで給与に該当すると指摘される恐れがあります。あらかじめ慶弔・見舞金規程などを整理し、それに基づいて支給するようにしましょう。

7)被災した経営者の母校に寄附金を送った場合

法人が被災した経営者の母校に寄附した場合、その母校が取引先である場合を除き、原則として、法人の費用ではなく個人の支出とみなされ、経営者の役員報酬になります。役員報酬は、毎月同額であること(定期同額給与)など一定の基準に基づいていなければ損金算入できません。被災地への寄附金のように突発的に生じた役員報酬は、損金算入できません。

なお、母校が取引先である場合には、前述の得意先に見舞金を送ったケースと同様の取り扱いになります。

3 経営者が個人として寄附金を送った場合

1)国や地方公共団体に寄附金を送った場合

個人として、国や地方公共団体に寄附金を送った場合、所得税の計算上、次の算式により計算した金額を所得金額(税率を乗じる前の金額)から差し引くことができます(以下「寄附金控除」)。

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なお、寄附金控除を受けるためには、個人で確定申告をする必要があります。ただし、寄附先が都道府県・市区町村の場合で、かつ、ふるさと納税として寄附金を送った場合は、ワンストップ特例により、確定申告をしなくても寄附金に係る控除を受けることができます(年収が2000万円を超える場合など、確定申告をしなければならない人を除きます)。

2)日本赤十字社に寄附金を送った場合

個人として、日本赤十字社に寄附金を送った場合、所得税の計算上、前述の国や地方公共団体に寄附金を送ったケースと同様に、寄附金控除額を所得金額から差し引くことができます。

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3)NPO法人に寄附金を送った場合

個人として、NPO法人に寄附金を送った場合、所得税の計算上、そのNPO法人が認定NPO法人かそうでないかで、取り扱いが変わってきます。

認定NPO法人に寄附金を送った場合は、寄附金控除(所得控除)と、税額(税率を乗じた後の金額)から直接減額できる寄附金特別控除(税額控除)の選択適用が認められています。いずれが有利かは、税理士などの専門家に相談してみるとよいでしょう。

  • 寄附金控除

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  • 寄附金特別控除

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認定NPO法人以外のNPO法人に寄附金を送った場合、寄附金控除・寄附金特別控除のいずれも受けることはできません。

4)民放テレビの義援金専用口座に寄附金を送った場合

考え方は法人の場合と同じです。

個人として、民放テレビの義援金専用口座に寄附金を送った場合、最終的な寄附先がどの団体等になるのかで判断されます。最終的に日本赤十字社や認定NPO法人に寄附されることが多いようで、この場合は前述した取り扱いと同じになります。

なお、最終的な寄附先は、民放テレビ各社のウェブサイトなどで確認することができます。

5)得意先に見舞金を送った場合

個人として、得意先に見舞金を送った場合は、所得税の計算上、寄附金控除・寄附金特別控除のいずれも受けることはできません。

また、個人の場合は、その寄附金が災害に関連したものでも、控除を受けられません。

6)被災した経営者の母校に寄附金を送った場合

個人として、被災した経営者の母校に寄附金を送った場合、所得税の計算上、寄附金控除の対象となります。また、私立の学校法人に対する寄附については、認定NPO法人に対する寄附と同様に寄附金控除と、寄附金特別控除の選択適用もできます。

4 寄附金を受け取った側の税務上のルール

ここまで、寄附する側の税務上のルールを説明してきました。今度は、寄附金を受け取った側のルールを紹介します。

法人が寄附金を受け取った場合、法人税の計算上、

原則として、益金(法人税法上の収益)に算入

されます。つまり、商品の売上などと同様に、所得(法人税法上の利益)を増やすことになります。

一方、個人が寄附金を受け取った場合、

  • 勤務先の法人から受け取る場合、給与とみなされて所得税が課される可能性
  • 個人から受け取る場合、贈与とみなされて贈与税が課される可能性

があります。なお、受領した金額が年110万円以下の場合は、贈与税は課されません。ただし、被災等によって寄附金(見舞金を含む)を受け取った場合、受贈者の社会的地位や贈与者との関係、被災状況などに照らして、一般的に多過ぎないと判断されれば、所得税および贈与税は課税されません。いずれにしても、明確な金額の基準がないため、金額については、事前に税理士などの専門家に相談しましょう。

なお、国や地方公共団体から配分を受けた寄附金に関しては、金額の大小を問わず、所得税の課税の対象とはなりません。

以上(2024年3月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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