書いてあること

  • 主な読者:適正な税務処理を徹底したい経営者
  • 課題: 税務上の寄附金は、一般的に使われているものよりも広い意味で使われる上、取り扱いも明確に規定されている
  • 解決策:税務上、損金に算入できる寄附金の金額は計算や、子会社の損失負担や債務免除など税務特有の寄附金の事例を紹介

1 法人税法上の寄附金の6つの分類

1)一般の寄附金(法人税法第37条第7項、第8項)

寄附金とは、事業に直接関係ない者に対する金銭などの資産を贈与または経済的な利益を贈与または無償で供与した場合の資産または経済的利益をいいます。なお、交際費、接待費、福利厚生費などは除きます。資産の譲渡または経済的な利益の供与をした場合に、その対価の額が時価に比べて低いときにはその差額は寄附金の額に含まれます。

2)国または地方公共団体に対する寄附金(法人税法第37条第3項第1号)

その名の通り、国または地方公共団体に対する寄附金です。ただし、寄附した者がその寄附によって設けられた設備を専属的に利用するなど、特別の利益が寄附をした者に及ぶと認められる場合を除きます。

3)指定寄附金(法人税法第37条第3項第2号)

指定寄附金とは、公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人または団体に対する寄附金のうち、広く一般に募集されること、教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するための支出で、緊急を要するものに充てられることが確実であるものとして、財務大臣が指定した寄附金のことです。

4)特定公益増進法人に対する寄附金(法人税法第37条第4項)

特定公益増進法人とは、公共法人、公益法人等、その他特別の法律により設立された法人のうち、教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして、政令で定めるものに対する当該法人の主たる目的である業務に関連する寄附金のことです。

5)特定公益信託に対する寄附金(法人税法第37条第6項)

特定公益信託とは、「公益信託ニ関スル法律第1条(公益信託)」に規定する公益信託で、信託終了のときにおける信託財産がその信託財産に係る信託の委託者に帰属しないことおよびその信託事務の実施につき政令で定める要件を満たすものであることについて証明がされたものをいいます。特定公益信託の信託財産とするために支出した金額は寄附金の額とみなし、原則として一般の寄附金として、損金算入限度額の範囲内で損金算入を認めます。

6)認定NPO法人に対する寄附金(租税特別措置法第66条の11の2)

認定NPO法人(認定特定非営利活動法人)とは、特定非営利活動促進法第2条第3項に規定する特定非営利活動法人のうち、その運営組織および事業活動が適正であり、公益の増進に資するものとして所轄庁の認定を受けたものをいいます。

2 寄附金の損金算入限度額

1)寄附金の損金算入限度額の算出方法

国または地方公共団体への寄附金、指定寄附金は全額が損金となりますが、一般の寄附金や特定公益増進法人に対する寄附金などは、それぞれ限度額を超える金額を損金に算入することができません(法人税法施行令第73条第1項、第77条の2第1項)。

一般の寄附金の損金算入限度額(特定公益信託を含む)と特定公益増進法人に対する寄附金の特別損金算入限度額の算出式は次の通りです。

1.一般の寄附金の損金算入限度額(特定公益信託を含む)

一般の寄附金の損金算入限度額(特定公益信託を含む)の算出式は次の通りです。

  • 損金算入限度額=(A+B)×1/4
  • A=(事業年度の所得金額+損金経理の寄附金)×2.5/100
  • B=(資本金の額+資本積立金額)×当期の月数/12×2.5/1000

2.特定公益増進法人に対する寄附金の特別損金算入限度額

特定公益増進法人に対する寄附金の特別損金算入限度額の算出式は次の通りです。

  • 損金算入限度額=(A+B)×1/2
  • A=(事業年度の所得金額+損金経理の寄附金)×6.25/100
  • B=(資本金の額+資本積立金額)×当期の月数/12×3.75/1000

2)寄附金の損金算入限度額の算出例

次の前提条件を基に寄附金の損金算入限度額を算出してみます。

  • 当期利益金額:5000万円
  • 資本金:7000万円
  • 一般寄附金:120万円
  • 特定公益増進法人への寄附金:60万円
  • 指定寄附金:150万円
  • 寄附金支払額計:330万円(120万円+60万円+150万円)

損金算入限度額は次のように算出することができます。

1.一般寄附金の損金算入限度額

  • 一般寄附金の損金算入限度額
  • ={(5000万円+330万円)×0.025+7000万円×12/12×0.0025}×1/4
  • =37万6875円

2.特定公益増進法人への損金算入限度額

  • 実際の特定公益増進法人への寄附金支出額=60万円
  • 特定公益増進法人への損金算入限度額
  • ={(5000万円+330万円)×0.0625+7000万円×12/12×0.00375}×1/2
  • =179万6875円
  • 寄附金支出額60万円<損金算入限度額179万6875円
  • ∴特定公益増進法人への損金算入限度額=60万円

3.指定寄附金の損金算入限度額

  • 指定寄附金の損金算入限度額=指定寄附金の全額=150万円

4.寄附金の損金算入限度額

1.2.3.より、寄附金の損金算入限度額は、次のようになります。

  • 損金算入限度額=37万6875円+60万円+150万円=247万6875円

従って、損金算入限度超過額は、次のようになります。

  • 330万円-247万6875円=82万3125円

(注)100%出資グループ法人(法人による完全支配に限ります)間の寄附金は全額損金不算入です。

3 法人税基本通達に見る寄附金規定

1)子会社などを整理する場合の損失負担など

法人がその子会社などの解散、経営権の譲渡などに伴い、当該子会社などのために債務の引き受けその他の損失負担または債権放棄などをした場合、その損失負担などをしなければ今後より大きな損失を被ることが社会通念上明らかであると認められるため、やむを得ずその損失負担などをするに至ったことについて相当な理由があると認められるときは、その損失負担などにより供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しません。

子会社などには、当該法人と資本関係を有するものの他、取引関係、人的関係、資金関係などにおいて事業関連性を有するものが含まれます(法人税基本通達9-4-1)。

2)子会社などを再建する場合の無利息貸付など

法人がその子会社などに対して金銭の無償もしくは通常の利率よりも低い利率での貸し付けまたは債権放棄などをした場合において、その無利息貸付などは寄附金の額に該当します。

しかし、業績不振の子会社などの倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものであるなど、その無利息貸付などをしたことについて相当な理由があると認められるときは、その無利息貸付などにより供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとします。

合理的な再建計画かどうかについては、支援額の合理性、支援者による再建管理の有無、支援者の範囲の相当性および支援割合の合理性などについて、個々の事例に応じ、総合的に判断します。例えば、利害の対立する複数の支援者の合意により策定されたものと認められる再建計画は、原則として、合理的なものとして取り扱います(法人税基本通達9-4-2)。

3)個人の負担すべき寄附金

法人が損金として支出した寄附金で、その法人の役員などが個人として負担すべきものと認められるものは、その負担すべき者に対する給与とします(法人税基本通達9-4-2の2)。

4)仮払い経理した寄附金

法人が各事業年度において支払った寄附金の額を仮払金などとして経理した場合には、当該寄附金はその支払った事業年度において支出したものとします(法人税基本通達9-4-2の3)。

5)未払いの寄附金、手形で支払った寄附金

未払いの寄附金については、各事業年度の所得金額の計算上、その支払いがされるまでの間、寄附金の支出は無かったものとします(法人税法施行令第78条)。

同様に当該寄附金の支払いのための手形の振り出し(裏書譲渡を含む)も、現実の支払いには該当しません(法人税基本通達9-4-2の4)。

6)国または地方公共団体に対する寄附金

国または地方公共団体に対する寄附金とは、国または地方公共団体において採納されるものをいいます。国立または公立の学校などの施設の建設または拡張などの目的を持って設立された後援会などに対する寄附金であっても、その目的である施設が完成後遅滞なく国または地方公共団体に帰属することが明らかなものは、これに該当します(法人税基本通達9-4-3)。

7)最終的に国または地方公共団体に帰属しない寄附金

国または地方公共団体に対して採納の手続きを経て支出した寄附金であっても、その寄附金が特定の団体に交付されることが明らかであるなど、最終的に国または地方公共団体に帰属しないと認められるものは、国または地方公共団体に対する寄附金には該当しません(法人税基本通達9-4-4)。

8)公共企業体などに対する寄附金

日本中央競馬会などのように全額政府出資により設立された法人、または日本下水道事業団などのように地方公共団体の全額出資により設立された法人に対する寄附金は、国または地方公共団体に対する寄附金には該当しません(法人税基本通達9-4-5)。

9)災害救助法の規定の適用を受ける地域の被災者のための義援金など

法人が災害救助法第2条の規定により知事が指定した区域の被災者のための義援金などの募金を行う募金団体(日本赤十字社、新聞・放送などの報道機関等)に対して拠出した義援金などについては、その義援金などが義援金配分委員会等に拠出されることが募金要綱、募金趣意書などにおいて明らかにされているものであるときは、地方公共団体に対する寄附金に該当するものとします(法人税基本通達9-4-6)。

10)災害の場合の取引先に対する売掛債権の免除など

法人が、災害を受けた得意先などの取引先に対して、その復旧を支援することを目的として災害発生後相当の期間内に売掛金、未収請負金、貸付金その他これらに準ずる債権の全部または一部を免除した場合には、その免除したことによる損失の額は、寄附金の額に該当しないものとします。

既に契約で定められたリース料、貸付利息、割賦販売に関わる賦払金などで、災害発生後に授受するものの全部または一部の免除を行うなど契約で定められた従前の取引条件を変更する場合、および災害発生後に新たに行う取引につき従前の取引条件を変更する場合も、同様とします。

得意先などの取引先には、得意先、仕入先、下請工場、特約店、代理店等の他、商社などを通じた取引であっても価格交渉等を直接行っている場合の商品納入先など、実質的な取引関係にあると認められるものが含まれます(法人税基本通達9-4-6の2)。

11)災害の場合の取引先に対する低利または無利息による融資

法人が、災害を受けた取引先に対して低利または無利息による融資をした場合、当該融資が取引先の復旧を支援することを目的として災害発生後相当の期間内に行われたものであるときは、当該融資は正常な取引条件に従って行われたものとします(法人税基本通達9-4-6の3)。

12)自社製品などの被災者に対する提供

法人が不特定または多数の被災者を救援するために緊急に行う自社製品等の提供に要する費用の額は、寄附金の額に該当しないものとします(法人税基本通達9-4-6の4)。

以上(2019年4月)
(監修 税理士法人コレド会計 税理士 石田和也)

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画像:unsplash

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